脳から消えた姉の話、その2

 ニ、学童期
   
  小学校に入ると2学年上に姉がいるのに登校班でも離れて歩いていたのを覚えている。とにかく学校では知らん顔なのだ。妹だと認めたくないのであろう。
  姉は誰と仲がいいとかはわからなかったが、とにかくいつも一緒にいた梢ちゃんの悪口をよく言っていた。ハーフで美人の梢ちゃん、外から見ると仲の良い美人同士の同級生と思われていたが、姉はよくハーフの梢ちゃんのおばあちゃんとお母さんの日本人離れした顔が気持ち悪いだの、お父さんがいないことなど、とにかく自分より下に見ていたのがわかった。
  高学年になって梢ちゃんも姉も吹奏楽クラブに入った。当時楽器は高くてほとんどの子どもが学校の楽器を借りていたのだ。ところが、クラリネットを買った梢ちゃんが、うちに見せにやってきた。当時縁側のある家で,縁側に梢ちゃん,姉,おばあちゃんが座ってクラリネットのお披露目を見ていた。私は庭にいてそばでその様子を見ていた。
  明らかに姉の顔が引き攣り,嘘の笑顔で『すごいなぁ、いいなぁ
 と何度も梢ちゃんに言っていた。その顔を見て私は咄嗟に姉の味方をしなければならないと思い、当時吉本新喜劇で流行っていたギャグを真似て「どこで盗んだん?」と笑って言ってみた。するとその場の空気が大きく変わり冗談にとってくれず姉にもおばあちゃんにも大叱られして私が泣いてしまい、梢ちゃんも気を遣ってそそくさと帰ったのだ。
 そのあとあんなに私を怒ったのに、「よかった帰ってくれて,いつまで自慢が続くと思ったわ」と、切り捨てるように言ったのだ。その時も恐怖を感じた。子どもながらにこの人に関わらないほうがいいと思ったことだけおぼえている。    

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