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zine『推察』振り返り
「推し」にまつわるzine『推察』を、私の友人である世菜さんと協同制作しました。
K-POPアイドルグループSEVENTEENの箱推し・布教欲オタクである私と、声優 伊東健人のガチ恋・同担拒否オタクである世菜さん。
これは「推しとは・推すこととは」について、2人で哲学やフェミニズム、ルッキズムなども交えて凄まじい熱量で向き合った、約90,000字のzineです。
この記事では、『推察』ができあがるまでの過程を振り返りたいと思います。
「zineを作ってみたい、自分の文章を自分の言葉で書いてみたい。」「世菜さんが生み出すものを、私ができることで手伝いたい。」
とある7月の蒸し暑い夜、世菜さんと電話で交わした会話が、このzineの全ての始まりだったように思います。
少し時が経ち、互いに「推し」に熱を上げていると明かし合った8月の猛暑日。それから熱は高まり続け、「推し」について話さずにはいられなくなりました。そうして私たちは8/25にzoomにて対談をおこないます。これが「なにか作りたいね」から「推しについて作ろう」に変わった瞬間でした。
「推し」についてのzineを作ろうと二人で決めた数日後、偶然にも仲良くなったばかりのみさきさんから「10月末にzineのイベントをしようと思っていて」とお誘いをいただきました。
自分の内面をさらけ出したようなzineを集めるという趣旨のイベントは「さらけだすzineピクニック」という名前になりました。
短い夏が秋へと移ろいながら、ぼんやりと考えていたものがどんどん繋がって具体的になっていった7〜8月。締切がないと、なかなか計画的に動けない私たちを奮起させるきっかけとなったのが、このイベントへの参加でした。
9月頭に早速zine制作の打ち合わせ。
当初の予定では「一人ずつ推しについて語る部分と、二人で対談する部分、合わせて30ページくらいでどうだろう。」ということで決まったのですが……
制作に取り掛かり、それぞれが語るページを各々で書き進め、推しについて対話する会をオンライン・オフラインで数回実施。さらには、互いの推しについてプレゼンする一泊二日の「推しつけ合宿」を経て、実際の誌面に落とし込むときには気づけばA5冊子52P、A1対談ポスター両面×2という大大大ボリュームのものができあがってしまいました。
ここで少し、出来上がったzineのデザインを解説します。
A5冊子は、右開きで世菜さんの文章が、左開きで私の文章が読める両A面のつくりにしました。
そして今回のzine、裏テーマは「初心」です。
お互い5月下旬〜6月上旬に推しができ、初期衝動的に一番熱を上げている時期。推しにまつわることを一番沢山知る時期で、界隈独特の文化など含め全てが初めての「初心者」。
自分たちが見返した時に「初心者」の時にしかない熱を懐かしむことができるように、表紙を半透明の緑・黄色のペーパーで包むことで「初心者マーク」ができあがるような作りにしました。
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初心者マーク右側(左開き)の緑が私、左側(右開き)の世菜さんが黄色。
初心者マークはハートとも捉えることができます。
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大声でSEVENTEENの良さを言って回りたい「布教欲オタク」のニュアンスを出しています。
白黒のパターン部分は13のオブジェクトでできており、SEVENTEENのメンバーの数を表しています。
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「伊東健人」という名前を見ただけで少し照れてしまう、彼の良さは広まらなくてもいいという世菜さんの言葉を落とし込み、「伊東健人」がペーパーで隠れるような、控えめでさりげない、恥じらいを表す作りにしました。
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ちなみに『推察』というタイトルはzineのどこにも出てきません。なぜかというと、イベント出展用にタイトルを付けなければならず、zine完成後にこのタイトルがついたからです。
次、機会があればどこかに『推察』と入れてもいいかも。いや、やっぱりこのままでもいいかも。
そして2人の対談をA1サイズのポスターにしたものをA5サイズになるように折り込んでいます。
なぜ対談をポスターにしたかというと、1枚につき25,000字ほどある文量、編集しないそのままの時間にしてトータル5時間分の喋り。オタクの、この“キモさ“を表現したい!そうするにはサイズで見せるしかないと思い、594×841mmのポスター両面にびっしり文字だけ×2種類のポスターが出来あがりました。
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1回目は背景がグラデーションなのに対し、こちらは文字色がグラデーションになっています。
1ヶ月の間に話の内容やお互いの推しへの解像度、世菜さんと私の仲が変化していることも注目ポイントです。
もう本当にずっと文字です。2枚目の裏面にやっと文字以外(写真)が出てきます。キモい!!
ちなみに、さすがにA1をそのままバーンと広げて読んでいただくのはあまりにも苦痛だと思うので、2回折ってA3サイズにしたら新聞みたいな感じで読みやすくなる、という文字の組み方にしています。
こうして無事に、2ヶ月でこの狂ったzineができあがった訳ですが、休みがなかなか合わない社会人2人が9月頭に制作開始し、10月末の締切に向けてこの熱量を100%出し惜しみなく形にするのは少し無理のあることでした。
私はSEVENTEENの新曲リリースをほとんどチェックできずギリギリまで入稿作業に追われ、世菜さんは2回目の対談の文字起こしと編集を、貴重な休みの1日で完成させてくれました。さらにポスターはイベント開催当日の朝に配送センターに届き、世菜さんに受け取りに行ってもらう事態に。
イベントが始まってから、会場である舞鶴公園の芝生に敷かれたブルーシートの上で製本作業をやったのはいい思い出です。いや〜しかし、本当に間に合ってよかった!
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イベント「さらけだすzineピクニック」は大盛況に終わりました。『推察』も沢山の方々に手に取っていただき、面白がってくださったり、共感してくださったり。本当にありがたい限りです。
ちなみに、ボリュームがすごいので「もうzineの域越してるじゃん!」と言われたり、私たちもzineを履き違えてるなーと思ってはいるのですが、かなり赤裸々に本音を語っていたり、コンプラ的にギリギリな部分もあるので「zineです!」を免罪符にしているというのが正直なところです。雑味も口の悪さも全部詰め込んだマインドがzineなので、これはまごうことなきzineです。
私たち以外の出展者も全員がさまざまな“さらけだし”を実践していて、本気で「ここからここまで全部ちょうだい!」と言いたくなるくらい素晴らしいzineだけが集まっていました。
みさきさん、こんな素敵なイベントに誘ってくださって本当にありがとうございました。
結局「推し」ってなんなんだろう。
恋とは違うけど推しに対してのみ生まれる特別なこの感情の正体ってなんなんだ。
推しを推しと呼べずフルネーム+敬称略で読んでしまうのってなぜなんだ……
このzineを作った約2ヶ月の間に「推し」とは、「推し」というフィルターを介した哲学だという気づきがありました。
初めて自分の言葉でここまで本気で語れるものができたのは、何よりも、正反対だけど真正面から対話をしてくれる世菜さんがいたからです。
この二人を考えさせ、語らせた“手の届かない他者に思いを馳せる”という共通の行為。
私たちをここまで熱くさせるのは推し自体よりも、推しを通して本気で考え言葉を獲得していく過程で生まれる熱だと実感した、実践的な制作だったなと振り返って思います。
今はただ燃え尽き症候群のようにぼーっとしている日々ですが、冷却期間を経て、これからも好奇心の赴くまま、自由に本気でさまざまなものを作っていくんだろうなと思います。
また正反対のこの二人で。
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