炭酸弾ける帰り道 #炭酸が好き



「学校にお菓子やジュースなんて持って行ってはいけない」
きっと、昭和だって平成だって令和だって変わらずそう。

私は平成のど真ん中に小学生だった。

家から学校まで三キロ近くあり、水筒には水しか入れてはいけない。

子どもの足で四十〜五十分かかる通学路は遠く、夏の行き帰りは本当に暑くてしょうがなかった。

「通学路が全部プールだったらいいのにね」「アイス食べながら帰りたい」「炭酸飲んでプハーッてしたいよね」とみっちゃんやえまちゃんと汗をダラダラ垂らしながらそんな会話をしていたと覚えている。

私は律儀に水筒へは水しか入れていなかったが、
えまちゃんは麦茶を入れたり、みっちゃんはスポーツ飲料を入れていた。


四年生の頃、調理クラブに入っていた。
夏休み前最後の活動では、班の話し合いで、フルーツポンチを作ることになった。

「フルーツ係とサイダー係が必要だね」
順繰りに食材を持ち寄るのだが、そのときは私の番で、私はサイダー係になった。

「五人だから、500mlのサイダー一本でいいんじゃない」
クラブの先生はそう言っていた。

よし、サイダーを買おう。
でも、本当に500ml一本で足りるだろうか?

放課後お母さんと近所のスーパーに行き、三ツ矢サイダーを買った。
一本だけカゴに入れ、いや念のためと追加で二本買うことにした。

ランドセルにサイダー三本1.5リットル。
なかなかに重たかった。でもクラブ活動が楽しみでそんなのへっちゃらだった。

調理クラブの時間になり、他の子が持ってきたフルーツミックス缶とサイダーを合わせた。
そして、先生の言うとおり500ml一本で足りてしまった。

追加で買った二本は持ち帰ることとなったが、
先生に「おうちに帰ったら飲みなさいね」と釘を刺された。

えまちゃんとみっちゃんとの帰り道。
やっぱり帰り道は暑く、
蝉はミンミンジージー鳴いていて、
空は青く入道雲は大きかった。

「サイダー持ってるんだよね」
「え、なんで?」
「調理クラブでさ、フルーツポンチ作ったんだけど。持っていき過ぎたから余ったの」
えっじゃ飲もうよ!となるのは自然の流れで、先生に隠れてお菓子を持っていけちゃうみっちゃんは、先生に見つかるのが怖くて飲まないという選択肢はなさそうだった。

もうそろそろ夏休みだし、
連日暑いし、
先生にダメと言われたけど、まぁもういいや!となった。

サイダーを開けると、
プシュッと爽快な音が聞こえた。

「順番こで飲もうね!」

えまちゃんとみっちゃんと私は交互にペットボトルを回した。


うだる暑さでサイダーはぬるく、甘ったるかった。
でも、学校の帰り道に、先生に隠れて飲むサイダーは特別美味しかった。

「炭酸飲んでプハーッてしたいよね」という私たちの願いは叶った。



サイダーを飲んだあとに見た空はさっきより青く、
入道雲は、さっきより大きかった。

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