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【マイピリ応募】私は誰かのために走れるだろうか


どうも、納豆ご飯です。
さて。私も「マイピリ企画」に私も応募させていただきます。
過去作品全てを読んだことがなくて大変申し訳ないのですが、私の印象に残った作品を挙げたいと思います。

■企画名:『私の好きなピリカ文庫をあなたへ~マイピリ~』
■企画趣旨
これまで162作品が寄稿されたピリカ文庫の中から『私の好きなピリカ文庫を絶対あなたに読んで欲しい!!』と思うような作品の紹介記事を書いてください。

マイピリ企画詳細抜粋

『アイとユウ』玉三郎さん
テーマ:教科書

昨年の5月よりすまいるスパイスに加入することになり、ピリカ文庫の作品を朗読させていただくことになりました。

過去の朗読を勉強のために聴いていると、とき子さんの声に乗せてこの作品に出会いました。

暗い部屋でとき子さんの朗読を聴きながら、ボロボロと泣いたのを覚えています。

心を打たれた作品はたくさんあります。
なかでも、この作品に出会ったときの衝撃が強く、今回この作品について書かせていただきました。


自分の心に正直な自由人で、いつもふざけてばかりのユウ。毎年クラス委員を担う、真面目な世話焼き気質なアイ。
そんな正反対な二人の女の子は同じ中学に通い、クラスも性格も違えど仲が良い。

ユウはよく「教科書」を忘れアイに借りに行くが、それには理由があった。

あらすじ

ユウはアイから借りた教科書によく落書きをし、それを怒られるが、どうしても借りなければならない理由がある。

それは、ユウがクラスメイトからいじめられており、教科書を隠されてしまうから。

ある日の授業中、ユウはアイから借りた教科書に『しにたい』と書いてしまう。ユウはその落書きを隠そうとしたが、アイに見つかってしまう。

アイはユウをクラスに探しにいくが、ユウのクラスメイトから早退したと聞き、終盤のシーンにつながる。

走る。
木も花壇も建物もビュンビュン横を通り過ぎていく。
あてもなく誰かを探すという事が、こんなに心細いものだとは思わなかった。心臓が痛い、苦しい、つらい、悲しい。ネガティブな言葉ばかり頭に浮かんでは消えていく。

『アイとユウ』引用

このシーンが本当に本当に大好きだ。
速さを感じ、風を感じ、汗を感じる。誰かのための。

私は過去、誰かのために走っただろうか。
私はいま、誰かのために走れるだろうか。
私は未来、誰かのために走るのだろうか。

そう自問してしまった。


その後アイは踏切の前に佇むユウを見つける。
「なによ~そんなに私に会いたかったの?」とおどけるユウだが、アイは泣いてしまい、アイがあの落書きを見たとユウは気づいてしまう。

「……自分の事で泣いてくれる人がいるのって、こんな気持ちなんだね」
「なによぉ!早とちりしてバカみたいだって、からかうつもりでしょ」
「ちがうよ」

『アイとユウ』引用

中学生。クラスという四方を壁に囲まれた箱の中がこの世のすべてであり、クラス替えや転校などない限りそこから抜け出すことなんて到底できない。
中学の女子なんて本当に些細なことで誰かを「ハブ」にしたがる。

私が中学生のときも、
風邪で約束をドタキャンしたこと、
メールの返信が遅かったこと、
発言が少し空気を読めなかったこと、
そんなくだらない理由で誰かに無視をされたし、
くだらない理由で私も誰かを傷つけていた。

馬鹿らしくも小さい箱の中で
言葉のナイフを刺されたら、
無視をされたら、
自分の持ち物を隠されたら、
誰も知らない遠い世界に行ってしまいたくなる。

遠い世界に行きたいと少しでも思っているとき、友達が走ってきてくれるのだ。
真面目で優等生の友達が、わざわざ学校を抜け出して、
息を切らして、全速力で、全力で自分を救おうとしてくれるのだ。自分のために泣いてくれるのだ。
こんな尊いことがあるだろうか。

純粋にユウのことを想い、道を駆け抜けるアイのかっこよさに痺れた。ただただ人間として美しい。

このような作品を書ける玉三郎さんは、本当に美しい人なんだろうなと私は感じた。

思春期真っ只中。
毎日誰かを傷つけ、誰かに傷つけられていたあの時代の自分を、アイが救いに来てくれた気がした。

時々、自分とは正反対なあなたに救われたような気持ちになるんだよ。
問題は全然何も解決していない。きっと解決はしない。
それでも生きて、笑って、大人になりたいと思う。できれば あなたと。

『アイとユウ』引用

そしてこのラスト。
そう、問題は簡単に解決しない。
ユウへのいじめが明日から終わるかといえばわからない。それでも、生きていく。
このリアルさも、なんだか救いがあると感じた。

アイが自分のために走ってくれたこと、アイが自分のために泣いてくれたことが「ユウ」の強さになるのだろう。


私は誰かを救いたいと願ったとき、全速力でその人を救いにいけたらいい。
救うなんて烏滸がましいが、それが何の解決にならなくても、全てを投げ出して駆け付けたい。

できる限りのスピードで。

玉三郎さん、素敵な作品ありがとうございました。


ピリカ文庫は、私も2022年に「深呼吸」というテーマでMarmaladeさんとペアで書かせていただきました。

その作品を出したときはnoteを始め一年も経っていなかったので、それほど交流する方は多くありませんでした。
しかし、ピリカ文庫をきっかけに交流が始まった方もおり、自身の創作の幅も広がったと感じます。

私だけでなく他の方も「ピリカ文庫(また、ピリカグランプリ)から交流が始まった」という経験があるのではないでしょうか。

ピリカ文庫は、そういった力を持つコンテンツだと思っています。

あなたもマイピリへ参加を!

▼以下企画概要

ぜひよろしくお願いします!

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