見出し画像

初めてキスをする

始まりも終わりも泣いている
泣いたら始まり 泣いたら終わり

待ちあわせて、見つけてあいさつをし、話して、ご飯をたべて顔をみて、
横を歩いたりいっしょの傘に入ったり手をつないだりして、おうちに行く。
今夜帰るか帰らないか、相手がどう考えているのかを探るけど、口にだして確認しないと決まらない。
初めての日にホテルに行くくらいなら帰りたい。からだを触りあうことが目的でまだ一緒にいたいんじゃない。その人の部屋を見てみたりして、情報を浴びたい。
明日も予定があるなかで、夜から朝にかけてのゆるされた時間のなかで、できる限りその人のことを知りたい。
その人のことについて、明日ももっと考えられるように。
カギを開けて入っていくのに続いて入って靴を脱ぎ、荷物をどこに置こうか迷ったりする。
明るい部屋のなかでは、さすがに表面的なやりとりをせざるを得ない。目をあわせられない。
お風呂に入って、ほかほかしながら歯を磨いて布団に入り、目をつむる。
このままでいいな、このままでもいいな、と思う。
心臓の音とか息とか体温が少し近づいてきて、少しも嫌だと感じていないことをうれしく思う。
私もくっつきたいよ、とからだを寄せる。
今日一日友達みたいにいっしょに過ごした人と、お互いの温かさや熱さをきちんと交換しあう。
そして、初めてキスをする時のどきどき。
くちびるが触れあってしまったときの幸福と罪悪感。
眠たさにも似た甘さですべて溶けて、生きても死んでもない。
やさしいキスを、何度もしてくれるから、大切にされている気がして泣いてしまう。
始まりはいつも泣きそう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?