パース旅行記(2024.01)
ここではめちゃくちゃお久しぶりです。元気にやってます。
2024年の頭に、ひっさしぶりに一人海外旅行してきました。すごく楽しかったので「こりゃもう紙の本で旅行記作って文フリにでも出すか……!?」と意気込んでいたんですが、不実行のまま年の瀬ラインが見え隠れしてきたので大人しくWebに上げることにしました。光陰、矢?
なお、もともと少部数の紙の本にしたかった情報をそのまま垂れ流しているので、だいぶ長い&とっても個人的な内容です。お時間のある方、もしくは他人の個人的な日記を啜るヘキをお持ちの同族の方向けです。
OK!という方は区切りながらごゆっくりどうぞ~。
超ざっくり旅程&旅人スペック
1/5(金) 成田発 ANA直行便でパースへ
同日~1/10(水) パース市内滞在
1/10(水) パース発 ANA直行便で成田へ
1/11(木) 成田着
5泊7日の旅程でした。
自己紹介もかねて、私の旅行スペックも以下につらつら。
・30代女 / 同世代平均より体力ない
・諸々の器官弱めなので、酔い止め / 太田胃散 / 正露丸が旅行三種の神器
・海外渡航経験は両手におさまるくらい
・ツアーは性に合わず苦手なので、ほぼ個人手配派。宿+飛行機のパッケージで良さそうなものがあれば代理店を使うことも
・冒険<安心、節約<快適さ(富豪ではないので、財布の許す範囲で……)
・英語は定型アナウンスなど教科書的なもの、非英語話者向けのスローで易しい話し方であれば理解&やりとり可能な程度。ネイティブトークにはまったくついていけない
旅の嗜好、ほんと人それぞれだからね……。何か似たところのある方の参考になったら嬉しいです。
旅行先、パースの基本情報
オーストラリアの西の端っこです(雑説明)
それ以上の地理にあんまり興味ない方はこの章読み飛ばしてOK!
シドニー、メルボルン、ケアンズ……など、いわゆる「オーストラリアと言えば」な都市は軒並み大陸の東側に集中しています。
その逆サイドである西オーストラリア州は、州面積の90%ほどが砂漠地帯。パースは「陸の孤島」「果ての楽園」なんて呼ばれることもあるそうです。
というのも、パースの対蹠地(いわゆる「地球の裏」)はアメリカの東海岸あたり。アメリカ本土、カナダ、西ヨーロッパ――といういわゆる「欧米」諸国の主要地域から、物理的に最も遠い都市のひとつなんですよね。
何ならオーストラリア国内でも「東海岸から見るとパースよりニュージーランドのほうが近いんだよね……」みたいな位置関係なので、彼らからしたらまさしく「果て」で「孤島」なんだろうなあ、と。
日本との時差はマイナス1時間。緯度はシドニーとほぼ同じですが気候は結構違って、パースは地中海性気候にあたります。
私は訪問前「オーストラリア大陸のこんなところにピンポイントで地中海性気候がある……進研ゼミでやったところだ……!」と楽しくなっちゃったクチなんですが、さすがにこれ以上ダラダラと地理を語ってもあれなので割愛します。要は「夏、カラカラでアチアチ」という特徴の土地です。
訪れた1月はまさにカラカラでアチアチ、日差しもバシバシで最&高でした。が、逆に日差しナメないほうが良い気候とも言えるかと。サングラスと日焼け止めは必須です!
1日目 成田からパースへ
成田~機内
パース便は11:20分成田発。
めーっちゃラクな時間設定でしたね。変なレベルの早起きしなくて良い、かつ1日を持て余さない感じで。さすANA……。
日本は真冬、オーストラリアは真夏ということで、空港内のコート預かりサービスを利用しました。ここで不要な装備一式を脱いで身軽になれるの、とてもよかったです。
預かり7日間で1,600円也。出発ロビーで預けて、到着ロビーで受け取れます。
なお、この旅行で人生初の試みとしてプレミアムエコノミーの座席を予約していました。
ロングフライトがかなり久しぶりで体力に自信がなかった(移動での消耗を減らしたかった)のと、勤続10年報酬でもらった休暇を利用しての旅行だったので、記念に奮発してみようかなと。
プレミアムエコノミー搭乗だと何ができるか?
ANAのラウンジに入れるんですよね……つまり……
マイルをゴリゴリやってる、あるいはなんかお金持ってそうな方たち(言い方)の旅行記でよく見てきた……ANAのカレー……!
出国手続きが想定よりかなりスムーズだったこともあり、飛行機見ながらカレーちまちま食べる優雅な時間を過ごしました。機内食あるので少なめにね。
なんかこの時「大人になったな、私……!」みたいな感慨を得たのを強烈に覚えてるんですが、日記(※旅行中に都度したためている)に「これは『大人』に対して本質的でない感情だと自負している」と書いてあってウケました。い、いいじゃんよ別に……。
本質的でなさを自負しながらもスムーズな搭乗。
プレエコのサービスって航空会社によってばらつきがある(らしい)んですが、ANAは優先搭乗的なものは特になかったです。
離陸後しばらくすると、機内食が配られます。
食事内容はエコノミーと同じ。違いとしては、
①ビジネスクラス向けのアルコール類(シャンパン、ワイン、日本酒など)が飲める
②エコノミーに先んじて配膳される。ので、「もうチキンの方しか残ってなくて……」みたいな事案が起こり得ない
って感じでした。
と、ここまではよかったんですが、この後突然腹痛&腹下しに見舞われまして……。
速やかに薬は飲んだのですが収まるまでにだいぶ時間がかかり、頻繁にトイレ使いまくる迷惑な客になってしまいました。すみません。低血圧がコンボになりがちなタイプなので、このときも冷や汗ダラダラだった……。
機内という逃げ場のない緊張感もあり、途中CAさんに追加の毛布や湯たんぽをもらえないかそっと相談したのですが、本当に最後までめちゃくちゃ親身にフォロー&心配してくださってすっかり「ANA……しゅき……」に。
正直日系キャリア航空にそこまでメリット感じてなかったのですが、この日本語対応の心強さ、あるぞ……!と実感しました。ほんとありがとうございました。
あとプレエコの座席にはレッグレストがついてたんですが、これがまっっっじで最高でした。疲労感が全然違う!
私の体格(おおむね中肉中背くらい)だと、レッグレストがあるだけで姿勢のバリエーションがすごく増えるんですよね。
決して安くはない差額なので万人にオススメ!とは言い難いですが、個人的には今後ロングフライトの際には相当アリな選択だと感じました。移動、年々キツくなると言うしね……。
という快適環境だったので、腹痛が落ち着いた後はパラノマサイトやってたら体感あっという間でした。パラノマサイトはいいぞ。
パース空港~ホテル
パース空港に着いたのは、現地時間の20:30頃。
オーストラリアは検疫がめちゃくちゃ厳しいらしいと聞いていたので、想定ではここがいちばんの関門!くらいに思ってました。
既に機内で小さくやらかしてる通り私は慢性的な持病があるので、漢方を含む複数の処方薬を持ち歩いています。で、特に漢方は検疫でつっこまれがちだと聞き及び、以下の形でガチガチに対策を固めていました。
・英語の診断書(処方薬記載)を持参
・処方薬と市販薬をわけてジップロックに
・市販薬はそれぞれの薬の簡単な用途(腹痛用、とか)を英語で記載、パッケージにテープで貼る
・処方薬の袋には「これは処方薬です。医師の診断書を持っています。内容の確認が必要なら言ってください」とメモ(英語)を添付
絶対に没シュートさせないという強い意志。
……が、ここまでやったのに実際にはほぼ完全スルーでして……。
検疫の人「(申告用紙をチラ見しながら)Medicine?」
私「Yes.」
検疫の人「OK.(さっさと行けのジェスチャー)」
~完~
……徒労!
薬、鞄から出しもしなかった。拍子抜けオブザイヤーが1月にして決定した瞬間でした。おめでとうございました。
まあだからといって「ユルかったから余裕だよ!準備不要だよ!」って話ではないと思うのですが、なんか人生ってそういうとこありますよね。
R.I.P. 診断書発行にかかったお金……
気を取り直してパース市内へ。
空港直結の Airport Central Station から市内の Perth Station まで電車で20分くらいです。近ぇ~博多じゃん~(市街中央部からアクセスの良い空港のことをすべて博多だと思っている)
「スマートライダー」というSuica的なカードを買いました。便利。
運賃はゾーン制。普通の切符を買う場合は行き先のゾーンを確認して自動券売機で~って感じだったと思います。
特に迷うこともなく、22時頃には無事ホテルにチェックインしました。
宿泊したのは Pensione Hotel Perth というホテルのいちばんリーズナブルな部屋。
日本で言うところの小綺麗なビジネスホテルくらいの印象で、パース駅から徒歩15分圏内で設備もきれい、部屋は狭めだけどひとりで滞在するにはすべて必要十分といった感じでとても良かったです。
ちなみになぜか入室早々に部屋のブレーカーを落として(?)しまって、フロントに駆け込むというプチトラブルがありました。未だになんでだったのかわかりません。何もしてないのに壊れました!!!ほんとだよ!!!
