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BANANA FISH 感想 1巻 ハガレンと令和の漫画について

備忘録なんでバリバリネタバレしてますよ。物語のあらすじ追いながら感想差し込んでいく感じで書きます。

※呪術廻戦・ONE PIECE・鋼の錬金術師のネタバレもしてるよ。

BANANA FISH 1巻 冒頭

1973年――(多分)ベトナム戦争。マックスがグリフィン(アッシュ兄)の銃乱射事件を目撃するところから始まる。このときグリフィンが使ってたヤクがBANANA FISHなわけだけど、マックスもグリフィンも冒頭からしばらくでてこないからただの伏線だけだね。

時は作中現在1985年3月4日にぶっ飛ぶ。あれ?まだアッシュ出てこねぇじゃん!先にジェンキンズ警部とチャーリーが登場。連続自殺事件の話。あとでわかるけど、BANANA FISHを使った実験により自殺しているから「動悸が分からない自殺事件」ってなわけで警察で話題になってるわけだ。いや~素晴らしい伏線だけどここでは何も説明されてないから読者は???ってなって物語に引き込まれるうまい描写。

そして、警部の会話のなかでは、日本の記者(伊部さんと英二)がくるのに案内役のロボが捕まっているというフラグまでたててる。読み返すとすげぇな。ちなみに洋画・洋ドラみたいに急に登場人物の自己紹介なく名前がポンポン出てくるので、テンポがいいし、海外風な雰囲気が作るの上手い。特にロボっていうのは愛称で実際は冒頭ベトナム戦争のマックス=ロボっていうのも、分かりづらいけど洋画アルアルな演出~。かっけぇ。

そんで場面移ってロウアー・イースト・サイドのアッシュの後姿ってこれマジ洋画ですか?って情報の詰め込み具合。アッシュが主人公なのかどうかすら読者は分かんねぇよ。少女漫画とは思えない恐ろしい。。。

ディノに話に行くアッシュを待ち受けてるのは白豚マービン。雑魚モブかと思いきや割と生き延びるし、アッシュの過去に絡む重要人物なのがムカつく。

ディノの屋敷を出たらショーターの登場。見た目モヒカンのいかにもなキャラデザ。番外編を除いた本編最終巻である19巻まで読んで、また1巻に戻ってくると感慨深くなるのはここじゃないかな。ショーター……ってなる。

ショーターは言わずもがなだけど、長い作品を読んでいるとだんだんキャラが成長したり心理変わっていくから1巻読むと新鮮に感じるんだよね。そうそうアッシュってはじめこうだったなぁとかさ。

アッシュが家に帰ったらスキップ登場シーン……。感慨深いその2……。スキッパーが死ぬあたりでこの漫画の末恐ろしさを読者は何となく察知すると思わない?あれ、これ、ヤバい漫画だぞって。ハガレンのヒューズの死くらいの引き込まれ具合だよね。

閑話休題、ハガレンと令和の少年ジャンプ漫画

ハガレンは私が学生の頃にすごい流行った漫画なんだけど、当時の少年漫画って王道が多くてダークファンタジー的なものは割と少数派だった。つまり、少年漫画はジャンプに代表される「勇気!友情!勝利!」であり主要な仲間は絶対に死なず、勧善懲悪ものってのが多かった気がする。年齢バレそうだけど、ワンピース、ナルト、ブリーチとかね。厳密にはエース死んでんじゃんとか揚げ足取らないでよね。ルフィの一味は死んでないよねって話だから。

その中でヒューズが死んだハガレンに私は衝撃を受け、ドはまりし、オタクへの一歩を確実に踏み出させた作品。

話は少しそれるけど、でも令和にもなると少年漫画で、しかもあの少年ジャンプの看板漫画ですら主要な仲間がバンバン死亡するようになってんだから驚きだ。

え?死なねーよ何言ってんだと思ったあなた。鬼滅の刃、チェンソーマン、呪術廻戦、進撃の巨人をご存じない?仕方ない。リンク貼っておくね。※ちなみに鬼滅の刃とか話題作挙げたけど原作未読です。アニメと煉獄さん映画は見たよ。チェンソーマンと呪術廻戦と進撃は読んでますハイスイマセン。

呪術廻戦においては七海が死ぬところはヒューズの死を思い出させてくれましたね。その後ガンガン死んでいくから、もはや感覚マヒしてきてるけど。

あと進撃の巨人の1話は個人的にハガレンの1話と似ている気がします。母親の衝撃的な死から始まる点。

でもね、ハガレンってヒューズの死の後は割と仲間は死なないのよ。焔の錬金術師、ロイ・マスタングは死ぬと思ってたんだけどね。死亡フラグ立ちまくってたしさぁ。ま、平成の漫画って事かな。

兎にも角にも私がいいたいのは、令和の漫画って本当に主要な仲間があっさり死ぬ。私は意味のある死は好きだけど物語の重要な起点とならないキャラクターの死はただ読者を惹きつけたいだけの作者の怠惰だと思っているから、平成と令和の中間くらいのいい塩梅の漫画描いてくれ~(笑)

脱線しまくったがこのBANANA FISHもガンガン死んでいきます。そりゃあもうお仲間だろうが敵だろうがバタバタと死んでいきます。でもね、誰の死にもちゃんと意味があるように描かれているのが非常にニクイところなんです。まさに、いい塩梅ってやつですね。でもこれ昭和の漫画でしょ?1巻に昭和60年5月より連載って書いてあるんだけど正気?昭和はまだインターネットが普及していない時代。何なら私も生まれておらず、多分海外旅行なんて一般人にそんなに普及していない時代だよね。それなのにこんなにアメリカの描写ができるの?すごすぎる作者の情報収集能力。こんな記事が紹介されてて現実とは乖離がある部分もあるようなんだけど、それでもすごい。

