10歳から人生が変わった その5
よしえちゃんママ
初めてよしえちゃんママを見た時は、お姉さんかと思った。
ニ歳になるよしえちゃんのママだとあとから、知った。よしえちゃんはほとんど寮母の太田先生の部屋にいた。よちよち歩きのよしえちゃんが「ママ」と、抱きつきにいくのはいつも太田先生だった。
だからてっきり太田先生の子どもだと思っていた。リビングでいつも漫画読んでるお姉さんがママだとは思いもよらなかった。
高校生の時に大学生と付き合っていて妊娠して、親に打ち明けた時はもう臨月近くなっていたとか。親も夜の仕事をしているシングルマザーで、娘のことなんか気にもせずに男と遊び歩いている様な人だと後から聞いた。
結局こばと寮で生み、なかなか親になれないでいるとか。太田先生は「しかたないよ、あの子もちゃんと育てられてないんだから、ここで二人が育ち合ってくれればなぁ」といつも言っていた。
いつかリビングで漫画読んでるよしえちゃんママに、「よしえちゃん、可愛いよね」
と言うと
「うち、わからん、可愛いってどういうこと?」と走って逃げていった。