見出し画像

10.入院中のご縁、退院練習

1)不思議なご縁

夫が入院したのは家から2時間の距離にある病院でしたが、不思議とご縁がいろいろとありました。

夫の会社の先輩のお子さんも長期入院されており、お子さんを訪れるタイミングで、時折夫の部屋にも足を延ばしてくださったことは大変心強かったようです。

また、私にも偶然の出会いがありました。

以前に高校でハンドボールをしていたと書いたのですが、大学時代にもインカレチームでハンドボールを続けていました。その時にご一緒していた先輩に院内の売店でばったり再会したのです。医師として小児外科にお勤めとのこと。

「うちの子もお世話になるかもしれません。」と言うと、子どもがいる人には言われ過ぎている社交辞令というお顔を一瞬された気がしましたが、今ここに私がいる理由を告げると、マルファン症候群の子の胸郭異常の手術も行うことがあると教えてくれました。息子のことは一旦保留にしていましたが、少し心強い気がしました。

さらに実はこの時、すぐ近くの病院に、息子の保育園の同級生のパパも入院していたそうです。お互い渦中で知りませんでしたが、ママ友も、毎日東京までお見舞いに通う生活をしていたのでした。それを知るのはずいぶん後です。「保育園の先生だけはご存じで、同じ時期に2人もパパの入院で都内まで通っているんだなあと思っていたんだろうね…。」、そして「病気は家族を変える…きれいごとでは済まない…」とお互いに語り合うことになるのでした。

不思議なことに、私の人生の断片がつながるような出会いはこの後も続きました。

2)退院練習

さて、夫の退院にあたり、最大の課題は、私が都内まで運転できるかどうかでした。平日の運転は怖かったので、週末に夫の様子を見に行く際に、車で行ってみることにしました。

夫の調子も落ち着いてきていたので、顔だけ見たら、日々心細いであろう中、がんばっている子どもたちへのご褒美に動物園に寄るプラン。泊りがけで手伝いに来てくれていた実母にもついてきてもらいました。

手に汗握りながら運転。ちょっと古めのナビの言いなりになっていたら、なんだか遠回りしてしまった気がしましたが、なんとか無事に到着しました。子どもたちと母には下のカフェで待っていてもらい、私だけ夫の病室へ。ちょうど回診があったので、先生に子どもたちに一瞬だけ会ってもよいか聞いてみました。先生は渋いお顔をしつつも、同世代くらいなので、親子それぞれの気持ちは理解はできるといった様子で、病棟で下でほんの一瞬ならば…と了承してくださいました。

夫と院内のカフェに向かうと、当時4歳だった息子は夫を見るや否や抱きついていきました。久々にパパの顔を見た娘はなんだかモジモジ。後から聞くと、本当は泣けそうだったから我慢していたのだそうでした。

その後、洗濯物だけ受け取って、すぐに動物園に向かいました。いろいろ我慢しているのを感じ、遊びたいだけ遊ばせました。

帰りも安全運転で帰る気力体力を残しつつ、たくさん歩きましたが、リフレッシュになりました。

3)退院

そうこうするうちに、夫からは、いろいろと管も抜けて、無事退院となりました。

ホッとするような、あれこれ家事をしてもらっていた母が帰ってしまうのが不安なような。

時は12月。小学校や保育園ではインフルエンザや胃腸炎が流行する頃。感染症の温床と言っても過言ではない我が家で、体調をこじらさずに看病できるかも含め、新しい生活にドキドキでした。

二度目の都内までの運転で、なんとか夫を連れ帰ることができました。

胸骨がちゃんとつくまでは2-3か月。振り返りや重いものを持つ動作は禁忌とのこと。運転も荷物運びも、請負う日々が続きます。何はともあれ、毎日都内まで通う生活は終わりました。家族全員がんばりました。

つづきます