地獄学生

 ここのところ、私は世界の夜にいる。くらやみ。孤独。小説が、というより文章が、書けない、というよりわからない。これまで、作品をつくるときはトンネルの中にいて、光の差す方が出口で、それに向かって歩き続けるという感覚だった。今はスマホの明かりすらなく、自分がいったいどこにいるのか、句読点の打ち方もなんだかキモいような気がしてくるし、本当にこんな文章をインターネットに公開していいのかどうかさえわからない。きっかけは、自分の中では確かにあった。だけどそれを思い出しながら整理して書く、ということが今はできない。なんだか不甲斐ない。誰に対して? 私の文章を好きだと言ってくれた人たちと、誰よりも自分の文章が好きだった自分に対して。

 書けないことを、数人に伝えてみたりもした。各々の反応はこうだった。

「毎日パソコンを開くくらいはしないと。それは最低限。全部忘れちゃうから」
「読書はしてる?」
「今、公募に出せる作品はないの?」

 私は首を縦に振ったり横に振ったりした。正直に打ち明けると、絶望した。毎日パソコンを開けないし、読書に集中できなくて読解の授業を何度か休んでしまっているし、去年の十二月以降長編を書き上げられていない。私ってもうだめなんだ。と思った。
 なんかもうさっさと中退して、人生も中退した方が楽かもな〜
 私ではない人間になりたい。だめじゃなくて明るくてみんなから好かれていて、お風呂に入ったらさっぱりした!と思えるくらい心身ともに健康な人間に。

 前回のゼミでは、正解がわからないことがつらすぎて発狂しながら書いたエッセイを一本提出した。正解どころか訳がわからないまま書いた。タイトルはつけられなかった。講評の「伝えたいことがあったらタイトルは決まる。全体的に荒いし、読者を楽しませようと思っていない」という指摘がその通りすぎて死んだ。伝えたいことが思いつかなかったし、楽しく書けてもいない。その作品は書き直しが決まった。もう一つ提出できていなかった書き直し三回目のエッセイと、この十日ほどで二本書いて、あとは小説を一本。文字に書き起こしただけでしんどい。小説だけを書いていたい。
 しかし、少し前に学部の頃の同級生から、卒制について「学長賞(一番すごい賞)と橘の作品は出来が全然違う」と言われたことが頭から離れない。文字に書き起こしただけでしんどい。そんなことは私が一番わかっていて、悔しくて泣きながらこれを打っています。だけど悔しいという感情があることに、自分の中の自分が少し喜んでいる。でも泣いています。鼻が痛い。

 それと、ここ数日は体調が悪い。腹痛はわりと頻繁に起こるからあまり気にしていなかったが、お腹というか鳩尾が痛いことに気がついてからは、あのおそろしい忌々しい胃腸炎の可能性が頭を過ぎり、怯えている。胃腸炎は本当に苦しい。電車の中でのたうちまわるくらいしんどい。二年前に罹ったときは、鳩尾が十秒に一回のペースで痛くなり、耐えられなくなって病院へ行った。とはいえ痛み出してから病院へ行くまで二日ほどの空白の期間(胃を抑えながら友達と遊んでいた)があった。友達と遊ぶのが好きすぎて、痛みよりも優先していた記憶。
 四日ほど前から、寝転ぶと嘔気を感じるようになった。酸っぱいものが喉まで上がっていて、そのまま吐き出す勇気はなくとりあえず飲み込む。喉がしみる。あとは鳩尾が痛いだけで、腸は普段通り。親に話すと「ストレスだね!^^」と返された。ストレスだとして、取り除けない場合はどうすればいいのだろう。なんかもういろいろめんどくさい。母胎に帰りたい。
 最近も失人間関係があった。失人間関係ではないけど、すごく落ち込むこともあった。詳細は書けない。思い出すこと、文字に書き起こすことがしんどいから。まあどれがストレスでもいいや。取り除けないんだから。あーー人間やめたい明るい人間になりたい!
 人生って地獄なんだな 今死んでも地獄行きだけど


 一回生のとき、日本文学の歴史の講義で先生が「恋で死ぬことなんてない」と言っていたのを、私は未だに覚えている。当然のことだと言うような表情だった。
 恋で死んでみて、歴史に名を刻んじゃおっかな〜^_^
 と、あの頃も思ったし、今も思っている。
(でも夏までは生きる でも今より絶望する前に終わりたい)

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