宝物がいっぱい、秋
いろんな方面のヲタクである。いわゆるサブカルチャーの摂取が大好きで、でもアウトプットはそんなに得意ってわけではない、『明け方の若者たち』という小説に出てくる言葉を借りるなら完全に「何者にもなれなかった」側である。何者かになろうという努力すらしとらんが。
けれど、何者にもなれなかったおかげで産みの苦しみを味わうことなく、他人様の苦しみの中産まれた作品たちを享受して生活している。せめて生産者への感謝と課金を忘れずに生きていきたい。
日々の宝物たち
そんなヲタクの秋、自分の中で糧となってくれた宝物たちへの愛を綴ろうと思います。読んでくれた人々と好きなものがひとつでも一緒なら嬉しいです。それではどうぞ。
文学の秋
秋っていつからいつまで?9月になるとクソ暑かろうとなぜかカレンダーに落ち葉のモチーフとか登場するんだよな。ということで、なんとなく秋の9月から肌寒い秋本番の11月にかけて読んだ本の話をします。
・BRUTUS 9月号
私の中では雑誌も漫画も、活字があれば全て読書です。ジャケ買いとはこのことだ。美味しくてカワイイ完璧な存在、ドーナツに関する特集号。BRUTUSは気になる食べ物の特集の時に買いがち。去年は確かカスタード特集につられて買った。
全国の見目麗しいドーナツに心躍る中、特にミスドへの愛を綴った各著名人のコラムが面白くて、ミスタードーナツへの愛がさらに深まった。ちなみにわたしはドーナツを食べながらのドライブ、ドーナツ・ドライブが大好きです(そのまんまやないかい)。
・幸福な食卓 / 瀬尾まいこ
卵の緒しか読んだことなかったんだけど、気分的に女性作家を読みたい周期だったので購入。ミスチルのくるみが実写化した映画の主題歌になってることを知り、こういうところで繋がるのって面白いなあと思った。
瀬尾さんの小説に出てくる料理の描写が好きなんだけど、この本に出てきたクリーム蕎麦の味が気になって仕方がない。ちなみに写真は読了したカフェでいただいたチーズケーキと桃ソーダ。これだって立派な、幸福な食卓である。
・そういうふうにできている / さくらももこ
小学生の頃読んだちびまる子ちゃんも、大人になってから読み始めたエッセイも大好きな、さくらももこさん。このエッセイは妊娠〜出産の日々を綴った本である。偶然にも今年に入り友人が3人出産をしたタイミングで読んだ。わたしは、完全に親サイドの意志のみで人間ひとり生成してしまうって、喜びと恐ろしさが紙一重なことだなあと、ふんわり認識している。一般論や、人間とか女の本能より、どうしても理性が頭から離れないのだ。自分がそう思う理由を掘り下げるタイプだと、こういう苦労をする。
そんな中さくらさんのことばが温かく心に座ってくれた。
そうだ、人生、どちらになっても面白いよな(と思いつつ、おいおい子どもひとり産み落とすんだからおもろいかどうかで決めてええんか〜いというツッコミももちろん芽生える。悩みは尽きない)。それでいいのだ、人生に正解はないのだ。ほんと、ターニングポイントに読みたくなるねこういう本は。面白おかしく書いてるせいで忘れそうになるけど、本当にいつも大切なことを正直に書いてる人だなあ。
・おいしいごはんが食べられますように/高瀬隼子
6月上旬、地元の行きつけの本屋に平積みされていた芥川賞候補作品のひとつだった(のちに受賞を知る)。装丁と、シンプルに題名に惹かれた。タイトル買いは久しぶりだった。中表紙のマドレーヌと白地のタータンチェックがかわいらしい。
それから気づけば三ヶ月が経過して、やっとこさ手をつけた。結果だけ言うと、甘やかなタイトルに裏切られる内容だった。わたしが『手作り料理』にひっそりと抱えていたとてつもなく大きな不安を、めちゃくちゃわかりやすく言語化してくれた恐ろしい物語だった。わかっていた、わかっていたけどこんなに生々しく描写されるとしんどい。読んだ後も何日か引きずった。
『手作り料理』もとい『手作りお菓子』に抱える不安。これについてはずっとずっとnoteにも書きたかったことで、私の文を読んで肯定してくれたり、ことばをかけてくれたりする人々へ、いつかちゃんと読んでもらいたいと、改めて思った。
・ホーローバッドでつくるとびきりおやつ
数年前に旅先の温泉のブックコーナーに置いてあって、その場でめちゃくちゃ読み込んだ本。最近縁があり、たまたま古本で見つけて購入した。
野田琺瑯の白いバッドを普段から愛用してるのだが、主に出来上がったクッキーを詰めたり夏のアイス作りにしか使ってなかった。この本はホーローバットでガンガン焼いてくタイプなので、「こんな使い方できるんか!」と、読んでるだけで新鮮な気分になった。見てるだけでも楽しいけど、どれから作ろうか楽しみすぎる〜!