深夜だったにも関わらず&私の拙い英語にも関わらずフロントのお姉さんが朗らかに復旧対応してくれて本当に助かりました。しゅき……。
結果として問題なく初日を終えたものの、機上の腹痛&めっちゃ準備していた検疫肩透かし&ブレーカー即終了のコンボが響いたのか、この日の旅日記は「幸先が悪い。」と締めくくられていました。ドンマイ。
2日目 フリーマントル
パース、土曜の朝
なんの違和感もなく7時頃すっきり起床。時差が少ないって素晴らしい。
身体の事情を加味して、この日は「最悪ホテルで1日寝ててもOK」な日として予定をブランクにしていました。(これ、本当にひとり旅行のいいところです……)
が、結果思いのほか元気だったので、パース近郊の観光地といえば!なフリーマントルまで足を伸ばしてみることに。
そうと決まれば移動前に腹ごしらえを。
ホテル周辺をプラプラしつつ、お店探しです。土曜の朝8時にあいてるところあるかなー。
旅の序盤、なんでもない道の写真いっぱい撮りがち。
このへん全部iPhoneのノーマルカメラなんですが、まるで画像加工したみたいに空が青いのが印象的でした。うおー違う土地に来たんだーって。
日陰に入ると少し肌寒いくらいで、カラッとした晴天。人も車もまばらで、いかにも「1日の始まり」な雰囲気にワクワクしました。
チェーンのカフェ、DOMEに入ります。
あまりよく知らずに入って後から調べて知ったのですが、DOMEは西オーストラリア州で愛されるローカルチェーン。
オーストラリアは独自のカフェ文化がかなり根強く、特にパースにおいてはあのスタバが撤退を余儀なくされたほどなんだとか。
さすがに嘘だァ~と思って滞在中意識して歩いてみたんですが、確かにめちゃ都会なのにスタバ一切ないんですよね……カフェ自体はいっぱいあるのに……まじか……。
気に入って滞在中に何度も飲むことになるフラットホワイトと、サーモンのエッグベネディクト的なもので朝食を。
フラットホワイトは、オーストラリアで非常にメジャーなカフェメニュー。
エスプレッソ+フォームミルク……なんですが、ラテやカプチーノと定義上どう違うのか……(わからない)。
ただ、飲み口の印象は明確に違いました。日本で飲み慣れたカプチーノより濃厚で、ギュッと苦い。かつ、ミルクの口当たりがさらさらでシルキーな感じ(カプチーノはふあふあでエアリーに感じますよね)。
私はフラットホワイトのほうが断然好みでした!
食事も食材がフレッシュで美味しかったんですが、マヨソースの脂質パンチが急所に入ったので三種の神器:太田胃散をドロー。俺は強くなりたい……ご馳走様でした……。
パース駅へ向かいながら、街の写真をぱしゃぱしゃ。
街の画力が強い。どこ撮っても綺麗~。
フリーマントルマーケット
パース駅から電車で30分ほどコトコト揺られていくと、「フリーマントル」という町に着きます。
フリーマントルは、古くからパースの外港として栄えてきた海沿いの町。規模としてはこじんまり、かつ歴史的建造物も多く残っていて建物好きの私にはたまらん雰囲気でした。イギリスが植民地を築いた時代の様式が多く見られます。
「外港として栄えてきた町」、なんか町の作りにグッとくる率高いんですよね。東京に対する横浜、札幌に対する小樽みたいな。
構造上大都市圏からの距離も近いので、大した計画なく気軽にホイッと行けがちなところも好きポイントです。
統一感ありすぎてもはやテーマパークみのあるメインストリートを抜けて、観光名所である「フリーマントルマーケット」へ向かいます。
フリーマントルマーケットは、1897年に建てられた歴史あるホール型のマーケット。現在は金土日のみの営業です。日程のタイミングがよかった。
期待していたのですが、入ってる店のラインナップはThe観光客向けの色が強くてちょっと物足りなさが。正直個人的にはウーン……。
しかしこのときの旅日記には、ひと通りの残念な感想のあとに「とはいえ、こういった建物にこういった店が並んでいることこそが『歴史』か。新陳代謝がなくなれば、建物は死ぬだろう」とも記載が。確かにね……。
フリーマントル刑務所
休憩が済んだら、「フリーマントル刑務所」を見学しにいきます。町がコンパクトなので全てが徒歩圏内。
フリーマントル刑務所は、1991年まで136年間にわたって実際に使われていた刑務所。
かつて、オーストラリアはイギリス(大英帝国)の流刑地でした。
でもって、当時の囚人というのは「やっすい労働力」でした。植民地の開拓に囚人をガンガン送り込んで使ってたんですね。
しかし囚人たちがこの地にやってきたときには受け入れ準備なんてなーんも整っておらず、彼らが命じられた最初の仕事は「自分たちが収監されるための刑務所を建てること」だった――と。
そんな中、8年もの工期をかけて囚人たち自らの手で建てられたのがフリーマントル刑務所です。
当時の囚人たちが置かれたであろう過酷な環境や、入植者に脅かされ続けてきたアボリジニたち……この遺産はただ美しいだけでなく、帝国主義の負の側面を伝えるものでもある、と私は思います。
(めちゃめちゃ余談というか自分の中でまだ結論の出ていない問いなのですが、「建物好き」をやってると往々にして入植の歴史にぶち当たるんですよね。素直な好き!の気持ちと自分が持つ歴史観、その二律背反を己の在り方としてどう受け止めるか……みたいなことを、旅ごとに考えさせられている気がします。)
入口の周辺は無料で見れますが、刑務所の建物内に入るにはガイドツアーに参加する必要がありました。
ガイドツアーは内容別に何種類か。
「Behind Bars Tour」というのがめっちゃちょうどいい時間にあったので、せっかくならと参加することに。日本語音声ガイド機材のレンタル付きで$22。所要時間1時間くらいだったと思う。
ツアーの参加者たち、自由にくっちゃべりながらダラダラついてくユルい感じだったんですが、処刑場に入った途端静まりかえってガイドさんの話に聞き入っていたのがとても印象的でした。
(処刑場の写真、私の浅い説明でもって不特定多数の目に晒すには画像の力が強すぎる気がするので、掲載は控えます)
処刑場、実際に見ると「ああ、これは人をひとり絶命させるための機構だ」というのが非常によくわかってしまうんですね。
薄暗い小屋のような場所でした。外は快晴で、換気用のチープな扇風機が回っていました。その音がちょっとうるさいなあと思いながら、わからない英語になんとか耳を傾けて、真剣なまなざしの参加者たちと、たぶん私も同じ目をしていたんじゃないかな。
あの部屋の何とも言えない質感を、今でも鮮明に思い出すことができます。
……という感じで、中に入って自分で感じてこそだと思うので、ツアー参加を是非おすすめしたい! んですが、個人的に悔しかったポイントも何点か。(ほぼ全部音声ガイド周りなんですが……。)
①音声ガイド、イヤホンないんかい
直接耳に当てる子機みたいな形のやつで、音ダダモレなんですよね。(音量下げると周りの音に負けて聞こえないし……)
なんかツアーの迷惑になっちゃう気がして、常に集団のいちばん後ろの方でチマッ……と耳に機材あててました。室内だとなお響くので、後半ほぼ使わなかったという。今思うと勿体なかったかも。
②音声ガイド、どこで押せばええんよ
ところどころ壁に数字が貼ってあるのでそれを押せばいいんですが、その数字を探し出すのが至難という。あとせっかく見つけて押しても、「これ絶対ガイドさんと音声ガイドで説明内容違うよ……!」みたいなことがよくあった。同じこと説明してても情報量がだいぶ違いそう。
③トークについていけないのはやっぱり悔しい
ガイドさん、アドリブ多し。「〇〇な人は手挙げて~」みたいな問いかけも結構あったんですが、まあまあ何言ってるかわからず輪に入れないの、疎外感あってちょっと悔しかったです。
これらすべて、「日本語音声ガイドあるなら余裕っしょ!」と過信していたのが悔しさの要因かなあと。あくまで補助ツールと割り切っておくべきでしたね。
フリーマントル港
フリーマントル刑務所を出て、海沿いのエリアへ向かいます。
”””港町”””すぎるだろ…………!
