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命を狩る者 食べることは生きること

 都会の喧騒から離れ、どれだけの時が過ぎただろうか。

 神経を研ぎ澄ませ、とはいえ、摩耗し過ぎないように森の中にこもり、今日も猟をする。

 ――パーン!

 山に銃声がこだまし、獲物を狩った。

 そして、男は野生動物をその場で解体した。

 その場に捨てるものも、他の野生生物の糧となる。そしてすべては土に帰る。

 男はこの森で自給自足をしていた。
 完全に、というわけにはどうしてもいかなかったが、極力、他の手を借りずに暮らしていた。

 こうして獲物を狩るのもその一環だ。

 男は料理人だった。かつては名の知れたレストランでシェフをしていた。  それが、素材を追求しているうちに、紆余曲折あり、こんなことになっていた。
 都会暮らしや喧騒につかれていた、という手垢のついた理由もあっただろう。

 しかし、結局、これが性に合っていたのだろう。

 男は、一匹の獲物から希少な一部位のみ、それもわずかに添えるだけ。
 そんな贅を尽くした料理を作っていたことに対する過去へのアンチテーゼのように、いまでは、なにも無駄なく、暮らしてた。

 それが、ここではできた。

 何も無駄にすることなく、そして無駄にされることなく、男はここで静かに暮らしていた。

 文明の進み過ぎた現代でこんな暮らしをしているものは一握りだろう。
 もしかしたら自分以外いないのではないかと、ふと、思う。

 野生と隣り合わせなのだ、危険を感じることも当然あった。

 しかしそれは、命を奪るのだから当然のリスクだった。いつか自分もだれかに食われる、自然の理に従うのが当然。
 いや、贅を尽くすとして、貴重な命を無駄にしてきた自分だ。
 罪滅ぼしではないが食われて死ぬ。誰かのためになる。そんなことを望んでいるのかもしれない。
 そんなことを考えた――――


 ――パーン。


 銃声が響く。

 そして、男が倒れた。

 すると、草むらから若い男女たちが出てきた。

「や、、、やったぞ!!! 野生動物たちを残虐に借り殺している男をやっつけてやったぜ!」
「動物を殺して、食べるとかマジサイテーだよ! 人間のクズだね!」
「ああ! 悪魔の所業だよ!! 動物たちがかわいそうだ!」

「みなさん、こんな行為を許してはいけません。私たちは動物たちをーーー」

 そのものたちは、周囲をみず、手にかけた男のことさえすでに忘れ、必死に手にしたスマホに語りかけた。

 男の願いは叶わなかった。
 誰かの糧になることなく、その死は消費されて――命が消えていった。


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