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#79 失われる仕事と残る人材
これは#78 AIと競争する子どもたちの続きです。
つまり、ある程度の学力(一般的にはかなり優秀)を有するAIが、これから確実に増えることが予想されます。
シンギュラリティは来ないとしても、近い将来に有能なAI技術によって多くの仕事は、人から機械へと代替えされ、労働力の在り方が変化する可能性が大いにある。
オクスフォード大学の研究チームが予測したコンピューター(AI)化によって「10年から20年後に残る仕事、なくなる仕事」が示されている。
10年~20年後になくなる仕事
1.電話販売員、2.不動産登記の審査・調査、 3.手縫いの仕立て屋、4.コンピューターを使ったデータの収集・加工・分析、5.保険業者、6.時計修理工、7.貨物取扱人、8.税務申告代行者、9.フィルムの写真の現像技術者、10.銀行の新規口座五開設担当者、11.図書館司書の補助員、12.データ入力作業員、13.時計の組立・調整工、14.保険請求・保険契約代行者、15.証券会社の一般事務員、16.受注係、17.融資担当者、18.自動車保険鑑定人、19.スポーツの審判員、20.銀行の窓口係、21.金属・木材・ゴムのエッチング・彫刻業者、22.包装機・充填機のオペレーター、23.調達係、24.荷物の発送・受け取り係、25.金属・プラスティック加工用フライス盤・平削り盤のオペレーター
出典:松尾豊「人工知能は人間を超えるか」
お気づきだろうか、一般的にホワイトカラーと呼ばれる事務系の仕事が多いことを。
2.不動産登記の審査・調査、4.コンピューターを使ったデータの収集・加工・分析、、8.税務申告代行者、11.図書館司書の補助員、12.データ入力作業員、14.保険請求・保険契約代行者、15.証券会社の一般事務員、16.受注係、17.融資担当者、18.自動車保険鑑定人などがそれらにあたる。
また、7.貨物取扱人、19.スポーツの審判員、22.包装機・充填機のオペレーター、25.金属・プラスティック加工用フライス盤・平削り盤のオペレーターは、仕事がマニアル化しやすい特徴をもち、AIによって代替えしやすいと言える。
「意外と少ないんだな」と思った方に残念なお知らせをしなくてはなりません。
このオクスフォード大学の研究チームは702種に分類したアメリカの職業の約半数が消滅し、全雇用者の実に47%が職を失う恐れがあると予測しています。
あくまでアメリカの話ではありますが、わたしたちの生活を注意深く見渡すとよく分かりますが、コンビニや食料品店やレンタル店においてもセルフレジまたは完全無人店舗が増え、完全自動運転(レベル3)の車、人が行っていた農薬散布がドローンによるものになり、海外ではスマートホームと呼ばれる3Dプリンタを使用した家が作られ、住民票がコンビニで取得でき、写真の現像は自宅やコンビニの端末で行い、銀行口座はオンラインで対面することなくでき、電気のメーターはデジタルになり検針員が不要になった。
このように、身近なものにまで機械化は進んでいます。ですが、その多くは肉体労働の代替えです。
しかし、今後20年もすればホワイトカラーが行う仕事も同じような道を辿る可能性は高い。だとすれば、今後快適さの代償として貧しさを強いられる人もより多くなるおそれがあります。
どの国の統治者も失業率を気にしていますが、人口が一定であっても仕事の分母は減り続けるのであれば失業率は高くなります。
過去、世界では国が豊かになり労働力にかかるお金が高くなれば、近隣の貧しい国にその労働力を賄わせ維持してきました。そして、その貧しい国も同じように経済発展をとげて豊かになれば、今度はその国が同じように、より貧しい国に労働力を求めるという仕組みで世界は回っていました。
それ自体決して喜ばしいものではないですが、今後世界中でその労働力が機械に代替えされる可能性があります。
極端な話ですが、移動するのに馬にまたがる人が現在の世の中でどれだけいるでしょうか。産業革命が起こる前は当たり前だった馬車、昭和初期まで当たり前だった人力車も今では観光の一環でしかありません。
小さなパイかもしれませんが、人力車の引手だった人たちはその後どうなったのでしょうか。
