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透明日記「カモはひんひんと鳴る」 2024/11/27
朝、喉が渇く。からだがしびれる。頭が重い。目が開く。昨日の酒がくああっという熱になって頭が回らない。回らない頭でも目が開くので、水を飲んだりトイレに行ったり。特になにも考えずに過ごす。
水がやらこくてうまい。唇に当たると自然と口が開く。つるつると体内に流れていく。飲んでるという感じよりも、流れの一部になったような感じ。抵抗もなく水が流れ込む。水うま、水うまと、何杯も飲む。
いっぱい酒を飲んだ次の日はいつも、腹を下す。なんべんもトイレに行く。
手と足に気怠い熱が絡みつく。ベランダでタバコを吸って空を見る。トイレに行く。水を飲む。そうするうちに眠くなる。少し寝て昼。
昼ごろからは本を読んだりして過ごしていた。夕方に散歩する。
川辺、曇り。雲間から光の雨が降り注ぐ。そういえば朝方も東の空で光が筋になって降っていた。風がそよと吹く。川が滔々と流れる。
草むらから雀の声がする。速そうなチャリがカンカラと鈴の音のようなものを出して通り過ぎる。と、雀がわあっと飛び上がる。
少し離れた草むらに、身体を斜めにして留まる。隠れているけど、見えている。見ていると、雀らは、うわっ、見られてる!っていう感じになって、また、わあっと飛ぶ。わあっと飛んで、ふうっと休むと、うわっ!となるのを繰り返す。4、5回繰り返して、ぼくの見えないところに飛んで行った。
川の遠くの方にカモが浮く。浮いていたカモの群れが飛び立った。左手の前方からぼくの後ろを回って、後ろから前方へと頭上を過ぎた。ひんひんひんひんと、声なのか翼の音なのか分からない音を出して飛ぶ。カモの羽ばたきは忙しない。あれで遠くから来るのかと思うと、頑張ってる感じが出ていてかわいい。群れは川を離れて街の方に行った。
川に段々がある近くで腰をおろす。石の上には二羽の鵜が立つ。一羽は上流をひしと見つめて何かを待っているようだった。もう一羽は羽を開いて、わらわらわらわら、小刻みに羽を動かす。砕ける水の音に乗り、アホになっているようだった。
川面には、石段の手前で水の窪みができている。窪みは流れる川に変化もなく、静止しているかのよう。不思議な陰影に見惚れていた。
しばらくすると、雲間から日が差す。少しからだが冷たくなっていたので、日が差すと救われた気になる。光が川辺を満たすとき、サーンという感じで、幕を剥がしたように風景が変わる。からだがじわあっと微妙に広がり、時間が遅くなるような気がする。からだが風景に馴染む。人間から足を洗うような瞬間。
カフェで本を読む。あんまり集中力がない。読んでいる小説もつまらないように見えてくる。心がからだを離れていた。
友達と連絡を取り、頼まれていた展示物の相談をする。夜に会おうということになる。
外に出ると雨が降っていた。一旦家に帰る。小走りで雨から逃げようとしたけど、逃げられないので諦めて歩く。頭皮に雨粒が溜まる。溜まったものが頬を伝う。つま先に雨が染み込み、靴下が濡れる。嫌な感じ。からだがどんどん冷たくなる。
家に帰ってドライヤー。少しして、傘を持って家を出る。友達の店に集まり、ビールを飲んだ。メシも食う。雨が止んでから、展示場所を何ヶ所か周ると、サイズ感がわかって展示のイメージが少し具体的になった。場所を決める。
具体的な話を聞くと、いろんな人がいろんなものを作るようで、なんか作ろーという気持ちがふっくらとして、いい刺激になった。
少し雑談をして帰る。夜は寒い。自販機でぽっかぽかレモンを買って電車を待った。