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透明日記「千鳥橋で遊ぶ」 2025/02/01
朝にカレーを食い、ニューパライソというイベントの開会式に参加しに行く。
天王寺乗り換え。駅のホームはパーンとどこかに抜けている。いつも、頭の中とホームとの境目がないように感じる。ぼくは半分ぐらい透明になる。
これからどこかへ行く人々が、各々の目的地に思念を飛ばして雑踏となる。そわそわとした気持ちが渦巻き、巨大な空洞のような音が響く。
電車だけが現実。現実はけたたましくホームに滑り込み、ぼくの透明を消し飛ばす。不透明な身体で乗車。
千鳥橋に着く。三日連続で来ていたので、出勤している気分になった。少し眠くて、あくびがぶわぶわ。川底からぷくぷく上がるあぶくのように、ぶわぶわぶわぶわ。
昨日さぼてん堂で貼り直した作品が落ちていないことを確認し、タバコを吸って一息つく。
さぼてん堂周辺は、開会式に向けてざわざわと動く。ぼくは茶を飲む。久しぶりに綾鷹を飲んでいた。すっきりした気持ちになる。朝っぽい。のど飴も舐める。カラコロ歯に当てて転がす。ひとつじゃ物足りない気分で、飴玉ふたつでカラコロと過ごす。
ほったて小屋での開会式。いい雰囲気で始まる。穏やかな祝祭。テープカット的なものを生で初めて見た。終わりに小屋の中をちらちら覗く。自由参加の書き物もあったので、またいつか書こうと思う。
おかんの台所という小屋の近くの店で友達と飯を食う。ランチセット。唐揚げを頼むと、まだ頼めるらしい。ナスと豚の炒め物を頼む。友達はハンバークとサバを頼んでいた。
注文を待つ間に、前も来てくれたよなーと言われる。初めて行く店でたまに言われる。いや、初めてです。と答え、メガネがそう思わせるのではないかと、考えていた。メガネによって人の顔の個性は隠れ、同じような形の顔はメガネを掛けると、同じような印象になるのではないかと。
友達に作品について聞く。人間テルミンという謎楽器を作って、徘徊する予定だと。衝撃すぎた。完成を願う。
ご飯は安くて美味かった。薄い大根の漬物はゆずの香りがする。明太子のポテサラもいい。
イベントのスタンプラリー付属のクーポンにスタンプを押してもらう。次回一杯無料クーポンを手に入れる。
暇があったので一旦、さぼてん堂に作品を見に行く。インコを眺める。ベランダに作品を見に行く。立って眺めようと思って立ち上がると、コンクリの庇に頭を打ちつけた。全身の色素が一瞬抜けたように思う。蒼白。
13時から別世界ツアー。作家たちと千鳥橋を散歩しながら色んな作品を見る。いろんな作品があって面白い。写真や織物、お面や楽器など、いろんなものを見る。
曇り空。薄雲越しに太陽がぼやっと見える。太陽に監視されているような気分。
途中、さぼてん堂に着くと、知り合いが中庭通路の作品を見に来てくれていた。意外な出現で、うれしい。ツアーに参加してもらう。
あれこれ見て回るうちに、街を見る目が変わっていく。なにげない掲示物や落書き、ゴミや洗濯物が別の意味に開かれる。歩いているのは楽しかった。
途中参加の知り合いはぼくの作品を全部読んでから帰るということでツアーから抜け、ツアーは二時間の予定が押しに押して三時間半掛かっていた。それでも、まだまだ見れてない作品も多いので、また見に行こうと思う。
ツアーが終わると、ぽつぽつ雨が降る。歩き疲れて帰る。
帰りに天王寺で本屋に寄り、へんな漫画を手に取る。店内をうろうろして冬の歳時記も手に取る。歳時記は要らんやろと思っていたけど、「虎落笛」という言葉が気に入って買う。もがりぶえ。これで、冬専門の俳人になれる。
家で歳時記を少し読み、カレーを食って寝た。寝る頃には、開会式が一週間ぐらい前のことのように感じていた。