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第三夜【この旅の結末はどこか】scene3
☆☆☆
火継の肩と首の隙間に腰の出っ張りをひっかけ、左腕でがっちりとベルトを固定されてはいたが、空気抵抗によって二人がバラバラにされないのが不思議でならなかった。上昇する時は背中をくの字に曲げ、上向の空気抵抗を減らすのと同時に、火継からかかる力で胃が押し潰されることを少しでも避けようと努め、逆に下降する時はその小さな体からわずかでも離れないように、火継の脇腹に手を回してヒルのように頭をへばりつ
第三夜【この旅の結末はどこか】scene2
☆☆
京都に着いて一時間ほど経った頃か。
二〇六系のバスを降りたセンジは、右手に高速道路、左手に瓦屋根の伝統家屋のたたずむ、未来と過去の逢瀬を歩いていた。乙組の担任・歴史の下園は、数人の女子生徒に囲まれながら先頭を歩いている。三十人あまりの隊列の隅々まで意識を配っているはずもない。しかし先ほど宿に着いた際に一度、出発する時に一度と、かなりの頻度で点呼を取る几帳面ぶり。目的地についたらまたやる
第二夜【鬼の子】scene7
★☆☆☆☆☆☆
昨夜は寝付けなかった。喉は潰れていて水を飲む時でさえ痛むし、背中一面に張り付いた痣が寝返りするたび激痛を伴った。石原に殴られ続けた時の方が、まだ怪我の具合はマシだった。
ナノマシン。ソラが絞り出したあの言葉を、彼女は否定しなかった。それにパイロットって? 遮光性カーテンの隙間から淡く青い光が漏れ出す頃、ソラは充電器の上に乗ったスマホを取ってメールを開いた。検索欄に『御門司郎』
第二夜【鬼の子】scene6
★★★☆☆☆
野ざらしの廊下を移動して西校舎の門を潜ると、ひんやりした静けさが二人を包んだ。吹き抜けになっている一階をしばらく進んで、階段を登る。一階の作業場は、学校行事や部活動が自由に使うことができたが、今はその時期ではない。二階にはコンピューター室があって、明かりが見えた。さらに階段を登っていくと、旧家庭科室、旧美術室という半ば物置のような教室があって、静寂は増していく。
「ここならニンゲ