私は性根ねじれ気味の人間なので観光地としてコンセプトが均されすぎた場所に「ケッ」となりがちなんですが、土地の気候、想像する原風景、観光のために新しく作った物……ここまできちんと一体感を持ってお出しされてしまうと、「参りました!」という気分に(何と戦ってるんだ)。
五感で感じるすべてが美しく楽しいエリアでした。イイ……!
朝から脂質パンチにやられた胃も復旧したので、昼食を検討します。
Googleマップで周辺を検索したところ「Little Creatures Brewery」が気になったので、そちらへてくてく。
Little Creatures(リトル・クリーチャーズ)は、地元で愛されるローカルビールだそう。
ここは醸造所にレストランが併設されていて、さまざまなオリジナルビールを楽しめます。いやあ、こんなん挨拶しとかないとビールに失礼な天気ですからね。
入口で年齢確認を求められたので、飲みたい人は身分証を携行しておくとよさそうです。オーストラリアではお酒は18歳から。
成人と確認できると、手の甲にスタンプを押してもらえます。
ビールは「FREO LAGER」をチョイス。
せっかくなら味の感想をちゃんと書きたいんですが、ここ、旅日記には「生き返る。」とだけメモってありまして……おばか……ちゃんと味の感想を残して……(普通に美味しかったはず……!)
ソーセージは肉だ肉だァ~という感じの重量系。ミッチミチで美味しかったです! が、ひとりだとこれでお腹いっぱいに。やっぱりこういうところは複数人で来てシェアするほうが色々楽しめますね。
ちなみに、フードの看板メニューは「Chilli Mussel」。
ムール貝をチリソースで味付けしたローカルフード……と書かれていたんですが、私はムール貝があまり好きじゃないのでオーダーせず。お好きな方は是非!
お腹も満たされて外に出るとさっきまでとは風向きが変わっていて、気持ちの良い海風がざあっと吹き抜けていきました。
パース市内まで吹き抜けるこの午後の海風は、「フリーマントル・ドクター」と呼ばれているそうです。
厳しい日差しでカラカラに暑くなった空気が、爽やかな湿度を孕んだインド洋からの風で一掃されて、まさに生き返るような心地。それを「ドクター」とは、なんとも粋な表現です。
風を感じながら、海沿いの公園へ。
レジャーシートを広げて木陰でゴロゴロしている人がたくさん居て、その様子があまりに気持ちよさそうだったので私も真似してみることにしました。
レジャーシート、普通に売ってましたが持って行くのも超アリだと思います。(この旅行中、あと2回使うことになります。)
特に何をしたわけでもないんですが、このひと時はとてもよく記憶に残っています。1月の夏空、木漏れ日、聞き取れない言語の談笑の声。海風、地面の熱さとやわらかさ、草木のそよぐ音……Chill…………。
日本からこんなに遠いところでも地球は私の身体をしれっと受け止めてくれるんだなあ、なんか色々大丈夫かもなあ、みたいなことを考えていました。詩的だ。結局小一時間ぼーっと横になって休憩してたかな。
なお、ポエジーに浸りすぎたのかこのあとパース市内に帰り着くまでの写真が一切ありませんでした。これもまた旅行あるあるなんだよな……。
パースふたたび
パース市内に戻ってきたのが16時過ぎ。
夕食はホテルで軽く摂りたい気分だったので、ホテルまで戻りがてらスーパーの偵察に。Woolworths が近くにありました。
旅行先で行くスーパーって、めっちゃ楽しいよね。
この時は軽めの夕食が欲しかったのでお惣菜的なコーナーがお目当てだったんですが、全体的に「欲しいもんと違う……」な雰囲気。サラダと言ってもマカロニサラダ300グラム!みたいな。わしゃ食わんぞ。
結局チキン味のインスタントヌードルを買って無事ホテルに帰り着いたのですが、どうしても、どーーーーしても「サッパリ味のものが食べたい」という欲が拭い去れず……。
Googleマップで周辺を検索すると、ホテルのほど近くにテイクアウトをやっている日本食屋さんがあったのでふたたび偵察に向かいました。
予想外の入手アイテム:かっぱ巻き($4)。
駆け込んだのは日本食レストラン「TAKA」さん。
メニューには寿司や天ぷらもありつつ、カツ丼唐揚げうどんカレー……と、全体的に学食とか定食屋さんっぽいラインナップでした。めちゃくちゃリアルな「日本食」! こういうお店もあるんだな~。
かっぱ巻きはすげー普通にかっぱ巻きで美味かったです。こういうのが食べたかった……。(「オーストラリアでかっぱ巻き食べた」って言うとなんかめっちゃウケます。この時は真剣だったんですが……。)
チキンヌードルもジャンキー&スパイシーで悪くない感じ。量が少なめなので、食事というよりは小腹を満たすスナック or サイド的な立ち位置の商品かなと想像します。
日本だとこのポジションは春雨系が覇権を取っている気がするので、カウンター的なジャンク需要、むしろあるんじゃないかなあ。
ちなみに、Woolworths にはお酒が一切売られていませんでした。
調べてみたところ、「アルコールを販売できるのはリカーショップだけ」的な法律があるみたいですね。
スーパーと同じ建物内にリカーショップが併設されていたので特に困ることはなさそうですが、「夜にふと飲みたくなったからコンビニへ」みたいなことはできないのね。
歩き回ってなんだかんだ疲れたので、この日はだいぶ早めに就寝しました。
おやすみなさーい。
3日目 スワンバレーのワイナリー
フェリー乗り場へ
相変わらずの快晴に気持ちよく起床。
この日は、ワイナリーの見学に行く計画を立てていました。
日本にはそこまで多く流通していないものの、実はオーストラリアも世界上位のワイン生産国。スーパーなどでもよく見かけるチリワインとどっこいどっこいの生産量を誇ります。パース近郊に位置する「スワンバレー」も、そんなオーストラリアワインの一大生産地です。
出国前に調べたところによると、パース市内からスワンバレーへ行く方法は大きく3つ。
①車
車を飛ばせば30分程度で行ける距離で、これが最速手段のようです。が、ペーパードライバーの私は考えるまでもなく却下。
ちなみにオーストラリアは右ハンドル(ちょくちょく英連邦を感じるポイントがある)で道幅も広いので、日本での運転に慣れている方にとっては「運転しやすい国」だそうです。
②電車+Uber
パース駅から電車で30~40分ほど移動し、そこからUberやタクシーなどでお目当てのワイナリーへ。
これもアリだなーと思ったのですが、タクシーはあまり台数がないという口コミも散見され、ちょっと不確定要素強め。自由度は高いけどタイムロスは多そうな印象です。
③フェリー(現地ツアーに参加)
パースは Swan River(スワン川)という大きな川のほとりに位置する水辺の街で、市内中心部から多くのフェリーが発着しています。
スワンバレーはスワン川を遡上していった上流部に位置するエリアなので、フェリーでワイナリーまで直接連れて行ってくれるような現地ツアーがいろいろ提供されています。
せっかくならスワン川のクルーズも楽しみたい!ということで、私は③をチョイス。
フェリーのチケットは普通に日本からネット予約できそうな感じでしたが、なぜかカード決済が上手くできなかったので現地調達を試みることにしました。ダメでも②があるしね。
快晴の朝の街を散歩しつつ、フェリーが発着する Barrack Street Jetty (バラック・ストリート桟橋)へ向かいます。徒歩圏内。
ベル塔、「パースといえば!」な写真によく映っているランドマークなんですが、なんか想像以上に近未来的なフォルムでした。変形して発射しそう。
Jetty に着いたら、ツアー会社の窓口でチケットを購入。土日だし駄目かもなーとか色々考えてたんですが、私のときはめちゃくちゃ普通~に買えました。
出航まで時間があったので、船着き場すぐ横のカフェで軽めに朝食をとります。
この写真のドリンク、「アイスコーヒー」に見えると思うのですが……
オーストラリアで「Iced coffee」をオーダーすると、エスプレッソ+ミルク+アイスクリーム or ホイップクリームというバキバキのデザートドリンクが出てくるそうです。罠すぎる。事前に知っていなかったらまた朝から太田胃散をドローするところだった。
で、この「Iced long black」こそがいわゆるアイスコーヒー……だろうとメニュー消去法でアタリをつけて注文したんですが、後から調べたところちょっと違ったようで。
・Long black:エスプレッソ+お湯。日本で言うアメリカーノ?
