4.いつ倒れてもおかしくなかった
0.はじめまして
2.受診までの道のり
3.まさかのやっぱり
1)夫も一緒に病院へ
大きな病院での検査で、大動脈基部の拡張、大動脈弁、僧帽弁の逆流、脊椎の側弯、近視などが見つかった息子…。
今すぐ治療が必要な症状はないけれど、お父さんの症状が心配なので…と、夫も一緒に再受診することになりました。
先生は症状の説明だけでなく、初診時に私が質問しておいたことを調べて回答してくれ、そして夫を循環器内科への受診につなげてくださったのでした。
本当に神対応…当時は状況を受け入れるのに必死で、十分に気づけませんでしたが、色々な体験を経た今、とてつもなく、ありがたいことであったと感謝しています。
当時夫は43歳。これまで生きてきて初めてわかった可能性を受け入れられなかったのでしょう。
「そんな平日に検査なんて、仕事が休めない!」などと言っていましたが、その後の予約を入れていただき、息子と同じように検査を受けることになりました。
結果については、次の受診をする前に循環器内科の先生から電話がかかってきました。病院から先に電話がかかってくるのは、ヤバいやつ…。ドキッとしつつも私が出ましたが、覚悟して聞きました。
「やはり大動脈基部の拡張が見られ、径が53mmある。一般の人だと手術の適応は55mmだけど、マルファン症候群の人は、組織が脆弱なので45mmが適応と言われている。いつ大動脈解離を起こして倒れてもおかしくない状態なので、手術を勧めるが、当院の外科では難しい。専門外来のある病院があるらしいので、そちらを紹介するので行ってみてほしい。」
という内容でした。
かなり大きな病院にかかったつもりなのに、そこでもできない難しい特殊な手術が必要であることを理解しました。
でも遠くの病院での入院は、小学校低学年と保育園児を抱えた核家族には、負担が大き過ぎます。一縷の望みを託して近隣の病院にも問い合わせをしてみました。
しかしながら、マルファン症候群の人の結合組織は脆いので縫合の仕方も違うらしく、大動脈基部の手術の実施件数があまりありませんでした。家からの距離よりも、やはり症例数が多いところであることが優先だと判断しました。
夫に告げると、「仕事休めねー!」とのこと。
そういう問題ではないのですが、逃避したくなるのも理解できたので、つっこまずにおきました。
そして紹介状を送っていただけることになり、手術実施の症例数が多い大学病院に行くことになりました。
1つ1つのアクションに数週間かかり、大学病院にたどり着いた時には秋になっていました。
2)思い起こせば
私は、ある程度予測はしていたこともあり、取り乱すことはありませんでした。
いえ、あまりの展開についていくのに必死だっただけかもしれません。
あるいは、キャパオーバーで感情がフリーズしただけだったのかもしれません。
実父が僧帽弁閉鎖不全からの心不全、肺水腫を起こし、入院手術した時に、立ち会ってきた経験があったからかもしれません。
私自身も医療現場での勤務経験があったからかもしれません。
とにかく、相談していた友人と最初につないでくださった先生には報告しましたが、あとは誰にも告げず、日々を過ごしていました。
でも思い起こせば、これまでの成長の過程で抱いていた違和感はいくつかあり、いろいろと腑に落ちることがありました。
●出生時、比較的胸囲が大きかったこと。(マルファン症候群は、鳩胸や漏斗胸など胸郭の骨形成異常が出やすいのです。)
●生後1ヶ月で頭の骨が歪んできて、寝かせ方が悪かったのではと焦ったこと。(生後すぐの頭の形はよかったのです。1ヶ月したら、頭蓋骨がひしゃげてきて、左右対称に向かせて寝かせる、ゆとりがなかったのかもと自責していました。でも、しばらくすると治りました。こちらももしかしたら、マルファン症候群の影響だったのかな…と思いました。)
●保育園に登園する際に、子どものリクエストで、たまに150段ほどある急な階段のある公園を歩いてショートカットすることがあるのですが、2歳の頃、上っているうちにチアノーゼが出て焦ったこと。(おそらく心臓の弁の逆流があったのでは…)
●とにかくめちゃくちゃかわいい赤ちゃんで、私と夫から、こんな美形の子が生まれるなんて奇跡、将来は福山雅治だな…と思っていたこと。(今思えば親バカフィルターが重症で、客観的に見たらさほど…なのですが、整って見えた要因は、上の子と違って、赤ちゃんらしいブクブク感が少なかったからでは…と思いました。)
●成長するにつれ、「老け顔」と言われるようになったこと。(近所のスーパーで息子を連れていたら、知人に突如言われました。たまにいますよね、腹筋に力を入れていないと、やられちゃうような言葉を発してくる方。失礼だなーと思いながらも、たしかにあんなにかわいかったのに、普通になってきた…と思いました。脂肪が少ないので、年齢と比してアンバランス感は出てきたのかもしれませんでした。ちなみに普段私は懲りずにぼけーっとしていて、ちゃんと結界を張れていないらしく、その方にはその後もたまにしか会わないのに、天然爆弾風の暴言を食らうことがあります。)
●保育園に迎えに行っても、園庭で遊んでいるとなかなか私に気づかなかったこと(なるほど視力が悪かったせいだったのかと思いました。しかしながら、年齢的に視力検査自体を理解できず、指示が入らなかった可能性も考えられました。)
当時は驚きよりも納得の方が大きい気分でした。
つづきます