『先生の白い嘘』と『違国日記』
映画『先生の白い嘘』については、公開初日の舞台挨拶で監督とプロデューサーが謝罪したことを報じるこの記事がわかりやすいかもしれない。
三木康一郎監督が公開前のインタビューで、主演女優・奈緒さんからインティマシーコーディネーターの希望があったが、話し合いの結果、今回は入れなかったと語り、それが激しい非難を浴びた。記事から謝罪の言葉を引用しよう。
三木監督「今回、私の不用意な発言により皆さまに多大なるご迷惑とご心配をおかけしたことをこの場を借りて謝罪したいと思います。本当に申し訳ございませんでした」と頭を下げ、「さらに関係者、スタッフ、キャストにも大きな大きな苦しみを与えてしまったことをこの場で謝罪したいと思います。本当に申し訳ございませんでした。さらに、原作の鳥飼茜先生、この作品に尽力していただいたにもかかわらず、裏切るようなかたちになり、本当に申し訳ございませんでした」
そもそもインティマシーコーディネーターの数というのは日本の撮影数に対して足りておらず、俳優が希望したが都合がつかなかった、みたいなことは他でも起きているのではないかと言われている。まあそこで、「俳優が希望したのにインティマシーコーディネーターを用意しないのはなにごとだ、強要ではないか」という非難をする人たちに非難を浴びたわけだ。
それはさておき、映画の内容である。炎上後は「自分は試写会でこの映画を見たがよくないと思ったので薦めなかった」と言ったコメントが映画ライターの間からいくつか出た。僕は試写会には呼ばれてなかったわけだが、公開後に映画を見て、そんなに悪い内容だとは思えなかった。のちに述べる『違国日記』に比べて、ちゃんと原作に依拠し、原作のメッセージも尊重した映画化になっていると思えた。映画の中で確かに性的なシーンはあるが、裸体としての露出はなく、奈緒の尊厳を傷つけるような撮り方にはなっていない、というかそこも含めて原作のラインを守っているように思えた。そもそも原作自体が、今回の件で正義に燃え上がっているタイプの人と微妙に距離のある、二重三重に複雑な内容だと思う。
三木監督のあまりにも不用意なインタビューがなければ、奈緒の演技や、彼女自身がこの映画で伝えたかったことを含めてもっと高く評価されたのではないか。残念である。
さて『違国日記』である。新垣結衣主演ということで本当は両手をあげて褒められればよかったのだが、なかなかそうもいかない出来であった。公開当時から原作ファンから改変についての批判が相次いでいる。ただ自分としては原作からの改変が失敗している点もさることながら、原作を神聖視する見方にも乗れないところがあり、マガジン部分で書いて行きたい。
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