BANANA FISH 感想 5巻 アッシュが自分を責める理由に関しての考察
最近Tiktokに嵌まってるんだけどマジで時間泥棒で草~。おすすめ永遠にリールできるわすげえな考えた人。正直良く分からんと思っていた平成女でしたが、使い方とかないよね。フィーリングだわ。適当にスクロールしておけばいいでしょ。しかも広告もスクロールできるのが秀逸だよね~。料理とかモノマネ、メイク、ペン字系面白い。
さて本題の5巻ですが、今回は物語が大きく進みます。
5巻のストーリー
ジャシカが中国人に襲われ、アッシュとマックスが助けに向かう→その間にドースン博士の屋敷ではショーターを囲ったユーシスが、英二を拉致→アッシュとマックスが気づいて屋敷に戻ったところにドースン博士本人登場→BANANA FISHについて知る→そこに来た中国人につかまり、NYに戻る→ゴルツィネと再会→ショーターBANANA FISHを打たれる→シン・スウ・リン登場(アッシュとショーターの救出を企む)→拘束されたアッシュ、ショーターと英二と再会するが……
5巻はかなり物語のキーとなる巻だと思います。なぜならBANANA FISHの謎が解けるから。BANANA FISH=人を操れる麻薬。
こっからゴルツィネを筆頭とするコルシカ人マフィアがなぜBANANA FISHの研究にこだわるか、それをけん制したい李家(チャイニーズ)そして巻き込まれるストリート・キッズ。コルシカ人はただの麻薬ルートの掌握だけでなく、合衆国にまで幅を利かせようと企むわけです。どこまでも欲深いゴルツィネ。BANANA FISHという悪の陰謀を知ってしまったのがアッシュ・リンクスという天才だったことが、この作品の主軸なストーリーなわけですが(つまりアッシュが世界のヒーロー)なかなか複雑なんですよね。
英二とアッシュの関係や、アッシュの心理描写に読者は心を奪われがちなんですが、19巻を通してストーリーにもちゃんと筋が通っているんですよ。
BANANA FISHを説明しようとすると、合衆国の平和のために、いや……ちがうな。お兄ちゃん(グリフ)を殺めたBANANA FISHという悪を倒すために、アッシュは戦った。そして勝って合衆国を救った。って話なんです。えっ!?ってなりません?でも表面上のストーリーはそうなんですよ。でも不思議なことに、私は読み返すとき、「そういや~結局BANANA FISHってなんだったけ?薬だったよなぁ?アッシュがとにかく英二と親友になるけど、死んでしまうことしか覚えてねぇや。」と思っていたわけ。
やばくね!?すごすぎん!?メインストーリー理解しなくてもBANANA FISHって感動できるからね。意味わかんないのに面白いから。だから思いきっちゃえば、「アッシュと英二の友情物語」ってものBANANA FISHを簡潔に説明するとありなんだよな~。表裏一体。うーん、こんな稀有な作品他にあるか?あったら教えてくれ。
アッシュの涙
さておなじみアッシュが何巻まで涙するかを追っていくコーナー。5巻でもしっかり泣いておりました。ドースン博士(兄)から、BANANA FISHがベトナム戦争で使用された経緯を聞いて。
「"死を招く魚(バナナフィッシュ)"だと!?たいした冗談だな!!きさまらがそんなものを作ったおかげで兄きもスキップもみんな…!兄きは――兄さんはそのために…生き残っても10年――悪夢にうなされつづけて…」(BANANA FISH 5巻より)
兄の10年を思って涙し、それを拭うアッシュ。
想像したら、たった一人の(まあ親父は置いておいて)肉親を亡くしているわけだからね。アッシュはもしかしたら、グリフが死んだとき泣いたのは孤独を感じたからかなぁ。あんなふうになってしまってもグリフが生きているっていう事実がアッシュを孤独から遠ざけていたのかも。だから序盤のアッシュはつらい生い立ちでもまだ元気そうで、見ていられた気がするな……。でもそれを失って本当に独りぼっちだと感じたのかも。
アッシュが戦っていられた心の支えって、優しい兄だったのかも。それを理解はせずとも感じ取った英二が、守ってあげようと思ったのかな。パズルのピースが嵌まるように、グリフのところに英二が入り込んできて、アッシュはまた立ち上がれた。まだ先だけど、この後、アッシュが英二のことを「オニイチャン」と呼ぶようになる(まぁ、揶揄ってだけど)のは多分そういうことがと私は思ってる。
派手な銃撃戦でドンパチやるのに目がいきがちだけど、アッシュって繊細だよなあ。なのに、落ち込んでも、休む間もなく戦うんだもん。彼のおかれた環境がそうさせたんだろうけどさ。17巻でも言ってたけど。
「立ち直るのに半年かかっていたら おれはとっくに死んでる」(BANANA FISH 17巻より)
17巻なんてさあ……涙で目が霞んでほとんど読めてないから。
この顔で蜥蜴食うかや不如帰
5巻後半でタキシードでロマーニュ・コンティの年代を見事当てるアッシュを見た伊部さんの心の声。これも意味わからなくてググった。