・Iced long black:今回注文したもの。↑のアイス版なので、アイスアメリカーノ?
だからこう……期待と違う味だったのか……?
(苦い割に薄い、という感じで少なくとも私の好みではなかったです。日頃アイスアメリカーノを飲まないので、味に不慣れだったのかも?)
ちなみに日本で言うところの「普通のドリップコーヒー」は「Filter Coffee」と呼ばれることが多いようですが、そもそもあまり一般的なメニューではない様子。それを急冷したいわゆる「普通のアイスコーヒー」に至っては、ほぼ存在しない飲み方だそう。
Cold Brew(水出しコーヒー)は一応メニューにあることが多いらしいのですが、うーん……あったかなあ……。
初日に美味しかったフラットホワイトにも代表されるように、オーストラリアは明確にエスプレッソ文化圏のようです。カフェ文化は本当に国によって様々で、楽しいプチ・カルチャーショックに出会える確率が高いなあと。
スワン川クルージング
9時45分発の船に乗り込んで、約2時間のんびりしたスワン川クルーズを楽しみます。
船内では早くもスワンバレー産のワインをテイスティング可能とのことで、川沿いの写真でも撮りながら優雅なチルタイムを……と思っていたんですが。
結局船内で撮ったのはこの写真一枚のみ。
なぜか?
周りの乗客の方がめちゃくちゃ話しかけてくれてしまって……。おしゃべりに忙しくて到底チルはできない感じの2時間でした。
私が明らかに海外からの旅行客っぽい風体だったので興味をそそったのもあるかもしれませんが、「一人にさせておくのは悪いことカルチャー」の雰囲気を結構しっかり感じた気がします。そうかクルーズってこういう感じかーー……ッ!
(※すでに端々から充分お察しかと思いますが、私はわりと対人コミュニケーション不得手側の人間です。)
せっかくなので、この時一番長くお話した方との会話トピックスを。
アンさんという50代くらいの方で、寡黙な旦那さんとご夫婦で参加されていました。
アンさんは、ちょうど1年前の冬に家族で日本に旅行されたそう。3週間ほどかけてキャンピングカーで本州を縦断(!)したとのことで、FaceBookでその際の写真をたくさん見せてくださいました。「この日本語の看板はなんて意味だったの?」というような答え合わせクイズで盛り上がったりも……。
ちなみに、アンさんはヴィーガンを実践されている方。
日本は食の多様性への認識が後進的だと私は思っているので、「食事に困らなかった?」と尋ねてみたところ、「正直外食はちょっと困った」「でも、ファミマの弁当とうどんと豆腐があったから助かった!」との回答が。ファミマの弁当……!?
私は知らなかったのですが時期や店舗によっては大豆ミートなどをうまく使った菜食対応のお弁当を販売している(いた?)らしく、こちらが勉強になってしまいました。ファミマ、いいじゃん。
ワイナリーでランチ&見学
なけなしのコミュ力と英語力でそうこうやっているうちに、スワンバレーのワイナリーに到着しました。
敷地に入ってから建物まで結構歩きました。広ぉい……。
参加者全員でオーストラリアのワイン造りやワイナリーの歴史にまつわるビデオを見てから、ランチ会場に向かいます。
今度は黙々と食べられるチルなランチタイムが……
……と、思ったのも束の間。
ランチは円卓ですって……行程表に書いといてよ……ッ!
もうこうなったらせっかくの機会なので会話を楽しむしかありません。腹を括りました。
同じテーブルに着いた方たちといろいろお話したのですが、真っ先に能登半島地震についてお見舞いの言葉をかけてくださったのが印象的でした。
クイーンズランド州から旅行で来られたという年配の男性からは、
「もう30年近く前、一人旅の日本人女性を家に招いたことがある」
「当時の日本は『海外に一人旅なんて……それも女性が……ゾゾーッ』という雰囲気だったと聞いたが、今は変わった?」
との問いかけも。難しい質問……。
結局「今では全然珍しくないし変わったと思う。けど、『ちょっと変わり者』と見られることも多いかも」というふわんふわんな回答しかできなかったんですが、どうなんですかねこれ……私も模範解答が知りたい……(あくまで各々の肌感覚なので正解はないんでしょうが……。)
私の英語力が拙いせいでどうしても卓の会話のテンポをベキベキのバキにへし折ってしまう場面も多かったのですが、本当に親切な方ばかりで……。結果とっても楽しいランチタイムになりました。(でもそれはそれとして円卓って書いといてほしい!!!)
案の定話に夢中で写真が残っていないのですが、食事は簡易的なビュッフェ形式でした。生野菜がたくさん食べられてめっちゃ嬉しかったです。(渡航中の生野菜、何かと貴重なので……)
フェリーの出発時刻まで自由時間があったので、ブドウ畑を軽く見学しました。
大地の広さとドライさを感じられる良い雰囲気……!
こういうところで土地のムードに浸るのが好きなので、ちょっと時間が足りなかったなあ。
でも、これを機に日本国内のワイナリーにも色々訪れてみたくなりました。旅行に行くと旅行に行きたくなる~。
パース帰還
15時頃、またフェリーに乗ってパースへ出航。
ここでもまた会話会話……の2時間。
ざくっと割愛しますが、「ジャパン」と「パウダースノー」を掛け合わせた「Japow」という単語がウインタースポーツ界隈(?)にあることを教えてもらいました。北海道、さすがの人気と知名度です……!
17時頃、無事 Jetty に帰着。
フェリーから降りるやいなや「Japow」のふたり組に夕食に誘われたのですが、丁重にお断りしてホテルへ向かいました。私のコミュニケーション残機はもう瀕死よ……。
ウォーターフロントエリアである Elizabeth Quay(エリザベス・キー)を軽く散歩しながら帰りました。高層ビル群と自然がきちんと共存している感じがして、とっても好みな作りの街並み。気持ちよかったー。
Spanda(スパンダ)という有名なオブジェも記念にパシャリ。これ、奥にかかっている橋も含めて見るのかな。
元気があったら外食しようと思っていたのですが、ホテルに戻ると同時に完全OFFモードになってしまったので、近くのセブンで買ったサンドイッチとプリングルスをもそもそ食べて&パラノマサイトをクリアまで漕ぎつけて一日を終えました。パラノマサイトはいいぞ。
いま思い返すと本当に貴重な機会かつめっちゃ良い思い出なのですが、ここまで会話をする日になると思ってなかったのでちょっと疲れたなというのがこの時の率直な感想でした。
あと、内容も想像以上にツアー然としたツアーだったかな。何も考えずにフェリーに乗ってれば着くので、ラクさのメリットはとっても大きかったですが……私がもしスワンバレーを再訪するなら、事前にもうちょっときちんと行動計画を立てた上で今度は電車+Uberを選択しようと思います。
4日目 ロットネスト島
いざ、ロットネスト島へ
これが今回の旅のメインディッシュ!と楽しみにしていたのが、ロットネスト島で過ごす休日です。
ロットネスト島は、港町フリーマントルから18キロほど沖合にあるリゾートアイランド。パース市内からは、フェリーでスワン川を下って2時間弱で行ける距離になります。
見所の多い島ですが、有名なのはなんと言っても クオッカ(Quokka)!
ウサギくらいの大きさをした西オーストラリア固有の有袋類で、口角がキュッと上がった顔で旅行者とセルフィー……みたいな写真を見たことがある方も多いのではないでしょうか。
インド洋の青い海と豊かな自然に囲まれて、フレンドリーな動物とふれあう……想像しただけですべてが良すぎます。これが旅のメインディッシュでなくて何だと言うのか。
(※ふれあう、と表現上書きましたが、ロットネスト島のクオッカは野生動物なので触ってはいけません。見るだけ!)