芸術の秋
この秋に見た映画。朝起きれたら見に行こうと決めた土曜朝8時の回で、私以外ふたりしか客がおらず映画館の採算面を心配してしまった。
映画館で映画を見ると、頭の中全部持ってかれるからいい。この物語にも持ってかれた。人と人との執着心や依存心を全身で受けてしまって、観たあとの脱力感がすごかった。
かあいいねえ、ニャゴ!
映画が終わってもまだ10時過ぎだったので、高速に乗り込んで刈谷市までばっびゅーん!🚗して気になってた展覧会に。『11ぴきのねこ』シリーズでお馴染み、馬場のぼる展へ!🐱
撮影可スペースもちょろちょろ。ひとりだったので壁画だけでパシャ。絵本の中の1ページが壁一面に貼ってあるとそれだけですごい迫力だ。
ねこシリーズだけでなく、小学生の頃のイラストや戦時中のスケッチなど、歴史と時系列を感じる展示だった。昔から国内の絵本作家やイラストレーターの展覧会が好きなんだけど、絵画と違って限りなく全ての時系列の作品をたくさん展示できるという強みがあるからかもしれない。
絵本も読める
一階には絵本コーナーが設けられていて、老若男女こぞってねこたちを夢中で読んでいた。わたしもそのいっぴきです。
いたるところにニャゴ🐈
色んなところの注意書きが「ニャゴ」だったり、ねこの折り紙がいたるところに顔を出していたり……地方の小さな美術館だけど、こういうところに学芸員さんの手間とセンスが隠れていてほっこりする。楽しい1日だった。
推し活の秋
ちいかわ、普通にハマってます。
東京にいる製菓衛生師の友人の布教により、まんまと気になってしまったちいさくてかわいい存在。ガシャポンをうっかり2〜3回ほど回したり、LINEスタンプ買ったり、アニメ見たり……地味な推し方をしてたのですが、この度ちいかわ飯店のチケットがご用意されまして……(母もハマり中なのでふたりで抽選に応募した)。親子で嬉々としてコラボカフェへ。
そもそもコラボカフェなんて人生で数回しか行ったことがないのですが、こんな能動的に行ったのは初めてだ。めちゃくちゃ楽しかった。カフェ内は完全にちいかわにまみれており、ちいかわ好きな人々に囲まれている。聴覚も視覚も味覚もちいかわに支配された。これがコラボカフェの威力。
はああ…この笑顔‥‥守りたい……。わたしがちいかわ、おかんがハチワレ。
これはおかんに撮ってもらった記念写真です。感無量でした。
音楽の秋
この秋に、ずっと楽しみにしていたライブがあった。生で彼女の歌声を聴くのは実に、4年前の徳島以来だ。
橋本絵莉子『燃やして探してツアー2022』に行ってきた。4年ぶりというのは、チャットモンチーの完結ライブぶりという意味である。もうずっと、ずっとあの声に恋焦がれていたのだな、そう思えるライブだった。
セトリを見てもわかるように、チャットモンチー時代のえっちゃん作詞の曲が何曲か演奏されていた。今のバックバンドのメンバーにより、新しい編成で演奏されるそれらは、懐かしいけどすごく新鮮だった。
わたしは恋愛スピリッツを聴いて、「ああチャットモンチーは本当に完結したんだなあ」と、4年越しに実感が湧いてきて、なんだか泣きそうになってしまった。20代の女の子たちがああして3人で、途中からは2人で、音を鳴らし続けられたのは奇跡的なことだったのだと。もし最初からえっちゃんが男性と組んでいたら、バンドは解散しなかったかもしれない。でも、あの女の子たちによるチャットモンチーだったからこそ産まれた曲が多すぎた。だからチャットモンチーはみんなの青春だったんだろうな。
また一歩進んだえっちゃんの歌が聴けてよかった。
音楽の秋、おまけ
最近ユーフォニアムを始めました。選んだ理由はマウスピースが一発で鳴ったから。
やっとこさドレミの音階クリアしたところです。音程めちゃくちゃだけど、とにかく良い音色になるように吹きたいなあ。金管楽器でやるならユーフォがいいなあとふんわり思ってたから、とっても楽しいです。とりあえず目標に一曲仕上げようと思います。
宝物はいつだってそこに
楽しい楽しい秋でした。ってかまあ、秋じゃなくてもヲタ活してんですけどね。
これはえっちゃんのワンマンでゲットした新曲音源、『宝物を探して』。ヲタ活って宝物探しに似てるなって気づいた。大切なものは本棚に、CDショップに、映画館に、美術館に、ライブハウスに、どこにでもある。その幾多の中から自分で決めるのだ、宝物は。
こんなふうに宝物の話もたまにはnoteに綴りたいなと思います。ではこれにて!
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