90’sへの恨み
自分は現役時代はメタルが死んだ時代でした。
速弾きが絶対だったのに、突然
「速さはダサい!ウマさは古い!」
みんな靴下みたいな帽子を被り、ズルズルにストラップを下げ
コードをかき鳴らした。
専門の間にも所属バンドがなかなかなく
「ギターソロを弾かない」という条件を飲んで女の子の後ろで
カッティングをしたり(好きなので嫌ではなかったけど)
やっと入ったハードロックバンドでも
「ギターソロで弾きすぎる」とか
「お前はサーカスか」とか言われたもんで。
当時の俺はもちろん若さゆえとんでもないプレイをしていましたが、
人の後ろで弾く時の『遠慮』は学校で習っていたのでやはり悔しかった。
「ハードロックなのにギター鳴らしたらダメなんか!?」
って。
そういう地べた這いつくばって一時は道草を食うかどうかまで堕ちた自分が好きだったバンドも消された。
あなたは知っているか?覚えているか?このバンドを?
どうよ!?
ボンジョビの弟分ってことでデビューしたけどハードロックだったのは最初だけ。どんどん本格的なブルースバンドになり、これだけ突き刺さるメロディを紡ぐ職人を当時のレコード会社は切った。
ファンも離れた。
次にWINGER。このバンドは正直俺のスラッシュメタル以外でのベストだったのだがやはりあっさり消された。
消された理由は売り上げの激減とかではなく
「グランジが流行ったから」というレコード会社からの一方的な理由。
解雇寸前に出したアルバムは実に重厚で素晴らしいデキだった。
これほどのメロディとビジネス的成功を築いても、グランジのショックには勝てなかった。本当にこのバンドは売れていた。
このギターソロは当時『世界一難しい』と言われたもんだ
これほどのバンドたちを巻き込み、殺したグランジは自ら瓦解する。
暗く陰鬱としたモノならばゴシックメタルやデスメタルがある。
もうパンクでもない、コアでもない、メタルでもない中途半端はいらなくなった。そしてブームの作り手に『祀り上げられた』カート・コバーンは猟銃を口に咥えた・・・・。
なんの冗談だ?そう思った。そのころ自分は某飛脚で血反吐をはいて走り回っていた。
でも彼女とうまくやっているつもりだったし、音楽も振り切った。
とある事情で帰郷し、彼女は結婚寸前に浮気して逃亡。
そのまま音楽を離れた。
しかし数年してギターを戯れに手に取る。
そして病気再発ですよ音楽という麻薬はやっぱ効くんですね。
今やギターはうまくても大丈夫になった。
いろんな価値観があっても認めてもらえるようになった。
あの時代、
『グランジしか認めない』あの空気感。
自分は氷河期で、教科書とか、授業内容とか、全部境目で、
そして不況の世の中に『自己責任』で放り出された。
恨み言はいいたくないが、
いまの若い子は
「時代のせいだね~、なんとかしよう!若者の貧困!学費免除!雇用!病気!」
っていいよね。逆に大きく振りかぶっちゃって。
でも『美味しかった』世代と『世の中全部が認めてくれる不幸』世代の
間の氷河期世代は何もない。
本当に、何も。
貧乏ですらない。
本当に徒手空拳で、運ゲーになって。
しょうがないとあきらめたつもりなんだが。
でもバブルの熱狂よりも、あのズブズブと燻った崩壊後の
焦げ付いた臭いが自分には鼻につくよ