ロットネスト島とパースを結ぶフェリーも、昨日と同じく Barrack Street Jetty から発着します。
フェリーの出発時間は8時45分。
予約完了時のメールに「1時間前までにチェックインしてね(要約)」と書かれていたので7時40分頃に Jetty に着いておいたのですが、チェックイン窓口が思いっきり閉まってて草でした。
私がメールの英語を読み違えたのかと思って翻訳アプリにもかけてみたんですが、やっぱり「1時間前までに~」なんですよね。しばらく待っていたら普通にチェックインできましたが、なんだったんだろう……。
無事に発券も済んだので、フェリー出発の時間まで朝食タイムです。
昨日と同じ、船着き場横のカフェに入りました。
バルサミコソース、爽やかで美味しかったです!アボカドと合うなあ。
写真が残っていないのですが、この日は Iced Latte($7)を一緒にオーダーしました。これがすっっごく美味しくて……。
フラットホワイトと似た感想ではありますが、エスプレッソの凝縮感とミルクの甘さのバランスが本当に抜群。日頃雑に飲んでいるアイスラテが超シャビシャビだったことに気づかされてしまいました。やっぱり餅は餅屋、エスプレッソはエスプレッソ文化圏なのかもなあ。
美味しい朝食で幸先もよくルンルン🎶
……と、この時は思っていたんですよね。まさかあんなことになるとは夢にも思わずに……(重めの前フリ)
スムーズにフェリーに搭乗し、定刻に出発しました。スワン川をずいずい下ってゆきます。
船内はかなりの混雑。途中でフリーマントル港に寄ってそこからも人が乗ってきたのですが、座れずに立っている人も多いような状況でした。
実は2日目のフリーマントル訪問後に「これ、フリーマントルまで電車で行ってそこからフェリーに乗った方が早いし安かったじゃん!」と気づいて早計な事前予約をちょっと後悔していたんですが、結果としてはパースから乗って座席を確保できていてよかったかもな、と。
写真だとなんも伝わらないと思うんですが、海に出てからめっっっちゃくちゃ揺れたので…………。
私は船と車にほぼ確実に酔うので、この時も事前にしっかり酔い止めを飲んでから挑んだのですが、それを余裕で貫通してくる程度の揺さぶりでした。キツかった……。
想定外の事態
三半規管シェイクをなんとか耐えきり、10時45分頃ロットネスト島に到着しました。海だー!
The 青い空&青い海!
ロットネスト島は島そのものが自然保護区に指定されていて、車両の乗り入れはNG(許可を得たバスのみが数本走っています)。
島内を散策する場合は自転車が基本となるので、レンタサイクルのお店へ向かいます。
私はこの時船酔いでグロッキー状態だったので、しばらく風に当たって休憩してから向かったのですが……。
写真には写していないものの、サイクルショップが長蛇の列!
とはいえ自転車がないと始まらないので30分以上頑張って並んだのですが、そのあたりで係員が何かをしきりに叫び始め、列に並んでいた人たちはざわつき始め……。
何?何?と思っていたら、どうやらレンタサイクルが Sold Out ……と聞こえたような。嘘だろ……!自転車がないと今回の旅のメイン計画が全部すっ飛んでしまうので、私も内心ざわざわです。
とは言え、まだ目の前に自転車はそこそこ並んでいる状態。
本当に Sold Out か確証が持てなかったので「あるけど、売り切れ?」と係員に尋ねてみたのですが、不機嫌そうに英語でバーッとまくし立てて立ち去られてしまい、結局よくわからず……(忙しかったんだろうね……)
え、ほんとに売り切れ……?マジで言ってる……?
あたりに漂うそこはかとなく悪いムードと、ダラダラばらけていく列。
やっぱり売り切れだよな……?と判断して私もその場を離れたのですが、船酔い+暑い倉庫の中での30分以上列待機+瓦解したメインイベント+まくし立てられた後に残る「キッツ~…」感、などなど、で、正直テンションだだ落ち状態です。私が3歳児だったら寝転がって泣きわめいてたぞ。
自転車がないとなると、島内観光の代替手段はバス一択です。
この時点で若干嫌な予感はしていたのですが、バスのチケット売り場まで急行して尋ねてみたところ、なんとというか案の定というか、バスチケットもすべて Sold Out でした。
(ちなみにここでも情報を理解するまでにまくし立てられが発生したので、心の折れ目が2個になりました)
お、終わった……。
私のロットネスト島観光、完。
……と締めくくるにはまだ心の整理がついていなかったので、クサクサな気持ちを抱えたままあたりをあてもなく散策します。
ああ……あの時悠長に休憩なんてしなければ……船酔いなんかにならなければ……いや、どんな手を使ってでも自転車付きのプランを事前予約をしていれば……。島内の絶景を巡るルートも考えていたのに……クオッカがいっぱい居るポイントも調べて楽しみにしていたのに……もう一生来られないかもしれないのに……ヨヨヨ……。
さまざまな無念が頭を巡りますが、時すでに遅し。
徒歩で行けるところまで行ってやろうか!?とも思ったのですが、15分ほど歩いたところで「あっこれ死ぬやつだ」と気がついて引き返しました。(気温37度)
とはいえ、歩いているうちに徐々にテンションも回復してきます。ないものは仕方ないからね。
こうなったら待ち時間は厭わない、プランBとしていっそ豪勢なランチを……と、徒歩圏内のリゾートレストラン「Lontara」に向かってみたのですが、
\ Closed(月曜定休)/
なんでだよ!!www
ここまで色々上手くいかないとさすがに一周して面白くなってしまって、潔く諸々のあきらめがつきました。やることない。「完」すぎる。オーケー、私の負けだよロットネスト。
それでも良い休日を
とりあえず涼しいところで休憩したかったので、Lontara の近くにあったカフェチェーン「DOME」に入りました。2日ぶり。
めちゃくちゃ良い席に座れました……DOMEは私を裏切らない……。
GAGE ROADS は西オーストラリア州のクラフトビール醸造所。
「Summer Ale」の名前の通り、暑い夏場にガンガン飲めそうなキリッとしたエールでした。ビーフ100%のガツンとしたパティによく合います!
あと、付け合わせのポテトが異様に美味しかったです。ベースはモスバーガータイプなんだけど、どこかマクドナルドタイプのジャンキーさを併せ持っているというか……。
状況加点もあったかもしれませんが、結果大満足のランチでした。お腹が満ち足りれば心底幸せになってしまえるあたり、私も結構単純なものです。
DOMEの席をずっと占拠し続けるわけにもいかないので、フェリーまでの数時間を過ごせる場所を探します。
売店にペットボトルの水を買いに行ったら、入り口にクオッカ入店NGのステッカーと侵入防止用の扉が設置されていてフフッとしました。かわいい。
水をゲットして、しばし散策。
人混みから5分ほど離れたあたりにいい感じの木陰を見つけたので、持参したレジャーシートを広げて寝転がりました。まさかここまできて「何もない午後」をすることになるとは。
気温はいかにも真夏らしい暑さですが、午後の海風「フリーマントル・ドクター」が涼やかに吹き込んでくるので、日陰であれば充分心地よく過ごせます。
波の音、汗ばんだ皮膚に感じる風、遠くの人々のざわめき……持ってきた本を開いて読書に耽っているうちに、あっという間に2時間近くが経っていました。
余談ではありますが、この時読んでいた『獣たちの海』という短編集がまさに海の大きさとわかり合えなさ、何よりひとり旅のような心地よい孤独を感じる良本で……。
波の音をBGMに、この状況でこの本を読めたのは本当に幸せだったなあ、と今改めて感じ入ってしまいました。本を持ち歩く癖がこんなところで功を奏すとは。(2024年に読んだ本、小説部門のマイベストです!)
クオッカとご対面
夕方に差し掛かって少しずつ涼しくなってきたので、最後にクオッカを探します。
クオッカは夜行性。暑い日中はあまり人目につかないところで眠っていて、夕方頃から活動を始めます。
とは言え、私が居たのは人の出入りがかなり激しいエリア。今日のグダグダっぷりからすると邂逅にもあまり期待しすぎないように……
……と、思っていたのですが。
奈良の鹿くらいの感じでめっちゃ普通に居ました。
身体がモフモフなのに尻尾はツルツルのキャラデザ、ネズミすぎる。でも脚などのディテールや動き方を観察するといかにもカンガルー寄りという感じで、ちょっと不思議でめっちゃかわいい生き物でした。最高。
こんなにかわいいふわふわが警戒心ゼロで普通に手元まで寄ってきてしまうので、「野生動物を触らない」に対する強い心が求められるところがある意味難点かな……。
上の写真の子、よく見るとお腹の袋から子どもの尻尾がはみ出ています。
きゃーー有袋類ーーー!(うちわ)
もちろん、念願のセルフィーも……
本当は顔のモザイク取っちゃいたい程にめちゃくちゃいい笑顔の写真が撮れました。この旅行中のベストショットです!