このように、経済の変化は人の生活を一部では豊かにし、一部ではすべてを奪います。
残る仕事とは
先ほどのオクスフォード大学の研究チームが出した予測には、10年から20年後に残る仕事もあります。
10年から20年後に残る仕事
1.レクリエーション療法士、2.整備・設置・修理の第一線監督者、3.危機管理責任者、4.メンタルヘルス・薬物関連ソーシャルワーカー、5.聴覚訓練士、6.作業療法士、7.歯科矯正士、8.医療ソーシャルワーカー、9.口腔外科医、10.消防・防災の第一線監督者、11.栄養士、12.宿泊施設の支配人、13.振付師、14.セールスエンジニア、15.内科医・外科医、16.教育コーディネーター、17.心理学者、18.警察・刑事の第一線監督者、19.歯科医、20.小学校教師、21.医学者、22.小中学校の教育管理者、23.足病医、24.臨床心理士・カウンセラー、25.メンタルヘルスカウンセラー
出典:松尾豊「人工知能は人間を超えるか」
上記をみると特徴的なのは、コミニケーション能力や理解力を求められる仕事、柔軟な判断力が求められる肉体労働などがあります。
AIの自然言語処理の難しさからも、対人を必要とするものが多いのは納得がいきます。
つまり、過去の頭の良い人の特徴であった計算処理とデータ量のようなものは、とっくに機械に代替えされていて、これからは軽度の人間的理解力を必要とするものにまで代替えが可能になりつつあるのです。
考えてみればわかることですが、土を掘るユンボを操縦することも、田んぼでトラクターを操縦することも、オフィスでエクセルを使いデータ入力することも、すべて人が手作業でやっていたことを機械に人がやらせているにすぎません。
振り返ると、建築業界では構造計算というものがありますが、パソコンが普及するまでは手計算で行っていました。(相当大変だったと思います)
設計図においても、CADが普及する前は手描きで行っており、図面が変更になると消しゴムで消して描きなおしていました。そのため、トレース紙といって半透明な用紙に描き、感光紙を使いコピーしていました。
構造計算:建築構造物・土木構造物などが、固定荷重・積載荷重・積雪荷重・風荷重・地震荷重などに対して、構造物がどのように変形し、構造物にどのような応力が発生するのかを計算することである。また、構造物がそのような変形や応力に耐えられるのかを判定することも含まれる。構造物の安全性や使用性を確認するのが目的である。最終的には、構造計算書として、A4の紙で100 - 5000枚程度にまとめられる。
残る仕事の多くに○○第一線監督者や、○○ワーカーなど、今後は機械を使いより少ない人数で会社を運営していく流れだと理解できます。
Googleなどの機械をメインに扱った企業をみればわかりますが、企業規模に比べて社員が少ないことがわかります。これは、業界の特異性なのかもしれませんが、彼らのフォーマットでは企業の社員は少なくても成立し、このようなフォーマットが他業種にまで拡大してきていると捉えてもよいと思います。
では、わたしたちはどうあるべきなのでしょうか。
正確にはわかりませんが、今後は理解力・読解力があり、知識・知能を一定量有することを前提とし、それに加えコミニケーション能力が最重要課題になるのではないでしょうか。
社会は次第と無理ゲーな感じになってきているともいえます。
わたしたちは、遺伝子によりそれぞれの適応しやすい仕事や作業があると思います。それが機械化によってより限定的になれば、必要な人材フレームに納まらない人たちが増えるのは明白です。
それらの問題を解決することを避けて、経済発展を優先させれば歪みが生じ社会のバランスは崩れる恐れがあります。
未来を生きる子どもたちはそのような社会の中、どのように舵を切ってゆくのでしょうか。
それでもより良い社会を祈りましょう。
おわり
参考文献「AI vs. 教科書が読めない子どもたち 新井紀子著」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
とのまきこさん画像を使用させていただきました。
毎週金曜日に1話ずつ記事を書き続けていきますのでよろしくお願いします。
no.79 2021.8.13