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真夏の夜の悪夢 "法廷での証言" Call Me "Joker"
▒魅惑の囚人ルート-1-▒
救出された生存者の証言から、最も疑わしい人物がすぐに浮上した。被害者らと同じバンドAで活動するTである。
メンバーの関係は結成当初から良好であり、犯行の動機や、直接的な原因となった出来事など、不明瞭な点が多い。
起きた事象だけを見れば、残忍で狂気的な犯行であり、サイコパスの特徴が目立つものである。
法廷にて、弁護側は被告人となったTの精神分裂と人格障害を主張。Tには自身の立場を擁護する意思が乏しく、あたかも人格が入れ替わるかのように奔放な発言を繰り返し、まともな会話にならないという。その主張を裏付けるように、法廷での被告人Tの証言は、終始支離滅裂であった。
以下、録音音声より引用する。
「人間スイカ割りの続きがしたかっただけじゃーん?超楽しかったもん。また皆でやりたい」
「AとB(被害者)の顔見れて嬉しいわ。急に消えるんだもん。すごい怪我してて可哀想だけど…崖から落ちたってマジ?よく死ななかったねホントに。Oさん(故マネージャー)は何してたの?」
「何でこんなことになったの…え、ツアーはどうなるの?リハ明日からでしょ?そんなケガしてていける?」
「だからー、皆S(コテージ)から帰りたくなかったんでしょ?すげー嫌がってたじゃん!だから、ぜってー見つかんないとこに隠してやろって思ったの。俺の優しさに感謝してほしいわー」
「キッチンで夏野菜切ってたら、C(被害者)が"何か手伝う?"って聞いてきたからさ、じゃあ具材にして食っちゃおうと思ったのよ。お腹空いてたし。丸くて美味しそうじゃん?逃げても捕まえる自信あったから」
「もうすぐ東京帰るってなって、皆すごく暗かったんですよね。そしたら一人ずつメンバー居なくなるし。まさか家出したんかな?俺たち見捨てられたんかな?って思って。一番頼りになるドラム(A)と、直前まで一緒にいたボーカル(B)が消えて、すごい不安で…そしたらスマホも無くなるし」
「一体誰の仕業だよ!って。皆して霊とか呪いとか騒ぐし、廊下で変な影も見たし…次は俺も消されるかもって思ってました。マジで怖い」
「早く犯人見つかってほしいですよ。どうせストーカーとかでしょ?まさかウチのメンバーがトチ狂ってやったとは思わないですけど。良い奴ばっかだし」
「え?俺、なんかしたんですか?ヒコクニンの席ですもんね、ここ。でも、何をしたかとかマジで分かんないんですけど…?でも、とんでもなくまずいんですよね?もしかして俺、捕まるんですか?事務所クビですか?え、バンドは?」
「Aは箱の中、Bは木の中、Cは腹の中。でも、結局見付かっちゃったねー。残念でした!(高らかに笑う)」
以上。
いずれも証言としての整合性を著しく欠くもので、法廷を混乱させ、度々弁護人が制止を試みるが、効果は薄かった。
5名の被害者のうち、生存していた4名の証言を以下に記す。
生存者A (宿Sの地下室で発見)
「全部突然すぎて、ほぼ何も覚えてません。感覚的には事故に遭った感じです。確かに衝撃はあったけど、縛られたり、ロッカーに押し込まれた記憶はないし⋯。目が覚めたら床の上でした。Tは本当にいつも通りで、寝る前まで一緒にテレビ見てバカ笑いしてましたよ。本当にあいつがやったんですか?信じたくないです」
(頭に包帯を巻いて登壇。犯人の姿を見ていないこともあり、状況を完全には把握できておらず、どこか他人事のように話していた。証言の間、被告人Tの方を頻りに気にしており、Tが笑顔で手を振る場面もあった)
生存者B (森の崖下で発見)
「いつもみたいにTちゃんに録音に付き合ってもらって、夜遅くなったから、ちょっと休憩しよっかーって、二人で外に出ました。Tがライトで道を照らしてくれて、丘まで登って、一緒に星を見てて、あ、流れ星だねーって言ってたら急に、『ねえ、このライトってどれくらい硬いのかな?』って彼は言いました。で、いきなりガツン!て殴られました。怖すぎて、それだけははっきり覚えてます」
(松葉杖をついて登壇。本来なら死も免れないほどの危機に見舞われた後だったにも関わらず、尋常ならざる気力をもって証言に臨んだ。法廷の張り詰めた雰囲気に怯えており、終始たどたどしい口調だったが、『』内の言葉だけはよどみなくすらすらと述べていた)
生存者C (山裾の車道で発見)
「T兄(被告)が夜食作ってて、何か手伝う?って覗いたら、急に振り返って包丁向けられました。もう意味分かんなくて、Oさんと必死で逃げて、懐中電灯も落とすし…道が真っ暗で転んだんだと思うけど、その時にOさんの叫び声?みたいなのが聞こえました。そこからは何も覚えてません。
…え、Oさん本当に死んだんですか?」
(終始視点が定まらず、体も左右にふらふらしていた。見るからに青ざめた顔をしており、話すのがやっとという様子。恐らく外傷よりも精神的ショックによるもの。証言の間、被告人席を一度も振り返ることはなかった)
生存者D (事件から数日間行方がわからなかったが、公衆電話を使って自ら事務所に連絡し、無事が確認される)
「一人また一人といなくなるから、次は俺の番かと思ってました。寂しいけど、受け入れなきゃなって。人間の仕業とは思わなかったですね。人にできることじゃないんで。Oさんは優しい人だったんで、俺らの為に犠牲になったのかなって。でも、メンバーが全員生きてて良かったです。バンドが続けられるんで。ただ一つだけ疑問があって。なぜ俺は襲われなかったんですかね?」
(被害者意識が薄く、終始淡々とした様子で淀みなくすらすらと言葉を述べ、証言の時間は4人中最も短かかった。最後の奇妙な問いかけの後、法廷は数秒間静まり返り、被告人Tが不意にケラケラと愉快そうな笑い声を発した)
真犯人は誰だ?
🎼アリス九號. - Drella / A9 - 道化師
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