帰路は大満足で17時頃発のフェリーに搭乗。
また船酔いか……と薬と覚悟を決めましたが、1日外にいた疲れが出たのかどっと眠くなってしまい、爆睡しているうちにパース到着となりました。(幸い何もトラブルは起こりませんでしたが、どれだけ治安のいい国でも移動中の爆睡は本当によろしくないので反省です……。)
一日を終えて
夕食は写真が残っていないのですが、2度目ましての日本食レストラン「TAKA」で素うどんをテイクアウト。
正直、これまでは海外旅行中に日常食(どこでも食べられるチェーンの食事や日本食など)を摂ることに抵抗があったのですが、今回良い意味で吹っ切れた旅となりました。
胃は順調に歳を取っているので、時には「まもる」や「ためる」に相当する食事コマンドを選択したほうが「こうげき」のターンを全力で楽しめるな、みたいな。自分の体質と相性のよくない食文化圏だと余計に……。
そんなこんなでこの旅のメインイベントとなるはずだったロットネスト島の観光は不発に終わってしまったのですが、この日の日記は「案外、そして心から、悪くない一日だったと思う。きっと何度でも今日を思い出せる。」と締めくくられていました。わかるなあ……。それはそれとして、できることなら人生の中でリベンジ訪問はしたいけど。
思い返すと職員さんたちの雰囲気も恒常でないように感じられたので、何かの要因で特異的に混んでいる日だったのかもしれません。
何にせよ己のまだまだ未熟なところと案外タフなところ、運の悪さと良さ……さまざまなことを自覚できる「私らしい一日」だったなあ、と思う次第です。
5日目 お土産調達とピナクルズ
パース市内でお土産調達
この日は、夕方からの現地ツアーを予約していました。(ピナクルズという奇景を見に行くツアーですが、詳細は後述します。)
夕方までの時間はまるっと空白なので&さすがにちょっと身体がお疲れ気味だったので、パース駅周辺の軽い散歩(と、お土産の購入)をしてあとはのんびり出発時間を待つことに決めました。
ゆっくり起きて9時半頃、ホテルすぐ横のカフェで朝食をとります。
フラットホワイト、やっぱりすごく美味しい!日本でも気軽に飲めるようにならないかなあ。
レーズントーストは可もなく不可もなく……でしたが、この時のテンションや体調もちょうどそんな感じだったので必要十分でちょうど良かったです。こういうのでええんや。
腹ごしらえが済んだら、パース駅周辺を軽く散歩します。
街もコンパクトで道もわかりやすいので、この頃にはほぼマップに頼らず駅周辺を散策できるようになっていました。
London Court(ロンドン・コート)、現代的な街並みの中に突如現れる異世界感満載の路地です。「古き良き」英国を模して1937年に作られたんだとか。フォトジェニック。(入ってるお店はほぼお土産屋さんでした)
「T2」で紅茶党の友人に茶葉のお土産を買います。
メルボルン発の紅茶屋さんで、日本にも最近上陸し始めたかな?という状況。
スタイリッシュな内装なのに茶器やパッケージはポップ&カラフルで、私にとってはちょっと不思議な世界観……という印象。
茶器がなかなか日本でお目にかかれないデザインで面白かったので、自分用にも記念のマグカップをひとつ購入しました。
コーヒー党の友人には、「La Veen Coffee」でコーヒー豆を購入。
こちらはパース発のコーヒーショップです。ドリップパックが1つからバラで買える感じで可愛かったので、気軽なお土産にもよさそう。
バラマキ用のこまごましたお土産はスーパーで購入します。
先日訪れた Woolworths を予定していたのですが、途中で Coles という別のスーパーを見つけたのでそちらに入ってみました。
Woolworths より Coles のほうがお惣菜コーナー圧っっっ倒的に充実してました。
かっぱ巻きを買いに走ったあの日の私に教えてあげたい。サラダあるよ……Coles に行けば……サラダあるよ……!
Continental という、オーストラリア発の庶民的なブランドのインスタントスープを購入。これ以外にもたくさん種類ありました。
安定の TimTam も。日本未上陸とおぼしきフレーバーをいくつか購入。
渡航先で買ったステッカーをスーツケースに蒐集しているので、オーストラリア&パースのものもゲット。賑やかさが増しました!
ひと通り買い物を終えるとちょうどお昼どきだったので、手近なカフェで昼食をとります。
写真だと伝わりづらいんですが、ボリュームすごくて出てきたときちょっと怯みました。サラダだけでお腹いっぱいになれた……。美味しかったです。
オフィス街の一角にある店だったので、お昼休憩で出歩いているビジネスパーソンがたくさんいました。街の日常を感じられるの、嬉しいなあ。
食後はホテルに戻って時間までちょっと昼寝しました。いい休日だ……。
ピナクルズ・ツアーの道中
15時頃、いよいよピナクルズのツアーの集合場所へ向かいます。
ピナクルズは、ユニークな自然景観で知られるパース近郊の観光スポット。
荒涼とした砂漠の中に無数の石柱が立ち並び、その姿がまるで墓石のように見えることから、「荒野の墓標」という二つ名で呼ばれることもあるのだとか。(カッケェ……)
「近郊」と言えどパース市内からは200キロほど離れたところにあるので、レンタカーなりツアーなり、車で行くのが一般的です。
ピナクルズの成り立ちについては「諸説あります」状態らしいのですが、現在有力なのは「樹木説」だそう。
① 原生林が根を深く張り、石灰岩の地層を浸食する
② 砂漠化が進み、植物が姿を消す
③ 土地特有の強い西風によって、柔らかい地表が削れていく
④ かつて根に浸食された石灰岩の地層が、いびつな石柱形となって表出する
砂漠にかつて樹が生い茂っていたと想像するだけでも果てしないのに、石灰岩層ということは、さらにその昔は海だったはずの場所ということで……うーん、地球のロマン!
なお、現在ピナクルズは風化して少しずつ小さくなってきているそうです。本当に貴重な自然景観なのですが、近い将来形を保てないであろうものは「自然遺産」として登録できないらしく。諸行無常だ……。
指定された時間に集合場所に行くと、既にガイドの方がいてワンボックスカーに案内してくれました。
今回は日本語ガイドによるツアーで、参加者は私を入れて4人。新婚旅行でオーストラリアを周遊中だというご夫婦と、ひとり旅満喫中だという青年と一緒になりました。
偶然にも全員同世代だったこともあってか、ナチュラルな距離感で車内はとても良い雰囲気。ツアー不得意人としては正直ちょっと身構えていたのですが、この上なく恵まれたメンバーでした。助かった……。
定刻にピナクルズへ向けて出発。
小一時間走ったのち、ヤンチャップ国立公園でトイレ休憩を取りました。
時間の都合上あまりゆっくりはできませんでしたが、広大で美しい公園でした。時間(と足)があればここで一日過ごすのも良さそうだなあ。
湿地の付近には、なんと野生のカンガルーが……!
最初はこの(↑)距離感でおそるおそる撮っていたのですが、ガイドさんに「もっと近く行ける!もっと!もっと!」と煽られて、へっぴり腰で徐々にズームイン……。
最後は逃げられちゃいましたが、この距離まで近寄ることができました!
私はカンガルーってもっと大きい生き物だと思っていたのですが、近寄ってみると想像していたよりちょっと小柄なような。
気になってガイドさんに尋ねてみたところ、ここにいるのは「オオカンガルー」という種類の子。私が(あるいは多くの日本人が)想像しているのはおそらく「アカカンガルー」という近縁種で、そちらのほうが一回り大柄なのだと教えてくれました。なるほど。しかし名前に「オオ」ってついてるのに近縁種より小さいの、ややこしいな。
ツアーは苦手……と思っていましたが、こうやって少人数でいろいろ質問に答えてもらえるのはすごくいいですね!(手のひらくるん)
ヤンチャップ国立公園を出て、ここから2時間ほど北へ走ります。
「残り160キロほどを2時間で……」みたいなことをガイドさんがさらっとおっしゃったので、「ガチのノンストップでも時速80キロを出し続けることになるが……?本当か……?」と咄嗟に思ったのですが、すぐにその理由がわかりました。
ひとたび市街地を抜けると、ずーーーーーっと続くこんな道。
当然信号なんてものはないので、車はすごい速度でひた走り続けます。じ、時速の理論値……!
