積ん読と定点観測
読書界隈と断捨離界隈。
ここには絶対に相容れない溝がある――とわたしは思っています。
読書界隈は『積ん読』を是とし、それは心の養分、そして未来へのサプライズプレゼントとして捉えているため、年に数度、泣く泣く本を手放さなければならないタイミングに於いては、我が子と引き裂かれる母親の如く、比翼の鳥の羽を奪われる如くの苦痛を感じるわけです。
当然、何度も何度も読み返す本があり、数年経って読む本があり……という状態ですね。
ところが断捨離界隈に於いては、本は邪魔者。一度読んだ本は、すぐにリリース。なんならいち早く新刊を読んで高値で売れるうちに売った方がお得。購入代金と売価を差し引いた額が、実質上の一時保有料金(レンタル料)という感じ。
一年以上読まなければ捨てましょう! という思想です。
ここで、この二者が相容れることはないのです。
わたしは、完全なる積ん読界隈の人間です。
わたしが大金持ちになったら、一冊も本を捨てない生活がしたいです。そして、私設図書館を作ります。実は司書資格持ちだったりします。
そのくらいの本好きです。
今朝、実は、購入してから半年の間、段ボールに入ったまま未開封だった単行本をシリーズ一巻から四巻まで一気読みして、今二週目終わってお腹が満足したところで書いてます。
わたしは、近代文学を勉強していた時期があるのですが、その時、大学の先生に「どうやったら先生みたいに深く読み込むことが出来るんですか?」と伺ったことがあります。その時、先生は仰せになりました。
『100回でも200回でも読めば良いんですよ』(笑顔)
なるほどっっ!!
一回で作者様がお書き遊ばした世界観、空気感、そう言うものを読み解くことは出来ませんよね!! たしかにっ!!
そして、若い女の子が「なぜ同じ映画を何度も見るのですか」という質問をされたときに「今回は、こっちのキャラクターに焦点を当てて鑑賞したり、音楽とストーリーに重視して鑑賞したりしてます」という、とても豊かなお答えをされているのを見たことがありますが、まさにこれっ!
そうやって、読む事を深めていくというのは、とても豊かな読書体験になるはず。そして、それは、自分の成長によっても異なります。
わたしは、一年の中で11/9日になったら必ず読み返す本というのがあります。
凄く難解で、理解出来ないし、タイトルが結びつかなかったりするんですが、それを、毎年読む事で、去年のわたしと今の自分でどういう違いがあるんだろうという、セルフ定点観測が出来るのですよ。
一年でどれくらい、自分が変わったか。
自分が変われば、読書したときに受け取ることが出来る内容も変わってきます。
子供のころは「主人公死んでしまって可愛そう」と思った話も、スレた大人になったら「でもゆうて、お前も大概悪いところもアルよなあ」と思ったり、いろいろな感情が出るわけですよ。
そしてこれは作者がコントロールすることが出来る範囲からは全く外れた、その人だけの特別な読書体験です。コスパとかいう言葉では絶対にはかれないヤツです。
このために、「読書は何百回でもしてもいい」そして「その為に積ん読は必要」と主張したいですね!
断捨離界隈も、確かに綺麗なお部屋で過ごすと自己肯定感が高まると言うので、綺麗なお部屋で生活することも良いと思います。
まあ、あとは積ん読界隈、断捨離界隈どちらにも言えることですが、わざわざ、自分と絶対に相容れない価値観の人の所に行って、気に障る発言をしなきゃ良いのです。
そこは上手に棲み分けましょうや。