ジンとは何か?(3)
※末尾に投げ銭機能としての購入ボタンを設けておりますが、この記事は全文無料です。
ジンとは何か?(3)
このタイトルも3つ目の記事になりました。
前回は”Gin”と”Distilled gin”について説明しました。前回も言った通り、4つの項目は入れ子の構造になっていますので、次の項目が最も厳しい基準をクリアしたものとなります。では見ていきましょう。
4.London gin
a.ロンドン・ジンはディスティルド・ジンの更に一部を指します。つまり
(ⅰ)農作物由来のエチルアルコールで、100%のアルコール濃度のとき、100リットルあたりメタノール量5グラム以下の高品質なものだけを原料アルコールとすること。そして風味は、天然の植物だけを使い原料アルコールに加え蒸留し、香り付けすること
(ⅱ)蒸留時の最低限のアルコール濃度は70%
(ⅲ)農作物由来のアルコールには元々いくらかの不純物(酢酸など)が含まれており、それらの基準は別途定める一般的な原料アルコール(1.〜3.のジンなどに使われる)と同じでよいが、メチルアルコールはa.(ⅰ)の基準を満たすこと
(ⅳ)最終的な商品は1リットルあたり0.1グラム以下の糖分量とし、着色料は用いないこと
(ⅴ)水以外のいかなる添加物も加えないこと
b.最低限のアルコール度数は37.5%
c.ロンドン・ジンには「ドライ(”dry”)」の呼称を用いてよい
a.の項目が非常に詳細に指定されていますね。特に二度に渡って言及されている、原料アルコールのメチルアルコール比率に関しては、同じ資料の「(原料アルコールの)技術的な定義と要件(”TECHNICAL DEFINITIONS AND REQUIREMENTS”)」に書かれた一般的な指標では、同じ条件下で30グラム以下ですので、1/6以下のより高品質なものに限定しています。
またa.(ⅳ)で、糖分量と着色料について触れられています。これを逆説的に見ると、London ginに至るまでの3つの項目では、糖分、着色料のどちらも加えてよいということになります。ざっと調べた感じでは、1リットルあたり70グラム以上の加糖でリキュールの規格に入るようですので、それ以下の加糖がジンでは可能ではないかと思われます。
ちなみに「オールドトムジン」と呼ばれる、加糖されたジンのジャンルがありますが、これは明確な定義付けはここではされていません。市販品の特徴から、多くは2.か3.に属すると思います。
c.についてはご存知の方も多いでしょう、ドライ”Dry”という表記についてです。歴史あるジンの多くには”London Dry”と書いています。
ただここは表現としてはやや微妙に感じられます。
まずこれはEUの規定ですので、イギリス以外でもロンドン・ジンは作れる事になります。近年のジンブームで、ヨーロッパの多くの国がロンドン・ジンの条件を満たすジンを作っていますが、誤解を招く表現だからか、地域の誇りゆえか、Londonの代わりに産地名を付けて「〇〇 Dry gin」としているものが多いようです。
そして更にややこしいことに、洋酒の世界では一般的に「甘味が少ない=ドライ」の認識ですが、糖分量が極めて少ないジンでもロンドン・ジンの他の条件に合わない(原料アルコールの品質やフレーバーエキスの使用など)ものはドライ・ジンを名乗れない事になります。ロンドン産でなくてもロンドン・ジン、ドライなテイストでもドライと付けられないジンという奇妙なジンも誕生し得るわけです。
これについては異なる解釈もあって、「responsibledrinking.eu」というサイトには2.のジン以下全てのカテゴリーで、1リットルあたり0.1g以下のものは「Dry 〇〇」と呼ばれる、と言及されています。この解釈だと一部のジンと、ロンドン・ジンの全ては”Dry”の呼称を使える、ということになります。
このあたりはジンという飲み物が急速に発展している近年、バリエーションが豊富になったため、また歴史的な呼び方の名残などから、なかなかはっきり分類と定義付けが出来にくいタイミングというのもあるかもしれません。
ここまで説明してきた内容も、時代とともに変わっていくのかもしれませんね。
引用・参考
EUにおける蒸留酒の規定について(2008)
https://eur-lex.europa.eu/legal-content/EN/TXT/PDF/?uri=CELEX:32008R0110&from=EN
EUのジュニパーフレーバード・スピリットドリンクスの範囲について
https://responsibledrinking.eu/drink/juniper-flavoured-spirits/
EUのジンの範囲と”dry”表記について
https://responsibledrinking.eu/drink/gin/
英語版ウィキペディア:”gin”について
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Gin
お読みいただきありがとうございました。
以下に記事の記載はございませんが、投げ銭機能として有料ラインを設けております。
ここから先は
¥ 100