最初はそのかっ飛ばし具合に内心ビビっていたのですが、あたりの景色も単調なのですぐに目が慣れてしまいました。
途中休憩で立ち寄ったガソリンスタンドの、よき佇まい。無骨な感じにグッときます。
乗ってきた車のフロントについているこの鉄パイプのようなものは、カンガルーから車をガードするものだとこの時教えてもらいました。
カンガルーは「集光性」という光に寄ってくる性質を持っているので、夜間にヘッドライトをつけて道を走っているとどうしても接触事故が起こってしまうことがあるのだそう。
事故から車や人を守るためにカンガルーは轢き殺す前提……と考えると残酷な装備にも感じられますが、そうならないようさまざまな工夫が成されています。
例えば、車道の近くにカンガルーが寄ってこないように郊外では街灯をほとんど設置しないようにしたり、道と茂みの間を広めに伐採して互いの視界を確保したり……。そういった地道な工夫によって、事故は昔と比べるとずいぶん減ってきているそうです。(それでも事故は起こるので、カンガルー・バーは必須とのこと。)
ガソリンスタンドを出て、また北上を続けます。
途中で、あたり一体が焼け野原になっている場所に出くわしました。
赤土とブッシュの自然色から一変、突然現れたモノクロの視界に思わずぎょっとします。
これは、ブッシュファイアの爪痕。
オーストラリアで頻繁に発生する、大規模な森林火災です。
落雷などによる自然発火が乾燥と高温で火の手となり、油分を多く含むユーカリ類を巻き込んで大延焼していく――。
ブッシュファイアで死者何人、というようなニュースを日本で見聞きしたことはありましたが、実際に目の当たりにすると、被害のスケールとあまりの「何もなさ」に言葉を失ってしまいました。
ガイドさんは、車の速度を緩めながら説明してくれました。
「楽しく見るものではないですが、是非よく見てください。オーストラリアという地の、大切な一面です。」
西オーストラリアのこのあたりは、赤土や石灰、砂地で構成される痩せた土地です。ブッシュファイアによって大規模に森林が燃えることで、土地に「肥料」がもたらされます。その「肥料」によってまた森林が育ち、しかし土地は次第に細くなり、そこでふたたび火災が起こり――。
ブッシュファイアは恐ろしい自然災害ですが、同時にオーストラリアの生態系の一端を担う大切な要素でもあるのです。
大きな被害とならないようエリアを決めて消火活動は行うものの、ある程度自然に任せている部分もあるのだ、とガイドさんは教えてくれました。
人類の歴史は、地球上のどこにあっても自然災害と共にあるんだなあと改めて。ガイドツアー、こういう話まで聞けるなんていいじゃんね……。(二度目の手のひらくるん)
ピナクルズにて
18時40分頃、ついにピナクルズに到着しました。
砂漠からにょきにょきと生える、奇妙な石柱の群れ……!
私の腕だと似たような写真ばっかりになってしまいましたが、つまりそれだけ同じ光景が続いているということ。
紺碧の空と乾いた大地が、どこまでも、どこまでも――。
これが自然の活動によってできた景観だというのだから本当にびっくりです。
ガイドさんが「迷子になったら見つけられないから、私から見えるところにいてくださいね!」とジョークのようにおっしゃっていましたが、うっかりひとりになったら本当に自力で戻ってこられなさそうな、恐怖さえ感じる広大さでした。
ここはかつては海の底で、あるときは地中深くの根の中で、長い長い時を経て、今はこうして私が立っている。そして私は瞬く間に命を終えて、いつかこの石柱もすべてが風化して、後には砂嵐の吹く更地が残る……。
そういう巨大な時空の中にある「点」としての自分を思うとき、さまざまなすべてが全部いっぺんに身体に押し寄せて、わーっ!と叫びたいような、何かがあふれて泣きたいような気持ちになります。この時もなりました。周りに同行者がいなかったらガチ泣きしていたかもしれない……。(良すぎたということです……。)
太陽が乾いた地平線に吸い込まれてゆくのを、最後まで眺めました。
すごく詩的な時間だった気がする。
日が落ちると途端に風が冷たくなって半袖では居られなくなったので、ウインドブレーカーを羽織ってピナクルズを後にしました。羽織りもの持っていて良かった。
こういう景観だけを楽しむ場所って好みが分かれるイメージあるのですが、ここまでのウダウダした語りに共感してくださるような方には自信を持ってオススメしたいスポットでした。一見の価値ありです!
パースまでの帰路
また車に乗り込んで、パースへ向かって移動を開始。
20時頃、夕食会場となるピナクルズ近郊のレストランに着きました。メニューはオージービーフのステーキ。ツアーの参加者4人で一緒に食事します。
すごく大盛り!!という感じの量が出てきて、申し訳ないのですが半分ほど残してしまいました。(同行の男性陣は頑張って完食を目指していましたが、結局全員何かしら残してしまうほどでした)
私は硬めの肉質が好きなのでそれは良かったのですが、ソースは肉に負けているし、一緒に出てきたスープもただ塩辛いばかりで、うーん……。
こういう食事付きの現地ツアー、食に関しては正直あまり良い記憶ないですし、残念ながら今回もその記憶が強化される結果でした。
メインイベントは食事じゃないので割り切りが必要と理解しつつ、小食寄りの食いしん坊としては一食あたりの恨みが重めになりがちでほんとすみません。でもやっぱり食事に自分の意思を反映できないと結構ストレスなタイプなんだな~と改めて痛感しました……。
あ、でも付け合わせのポテトは美味しかったです!量すごかったけど。
同行者のみなさんとも「ポテトはなんかどこで食べても美味しいよね」という話で盛り上がりました。そこ共通認識なことあるんだ。
ふたたび車に乗り込んで、真っ暗な道を南下します。
あたりに明かりがなさすぎて&大地が広大すぎて、対向車のヘッドライトが見えてから実際にすれ違うまでにおっっっそろしく時間がかかることに驚きました。光ってこんなに遠くから届くんだ……!
途中、脇道(?)に入り、車から降りて少しだけ夜空を鑑賞しました。
写真はろくに残せていないのですが……天の川もくっきり見える満天の星空でした!
立っていられなくて時折よろけてしまうほど強い風が、荒野を吹き抜けていました。ウインドブレーカーを着ていても寒いくらいです。
耳元でぼうぼうと風が唸って、近くにいるガイドさんの大声すらも風に流されてあまり聞こえません。自分が一枚の紙切れにでもなったかのような心許なさの中、目を細めて見上げた南十字星――
南半球の夜空は当然見知ったものとは違う顔をしていて、なんだかとてつもなく遠い世界に来てしまったかのような、温かな不安に包まれるような、どこかへふわっと連れて行かれそうな……なんとも茫漠とした気分になったのを覚えています。今思うとCoCだったらこの時SAN値1くらい減ってたかもしれない。
あまり長居できる気候でもなかったので、しばらく星を見上げたのち、そそくさと車に乗り込んでまた南を目指しました。
その後はいつしかウトウトしてしまい、目が覚めたとき車はすでにパース市内の喧噪の中。ちょうど日付が変わる頃にホテルの前に車をつけてもらい、無事に帰着と相成りました。至れり尽くせりだった……。
なんだかすごく心の震える一日だったなあ……食事以外すべて最高だったなあ……とまだどこかぼんやりした気分のままシャワーを浴びたところ、嘘だろってくらい髪から砂が出てきてそこでようやく現実に引き戻されました。ただいま。
カーリーヘア、砂の保持力えぐいな……。
最終日 キングス・パークと帰国まで
最終日の朝
楽しかったパース滞在もいよいよ最終日。
まだ非日常の中に居たいよ時間足りないよ~という気持ちと、そろそろ自炊して家の布団で寝たいな~という体感が徐々に拮抗し始めているあたりです。
飛行機に間に合えばどう過ごしてもよいのですが、「最後にパースの街を感じたい!でもちょっと疲れてる!」という状態だったので、Kings Park(キングス・パーク)に足を運んでのんびり過ごすことに決めました。
キングス・パークは、パースの街が一望できる小高い丘の上にある公園。
都市公園としては世界でも最大級の面積を誇っていて、その広さは東京ドーム80個分ほどになるのだとか。いやわかんないな。わかんないけど、ニューヨークのセントラルパークより広いらしいです。
荷物をゆっくりまとめて、10時頃ホテルをチェックアウト。
身軽に行動したいので、夕方までフロントで荷物を預かってもらいます。
フラットホワイトもこれが最後。
手近なカフェに適当に入ったんですが、やっぱりとても美味しかったです!
今回は何かと手当たり次第な感じでしたが、もう少し長い滞在であれば自分の中での比較が進んで「お気に入りのフラットホワイト」が見つかったのかも。
キングス・パークまでは、バスで15分ほど。
市内の主要エリアを巡回する「CATバス」があるので、その緑色の路線「Green CAT」に乗りました。色分け、初見にもわかりやすくて助かる。
車内の構造が、何をどこからどう見てもあまりに日本の路線バスと同じでちょっとびっくりしました。右ハンドルだし、同じ規格(?)のものをそのまま輸出していたりするのかな……?