「あの声で蜥蜴食らうか時鳥」…江戸時代の俳人・榎本基角(えのもときかく)の句。あの美しい声で鳴く時鳥が、ほかの鳥も食わない蜥蜴を食うなんて、とても信じられないことである。美人が見かけによらず気性が激しかったり、乱暴な言動をしたりする場合に用いる言葉。(引用元)
まさにアッシュのことを表現した句だなぁ。しかし、吉田先生の知識の幅恐ろしや……。俳句まで!?と思わずにはいられないですよねー。ここまでくると読者として無知が恥ずかしくなってくるレベル。
そして、この時のホトトギスの漢字表記が「不如帰」なのも不思議ではありませんか?多分もじっているのだろう句のほうは「時鳥」表記であるにもかかわらず。
不如帰表記は縁起が良くない表記のようです。
①不如帰は、『帰るに如しかず(かえりたい)』という意味で、中国の故事に由来があります。古代中国の蜀の望帝・杜宇が、家来の妻と不貞を働いたために退位させられます。望帝は不徳を恥じ国を逃れたものの、その後復位を望みますが叶わずに亡くなり、ホトトギスに姿を変えて『不如帰(かえりたい)』と泣いたというのがストーリーです。国に帰りたいけれど帰れなかった望帝の悲しく不幸な人生が、縁起がよくないとされる理由の一つです。盛唐以降の漢詩にはホトトギスが頻繁に登場し、望郷の念を募らせる鳥として詠まれています。(引用元)
②ホトトギスの鳴き声は、『テッペンカケタカ』や『トッキョキョカキョク』などと表現されることがあり、鋭くせわしないのが特徴です。大きな声で激しく鳴くことが多いため、ホトトギスの鳴き声を真似ると血を吐くといった迷信もありました。また、ホトトギスの口の中が真っ赤なことも、血を吐くと言われるようになった要因の一つです。夜間に強烈に鳴き続けることもあり、人々は尋常じゃない様子に恐ろしさを抱くこともあったようです。夜に鳴くことや、鳴き声がするものの姿が見えないことなどから、冥土に通う鳥ともいわれ、縁起が悪いとされる不如帰という表記が当てられたとされています。(引用元)
悲しく不幸な人生、冥土に通う鳥。
一方、「時鳥」下記の由来だそうです。
日本にホトトギスが渡来する時期は、田植えを開始する時期でもあります。ホトトギスは毎年同じ時期に渡来するため、『田植えの時期の到来を告げる鳥』という意味で時鳥と表記されたのです。(引用元)
一般的な表記である「時鳥」ではなく、「不如帰」としたのは、アッシュの人生を現わすような、縁起の悪い表記(漢字)だからかもねぇ。センスやばいな……。
シン・スウ・リンの登場
さぁてショーターを慕うシンの登場です。N・Yに戻ってきたショーターとアッシュをボスに戻すため(オーサーと戦うため)アッシュの元仲間であるアレックスたちと共同戦線を張ります。正直これは胸熱展開!!!
シンはアッシュとよく似ていて「インテリげんちゃん」(BANANA FISH 6巻・コングの台詞より)=Intelligentsia(知識階級)です。私はシンが好き!14歳でボスになるくらいの「インテリげんちゃん」ぷり、なのに子供だからこその底抜けに明るいところが!シンの生い立ちはあまり明らかになっていませんが、素直でまっすぐで優しい、そして責任感のあるリーダーで、ポジティブ。彼がいると画面が明るくなるっていうか。アッシュも強くてポジティブではあるんだけど、彼が強ければ強いほど……読者は同情してしまうから……。←なにこの反比例の法則って感じだよね。比例してポジティブな心境になりたいというのに。もうアッシュが笑ってたら読者泣くみたいになっていくからね、後半。
うーんこの辺もかなり語りたいな。今思い出したけど、シンとブランカも不思議な関係性だよね。ああああ語りつくせねぇえええ。
今回はこの辺で。と思ってたけど。
アッシュが自分を責める理由に関しての考察
思い付いた時に書いておかないと忘れそうだから。
アッシュが自分を卑下している(人殺しだから、罪の意識を感じている)っていうのを1~4巻の感想を通してずっと私は語ってきたけど、それはアッシュの精神力が強いからだと思ってた。でもそうじゃなくてもしかして、アッシュは自分自身が怖いのかもな……?と思った。
悲しいことや辛いこと、怒りを感じた時、彼は持ちえる卓越した身体能力や思考能力で相手を容易に殺すことができる。例えば6巻でショーターを殺す羽目にさせたドースン(弟)をマシンガンで連射するシーン。死んでるのに撃ち続ける。
どこかでストップをかけないと永遠に殺し続けることができるから。
復讐は何も生まないっていうけど、アッシュは絶対に復讐していく。オーサーにも、ゴルツィネにも、そのほか自分に牙をむいてきた敵すべてに対して。読者からすればスカッとするんだけどね。でもアッシュはむなしいんじゃないかな。彼にとって復讐は簡単にできるから。じゃあなんて、ずっと復讐してるんだろうって。復讐しても、復讐しても、新しい敵が現れるから。ずっと戦わなければならない。
復讐し続ける殺戮マシーンみたいになっていく自分が怖くて、自分を守るために、人間でいるために、自分を責めてるのかも、と思った。