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対話型AI『ChatGPT』は『検索できない若者たち』を救うか?その奇妙な間違え方が引き起こすブラックスワン
毎日毎日、いろんなAIの話で持ちきりだ。多分僕たちは人類の歴史にそれぞれ一回だけ起きる、なかったものが登場して世界が変わっていく瞬間にいるのだろう。
今日の話題は対話型AIだ。
何を聞いてもちゃんと答える、プログラムの書き方を聞いたらコードを書いてくれる、など、その性能の高さにみんな驚いている。
OpenAIのChatGPTヤバすぎワロタ
— いぐぞー!! ✈️ 旅するプログラマー (@igz0) December 1, 2022
生半可なスキルを持つITエンジニア全員廃業するわこんなん pic.twitter.com/fyQiMEBwZ5
同じ日に「検索が苦手な若者」の話題がバズっていた。
卒論指導をしていると、学生の検索能力が意外に低いのに驚くことがある。全然見つかりません〜とよく泣きつかれるが、私が検索してみたらすぐ見つかることが多い。実は検索してなかったんじゃないかと疑ったが、そうでもないようだ。不思議だ。うちだけの現象だろうか。
— 足柄(個人の感想です) (@asigaranyanko) November 24, 2022
これイラストでもよくあるなー
— 令間 (@Remankamuy02) November 30, 2022
例えば和服キャラの腕を上げたポーズを描くのに「着物 袖 腕を上げる」で調べてうまく出なかったり、ポーズ集の書籍をわざわざ買ってる人をよく見るけど、
それより着物で腕を上げる状況を考えて「小鼓 演奏」とか「舞囃子」とか「マツケンサンバ」とかで調べた方が良い https://t.co/6JrUnwsHlA
2つのツイートを読むとなんとなくわかると思うけど、Googleで検索して情報を見つけるというのは意外に高度な情報作業である。それは海面を見て魚がいそうなあたりに網を投げるのに近いかもしれない。2つ目の引用ツイートの方が、自分の求めるような答えから逆算した見事なサーチを行っているのがその典型で、それは「このあたりにあるだろう」という「Google土地勘」みたいなものが必要なのだ。駅前にはふつう何かしらの外食店があるはずだ、というような。でもその土地勘がないものには、すぐそこにある情報にたどり着けない。
対話型AIは、その「最後の一歩」を埋めるアシスタントになるかもしれない。というかなるだろう。世の中の人がずっと求めていたのは、ある意味ではこうした対話型のコミュニケーションだからだ。
ギーク、ナード、いろんな呼び方はあるけど、パソコンに強い人たちはしばしば、検索が苦手な人たちを理解できない。でも、彼らは別に知能が低いわけではない。検索が苦手な人たちというのは、目の前のパソコンを「道具扱い」「奴隷扱い」するのが下手というか、苦手なのである。aを検索した情報で得たワードbを検索し、cを見つけ出す。ギークたちはそう言う風に、ある意味では無神経にパソコンを使いこなす。でも検索が苦手な人たちは、まるで道端で通行人を呼び止めて道を尋ねるみたいに慎重に検索を利用し、一回聞いて思うような答えが得られないと潔く諦める。道を尋ねる時に「東京駅は?」と聞いた後で「じゃあ有楽町駅は?」と聞き直すのは失礼だ、というように、彼らはパソコンやネットというものに対して遠慮深いのだ。ギークが時に、人を人とも思わずモノ扱いすると不評を買うように、一般人はモノをモノとも思わず人間扱いしてしまう癖があるのだ。
対話型AIはそうした大きな需要に応えるだろう。と同時に、画像AIどころではない、人間のオペレーターという雇用と激突するはずである。画像AIにおける著作権のような壁がないことによって、そのリストラはさらに大きなものになるはずだ。
不安は雇用だけではない。
これは広瀬すずについて対話AIに聞いてみた答えだ。
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誕生日は合っている。でもそれ以外は、まったく間違いだらけである。でもそれが間違いであると分かるのは、僕が広瀬すずのデビューは広瀬アリスがスカウトされたずっと後のことで
「君の名は。」には1秒も出ていないことを知っているからだ。知らない人間にはこの自信満々の答えがまさか8割デタラメの山だとは夢にも思わないだろう。
会話型AIの間違え方は、人間の間違いとまったく太刀筋が違う。「七人の侍」が時代的にめちゃくちゃなのはまだご愛嬌である。「私立探偵 学園Q」?「探偵学園Q」というドラマなら存在するが、それに広瀬すずは出ていない。「人生がおもしろい」という作品名に至ってはいくら検索しても類似タイトルすら出てこなかった。いったいどういう経路で間違えるのか、そのルートが見えないのだ。
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![](https://assets.st-note.com/img/1669903491027-nVoMjFkHUd.jpg?width=1200)
これは「ミス」とか「間違い」ではない。このAIは記録データにアクセスしてミスしたのではなく、絵や音楽のように対話を「生成」しているのだ。なんというか、夢の中の不条理のように奇妙なテイストの、情報のイミテーションなのだ。
そうしたものは学習すれば減っていく、というのはその通りだろう。だがナシーム・ニコラス・タレブが著者『ブラック•スワン』で描いたのは、白鳥が白いということが当たり前になった時こそ、たった一羽の黒い白鳥に出会ってしまった時のリスクが高くなる、という概念だった。
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