CATバスはこんな感じででっかい猫ちゃんがプリントされているので、走っていると一目でわかります。かわいい!かっこいい!
ちなみに、CATは「City Area Transit」の略だそうです。そんなSuica(Super Urban Intelligent Card)みたいな……。
キングス・パーク
停留所に着いてバスを降りると、美しいユーカリ並木が続いていました。
この青い空&乾いた空気とも今日でお別れかと思うと、名残惜しくて自然と歩調がゆっくりになります。
雄大なスワン川のほとりにそびえるコンパクトで現代的なビル群と、雲ひとつない深い夏空。そうそう。私はこういう写真を見て「パースに行きたい!」と思ったんでした。
園内には、State War Memorial(州立戦争記念碑)や Botanic Garden(植物園)など、見所のあるエリアがさまざまあります。広いなあ。
植物園は無料で見られるので、ちょっと入ってみました。
「園」というより「エリア」というか、公園内の一角(※広い)にオーストラリアの様々な植物が結構大ざっぱにごっそり集められているようなイメージです。
アボリジニの人々は、一年の移ろいを四季ではなく六季として捉えてきたそうです。知らなかった。今は「birak」の真っ只中ですね。
各地の植生を感じながら比較できるのが楽しかったです!
私は個々の植物をつぶさに愛でたり観察する目線が弱いタイプなので全体をするーっと散歩のように一周しましたが、植物をじっくり見るのが好きな方であれば一日コースを覚悟した方がよさそうなほどの展示量でした。
キャプションをスルスル理解できるくらいの英語力があれば、もっと多くの情報を得られて長居していたかも。
あと、ハエとミツバチがかなりブンブンしていたのでそこは覚悟を……。ハエは水分を求めているのか、油断していると口元に向かって突っ込んできやがります。やめて。
自然の中を散策してお腹も空いてきたので、公園内のカフェで遅めの昼食を。これがパースでの最後の食事です。
胃弱が一人で戦うには結構ヘビーだよなと思ってここまで避けてきたけれど、でもやっぱり名物とは対戦しておきたい……!
フィッシュ・アンド・チップスと言われると真っ先にイギリスが思い浮かびますが、実はオーストラリアの定番料理でもあります。随所に感じる英連邦シリーズ。
揚げ物と戦うコツは熱々のうちにビールと合わせて一気に畳みかけることだと思ってます。身も蓋もないな。
量もしっかりあったのでキツいかなと想像したのですが、添えられたレモンをたっぷりかけると口当たりがさっぱりして&タルタルソースの味変が良い感じで意外と最後までぺろっと食べられました。衣がざっくざくで美味しかったです!(その後順当に胃もたれはしました)
あと、やっぱりここでも付け合わせのポテトが美味しかったです。
「今回のオーストラリアで旅行で一番美味しかったものは?」と尋ねられたら「ポテト」と答えると思います。いやほんとに……。
満腹になって外に出ると、恒例の「フリーマントル・ドクター」が西からざあっと吹き抜けていました。あー、この風を浴びるのも最後かあ。
キングス・パークは、パースっ子の憩いの場です。
思い思いに木陰でくつろぐ人たちに混ざって、私もまたレジャーシートを広げました。本当に思わぬ大活躍アイテム。
フリーマントルやロットネスト島でもそうしたように、しばらくゴロゴロと本を読んだり、ただぼーっとスワン川のきらめきを眺めたり。
1週間弱滞在しただけの旅行者に見える街の姿なんてほんの爪の先の先ほど、と理解はしつつ、私はこういう時間の使い方をとても「パースらしい」と感じるようになっていました。大らかでカラリとした、まさに今この街を撫でていく風のような。
「陸の孤島」と呼ばれる街の午後は、どこまでも美しく輝いていました。
帰国まで
キングス・パークを後にして、荷物を回収して空港に向かいます。
そういえば飲んでなかったな……と最後の最後で気がつき、パース駅近くのDOMEで Long Black を一杯いただきました。うーん普通。やっぱり私はフラットホワイトが好きだ!
電車で空港に着いたのが17時半頃。
早めに着いて空港内を探索……と思っていたのですが、パース空港、思った以上に規模が小さくてほとんど見て回るところがなかったです。
出国後エリアに免税店やラウンジはひと通りありますが、保安検査前のエリアでは時間を持て余してしまいました。
プレエコだとAspireラウンジが利用できました。
ラウンジでのんびり読書をしつつ軽く食事をとって、シャワーも浴びて早々に搭乗準備は万端に。
正直昼のフィッシュアンドチップスがまだ鎮座していて全然お腹は空いていなかったのですが、「せっかくラウンジ使えるんだし……」となってつい食べてしまうんですよね。ね。ほんとそういうところ。
21時55分、飛行機は定刻でパース空港を出発しました。
離陸後の機内食タイムの後は、機内も消灯して夜モードに。
ぐっすり……とはさすがにいきませんでしたが、普通にいつも寝ている時間帯なのでウトウトしているうちに朝という感じでした。
途中、瞼に光を感じて目を開けるときれいな朝焼けが。寝ぼけつつもちょっとジーンとしてしまいました。窓際席の醍醐味ですね。
定刻より少し早めの朝8時過ぎ頃に成田空港に到着して、その後は眠気と戦いつつ無事家に帰着しました。お疲れ様でした。
行きは空港や機内でもウッキウキで写真たくさん撮るくせに帰りは疲労でスッカスカになっちゃうの、旅行記あるあるだなあ……。
まとめ
メモを全部放出するような記事になってしまったので果たしてここまで読んでくださっている方がいるのか甚だ疑問なんですが(いらっしゃったら本当にありがとうございます)、この旅行についてざっくり感想を訊かれたらどうする?という観点で簡単にまとめてみようと思います。
・パースの人、過去の旅行先で一番フレンドリーだった
人がとっってもオープンでフレンドリーでした。
道端でスマホ片手にキョロキョロしていると即座に「旅行者?迷った?」と声をかけてくれる人がいたり、カフェやお店でもお会計の時に必ず一言二言やりとりがあったり。
人の性格なんて当然それぞれですが、それはそれとして、土地や文化が育む気質のようなものはどの街にもある気がしています。今回なんだかそれを特に強く感じる旅となりました。
あと旅行者に話しかけてくるようなパースっ子はみんなパースのことが大好きで、その真っ直ぐさが非常に眩しかったです。
・DOME、近所にほしい
この旅行記を書きながら、DOMEにお世話になってる率の高さに改めてちょっと笑ってしまいました。いや良かったんだよ……。
フードメニューも充実しているので雰囲気的にはカフェとファミレスの中間というか、きちんと綺麗だけど大らかで門戸が広い感じというか。隣のボックス席で家族連れが普通に授乳してたりしました。
日本に上陸したらローカライズされて雰囲気変わっちゃう気もしますが、あれがもし近所にあったら私はヘビーユーザー化間違いなしだと思います。DOMEおいで……こっちだよ……。
・気候が気持ちよすぎる!
地中海性気候、最高~~~!これだけでも行く価値あった。
冬の寒さに嫌気が差したときに行く旅行先としてほぼ完璧だったと思います。直射日光対策はお忘れなく。
・物価は高め。円安の中行くのは正直……。
キツい!!!
アメリカやヨーロッパの一部などと比べたらまだマシな気もしますが、お財布へのアタックは強めです。社会……。
・おすすめはロットネスト島とピナクルズ
ロットネスト島はこの記事内で書いたとおりの感じだったので、きちんと全容を体験できたわけではないのですが……。それでもとーっても良かったので是非オススメしたいです。クオッカにまた会いたい!
ピナクルズはロットネスト島と比べると人を選ぶというかちょっと渋い観光先ですが、刺さる人にはしっかり刺さると思います。良かった。南半球の夜空も、見る機会があったらオススメです!
最後に、この旅行を詠んだ短歌フォトへのリンクを貼って失礼しようと思います。
ピナクルズのひとつとなって立ち尽くす地球にも火星にも砂嵐
桟橋がわたしのシャツへ渡す青フリマントルに風は西から
ふいに人と話したくなる曲線の全きフラットホワイトなれば
遠いもの考えるとき目を閉じるユーカリふかく呼吸している
夏山栞
かばん2024年8月号掲載『夏、西オーストラリアにて』より抜粋
了