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Photo by
kunihito_miki
移住するなら、と妄想している。
昨日、旅行から帰ってきた。
長島大陸のうつくしい海、目を閉じて味わいをじっくり確かめたくなる海の幸、濃い南国の緑が続く町並みに、風力発電の風車の並ぶ山々。
思い出がぽつりぽつりと雨粒のように脳天に垂れてくると、五感が昨日までを再生する。
移住しようかなあ。軽はずみな企みが頭をよぎる。
こんな風に考えてしまうのは、わたしだけだろうか。きっとすばらしい旅行のあとは、誰でも日常から心がはみ出して、ちょっと彼の地へ戻ろうとするのだと思う。
ちょっと移住の妄想が具体的になるのは、今回の旅先には友だちが住んでいるからだ。カイユーヤくんが地域おこし協力隊として住んで働いている。
彼は食堂をやっていて、おいしいごはんをつくっているから、食は最高。住に関しても、東京で暮らすより確実に安くできる。衣も、別にどこかで買っておけばいい。なによりうつくしい自然に囲まれて生きられる。
いいなあ。
あともうひとつ、住みたい場所がある。奈良の三輪山に近く。大阪に住んでいたときに、よくお参りしていた大神神社があるところだ。今年の夏、ここにもひとり旅で立ち寄った。
神聖な三輪山と、おおらかな奈良の空気、おいしい三輪そうめん。ひとも穏やか。ここに住むのもいいなあ、と前から思っていた。奈良はどこへ行っても安らげる。たとえば吉野山へ桜を見に行ったとき、山菜を摘むおばあちゃんの姿も清々しくて「こんなふうになりたいなあ」とあこがれた。
ぜんぶ、妄想だ。
でも、考えるのは楽しい。
デンマークにも住みたいし、クロアチアにも行きたい。イタリアも、フランスも、タイも、台湾も。
とはいえ、東京のじぶんの部屋に帰ってくると、ほっとしたりもする。揺れながら、日常と非日常のあわいを漂っている。
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