大井町開拓記【湯喜】 前編
久しぶりにソープを予約した。
正直予約する前は迷った。
貯金した方がいいんじゃないか?
そんなことにお金をまわしてる場合なのか?
時間の使い方は他にないのか?
様々な迷いが頭をよぎったが、予約した今心は晴れ晴れとしている。
ウキウキしている。
そして、興奮している。
電車の移動時間に本を読もうと思っていたがテンションの状態がそんな知的行動を受け付けない。
はっきりいってそうした行為が待っているという喜びが動物的感性であり慣性で体と頭を支配してツイッターを見ていても何も頭に入らない
選択とは選択する余地があるからこそ迷うのであり、選択をしてしまえば案外と迷いは消えるのだと実感する。
思えば大学受験もいよいよ勉強するしかなくなる時期になると不思議と集中できた。
もっと早く選択できていればとも思うが、詰まるところ選択の時間までが俺という一つの人間でもあるわけなので、それはもうそういうことなのだろう。
移動しながらこの文章も打っているがはっきり言って集中できてない。
性欲が思考を停止させている。
今回読者諸兄に済まなく思うことがある。
それは今回の目的地は堀之内ではない。
今回の目的地は大井町だ。
だが堀之内開拓の心意気を失ったわけでは決してないので安心して欲しい。
純粋に大井町という場所にソープがあることが意外で興味があったんだ。
はっきりとは知らないが、法律上ソープランドというものはもう建てられなくなったらしい。
その関係で地下に潜った風俗産業がデリヘルだとか。
ともかくそうしたお国の懸命な努力があってソープランドは減少し、民族浄化の如き取締によってどこの街にでもあるものではなくなったのだと。
勝手に思っていた。
勝手と言うのはよく調べていないので、そんなところだろうと俺が思っていたと言う事だ。
だからこそ、五反田という風俗店やデリヘルが隆盛を極める街の近くではあるものの。
ゴリゴリのビジネス街にある大井町にぽつんと佇むその店舗に強烈に興味が惹かれた。
店舗の名前は【湯喜】(ゆき)
ちょっとしたスナックの様な名前もまた老舗っぽくていい。
老舗のソープランドがどういうものか知らないがそう思えるのはもしかするとDNAに刻まれた何らかがあるのか、それとも日常の雑多な情報の中そういうったものにアンテナが向いているのか。
十中八九後者だろう。
何故この店舗を知ったのかというと、たまたま上司がこの店を見つけたのだという。
全く縁というものはありがたいものだ。
その縁がなければこのビジネス街にできた空隙を見つけることすら叶わなかっただろう。
改めて上司への、そしてそうした縁を紡ぐまでに至ったこれまでの全てに感謝を捧げる。
そろそろ目的地の駅だ、後は何らかのすっきりしたものを抱く俺にバトンを繋ぐことになる。
それゆえに、それはまた別の俺となっているだろう。
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