魔女の新年のお茶会

大晦日の魔女集会が終わったら、次は魔女の新年のお茶会が開かれます。
仲良しの魔女たちが、小さな魔女オミの自慢のハーブガーデンに集まります。オミの肩には今日も真っ白いフクロウのシュヴァンクがちょこんと乗っています。
 「さぁ、皆さんじっと座ってないで!準備を手伝ってください。ミウ、お茶のお湯を見てきて。ステラおばさんは、その隠し持っているサーフケーキをさっさと出してくださいね」
 ステラおばさんは大きなリボンのついた箱を渋々取り出しながら、
 「あら、どうして私がサーフケーキを焼いてきたことを知ってるのかしら?さては昨日、鏡でのぞいたね?」
 「そんないい匂いがしてたら、誰にでもバレバレです!忙しいんですから!お皿の大きさはこれでいいですか?」
「んーそうねぇ、花柄の大きいお皿にしようかしら。その方がケーキが綺麗に見えるわ。あらでもこの小鳥の柄も素敵ね〜やっぱり薔薇かしら、シュバちゃんはどれが良いと思う?」
 ステラおばさんはゆっくりとお皿を手にとっては見比べています。シュヴァンクはお皿選びのお付き合い。首をくるくるまわして、これこれとステラおばさんの相手をしてくれる良い子です。
「きゃあ」
「どうしたのー?」
お茶の準備をしていたミウの叫び声が台所から聞こえてきました。
「蜘蛛が!蜘蛛が!」
 どうやら苦手な蜘蛛が台所にお邪魔したようです。
「あなた、新人の魔女じゃないだからいつまで蜘蛛を怖がってるの?そんなんじゃ他の魔女に笑われるわよ」
「だって、足が8本もあるんですよ!」
「それはそういうものだから」
「蜘蛛の伝説が怖すぎてそこから無理になったんです!」
「伝説って、織物の娘が女神のアテナと競争して、互角の腕前だったから怒りをかって蜘蛛にされたおとぎ話?」
 ミウも魔女の服や帽子を作ることを得意としていて、同じような力を持っている織物の娘にどうも思い入れがあるようです。
「ぁあ恐ろしい、蜘蛛を見ると縮こまります」 
「はいはい」
ホウキでささっと窓の外に逃がして、ことは一件落着。ちょうどお湯も沸いたので、お茶会がはじめられそうです。

「今年もまた無事にこの時を迎えることができました、すべてのことわりに感謝です」
 お茶はハーブガーデンでオミが育てた、エルダーやカモミール、エキナセナのブレンドティーです。身体が温まる特性のスペシャルブレンドは魔女の間でも大人気。そこに手作りのローズヒップのジャムやバラの花びらのジャムを入れてなんとも香り高い贅沢なお茶会でしょう。
 ステラおばさんのサーフケーキは新年の占いに使われます。サーフケーキの「サーフ」とは古い英語で「イースト菌を入れない」という意味があり、食べた人の運勢を予言する力があると信じられてきました。
では、占いの始まり。サーフケーキをボウルに入れて、ひっくり返したり縦横に振って、それぞれお皿にあけます。そのケーキがお皿のどの位置にあるかで今年の運勢を解釈することができます。
例えばケーキが皿の左側に寄っていたら「幸運がやってくる」ケーキのクズのほとんどが皿の端に乗っていると「生活のために働かないといけない」など。
 まぁまぁ占いですから、良い解釈に越したことはないのですが、当たるかどうかも日頃の行い次第でしょう。お茶会の話題として今年をどう過ごすか、思い思いに日暮れまでおしゃべりをしたら、夕飯の支度をするためにそれぞれの家に帰って行きます。
 シュヴァンクももうすっかり撫でられ疲れて、おねむです。今日の片付けはまた明日。だって明日もまた日が登るのですから。明日がある幸せを煩わしくも、嬉しくも感じ、魔女たちは眠りにつくのです。

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