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「広末の恋文」は2023年の Bell Bottom Blues である

少し恥ずかしいのだが、
恋愛について私の乏しい経験から語らせてもらうと、おそらくは恋愛の真理であろうと言えることが二つある。

  1. 恋愛感情というものは、抑えようにも決して抑えられるようなものではないということ

  2. 恋愛というのは必ずしもハッピーなものとは限らないこと


なぜ、こんなクソ恥ずかしいことを大上段に書いたのかというと、「広末の恋文」を目にして、久々に大感動してしまったからなのだ。

あの恋文は文章表現としても素晴らしいとしか言いようがない。
あの短いフレーズで、あそこまで様々なイマジネーションを想起させる表現というのは、滅多にできるものではない。
しかも、韻の踏み方、頭韻も脚韻も完璧である。
同音異義語を組み合わせる言葉遊びや、「合う」「入る」等のいろんなニュアンスをもってイメージを膨らませる言葉をチョイスするセンス、最高である。
しかも極めつけは、「きもちくしてくれて」である。これは、声を出して読んでみればわかるのだが、「きもちくしてくれて」と「気持ち良くしてくれて」では、言葉数が一音しか変わらないが、前者の方が圧倒的にリズムに乗るのだ。
そのうえ、行間には、匂い立つような女の情念すら感じさせる。もはや「定吉二人キリ」の世界と言ってもいい。
おそらく、広末は特に意識せずに言葉を紡いでいると思うのだが、おそろしい才能である。

往年のロックファンとして言わせてもらえば、できる事なら、ローウェル・ジョージかJ.D.サウザーに曲をつけてもらって、リンダ・ロンシュタットに歌ってもらいたかったくらいである。(リンダはライブにおいて「Willin'」を歌う前のMCで、ローウェル・ジョージと一時期不倫関係にあったことをうかがわせる発言をしている)


恋文が晒されてしまったのは、彼女にとって計算外だったかもしれないが、恥じることはない。
婚外恋愛に陥った挙句、「もし死に場所を選べるというのなら、君の腕に抱かれて死にたい」(ベル・ボトム・ブルース)、「僕のどうしようもなく不安な心をどうか癒してほしい」(いとしのレイラ)と歌ったクラプトンと根っこは一緒である。
恋愛感情とは自分でどうにかできるような代物ではないから、本人もそうするしかなかったということは、私にもよくわかる。
そういう状況に陥った時に、多くの人を感動させ歴史に残るような芸術的表現を残せるのが、スーパースターというものである。
(私のような多くの凡人たちは、ただただみっともなく恥ずかしい姿をさらすだけ)


しかし、「無期限謹慎」とはなんなのだ。
このような優れた才能を謹慎させるなどというのは、文化的損失ではないか。
確かに周囲の人を傷つけてしまったかもしれないが、恋愛の苦しみやそれに伴う罪悪感なんて、本人が一生抱え込んで死ぬまで向かいあっていくものである。
一番苦しいのは本人である。
好きにさせたらいい。
ほっとけや。


それと最後に。
広末は早いとこ著作権登録をして、管理をJASRACに任せたらいい。
きっと隅々まで著作権使用料をむしり取ってくれるはずである。

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