話は戻って1巻の感想なんだけどさ

って全然1巻に内容が留まっていないから話を戻して。スキッパーが様子を見ていた「彼」=グリフィン=アッシュの実兄ですね。うーん難しい人間関係をかなりあっさり描写(説明ほぼナシ)でテンポがいい。ま、こんくらいあっさりでも情報が読者に伝わっていくわけで、そこも作者の表現力のうまさでしょう。最初の最大の敵である「オーサー」の名前もしっかり登場。

場面変わってゴルツィネの屋敷ではドースン博士(弟)も登場。この辺オッサンばっかりだから初見すごい分かってなかった。分からなくても物語の大筋は読めていくので問題なし。

そして、裏切った仲間を処刑しないアッシュの場面に。オーサーも登場しますね。裏切られてもアッシュは仲間を殺さないんですよね。できれば人を殺したくないと思っている。それをオーサーの手下は甘いと言っているけど、違うと思うな。アッシュは下っ端の雑魚じゃ相手にならないわけ。私たちはいつも足元の蟻を一々全部つぶして歩くかってこと。つまり絶対的にアッシュのほうが力が上だって証拠だし、それを喜んでいないってことだと思う。力を誇示していないから。ここで、作者はアッシュは本当に強いっていうキャラクター設定とその性格を描きたいんじゃないかな。ちゃんとオーサーが補足しているしね。

ドクター・メレディスの登場。どぶさらいって始めどういう意味かわかんなかったわ。確か後で堕胎専門って説明はいると思うけど。

空港で伊部さんと英二の登場!意外と1巻中盤まで出てこないのね。その後刑務所でチャーリーがロボ(マックス)と会っている。ここでマックスが刑務所に入っていることなんてすぐに忘れる(本筋であるBANANA FISHの話になるから)んだけど、この伏線って9巻で回収されるんだよね。くそ真面目チャーリーが落ち込んでいる(オーサーとのごたごたでひん死のアッシュを警察が保護していたのに有無を言わせずFBIに連れていかれた)のを励ますため、自分が警察を辞めた経緯を話すマックス。「上司殴ったてやめた」っていうんだけどたぶんそれで刑務所入ってたんだと思う。この9巻越しの伏線回収は作品の細かい背景まで1巻の段階から練り込まれて描かれている証拠でしょう。←これ探すために今何巻だったかめちゃくちゃパラパラやってたんだけど、割と序盤だった(私の記憶では12~3巻くらいの印象だった。9巻までの内容濃すぎるだろ。話の展開早すぎる…)

英二とアッシュの年の差と初対面のシーン

読み進めていくと、英二は19歳、アッシュは17歳くらいと年齢表記がありますね。2歳差だったんだぁ。初対面の二人のシーン、結構忘れていたけど読み返すと感慨がある。

伊部さんはアッシュを見た時から迫力あるな~とビビり気味(大人なのに…)。しかし、アッシュが伊部に「アシスタントは子供か?」と言うのを聞いて「君より年上だ」と英二は言い返していますね。英二はアッシュをただの年下のアメリカのティーンエイジャーとしか見ていないんじゃないかな。だからビビってもいないし平然としている。それは世間知らずのガキだからともいえます。だから何も状況や空気を読まず「ちょっと(アッシュの銃を)持たせてくれないかな」なんて言った英二にアッシュは「ガキだな あんた」と罵っている。

のちにアッシュは「いつも最悪なケースを考えていないと気が済まない…」と英二に吐露するシーンがあります。

いつも先回りして…考えて――どんなケースでも対処できるようにしておかないと…落ち着かないんだ それが身に着いちまって だからいつも…最悪のことを… (BANANA FISH 14巻より)

そんなアッシュが、(なんならスキッパーなんかよりも)何も考えていない英二に銃を渡したのはなんだか納得いきます。だって赤ちゃんに銃渡すみたいなもんだ。多分アッシュはいつも考えているから、最悪のケース、英二が例えば演技で無知や無力を演じておりアッシュの武器を狙ったんだとしても、その対処として、素手でやり込める自信があったのでしょう。

アッシュの英二に対する心理描写はありません。でもまっすぐにアッシュを見るまるで赤ちゃんのように純粋な英二の瞳、その真意を探るように見つめ返すアッシュの様子から、何となく想像はできます。二人のこの会話からも想像できますね。

英二「人を…殺したことある?」アッシュ「…あるよ」「へええ…やっぱり…そうか」「…ガキだな あんた」(BANANA FISH 1巻より)

アッシュは英二が本物のガキでバカだと、でもすこし羨ましいと思ったんじゃないかな。最悪のケースを考えていなくても19年も健康に生きてきた赤ん坊のような英二のことを。完璧で周りすべての人から崇拝される天才であるアッシュが、嫉妬するなんてすごいね、英二。

そして1巻最大の山場であるクライマックスへ

オーサーの襲撃でスキッパーとともに逃げる英二。それを助けに追いかけるアッシュ。そして一巻のクライマックスです。忘れるはずもない。英二の”カミカゼ”ですね。

棒高跳びで塀を飛び越えて逃げるという英二にアッシュは馬鹿かとあきれます。しかし英二は

どーせ死ぬんならなんだってやってやらあ!!(BANANA FISH 1巻より)

と言って本当に乗り越えちゃう。この時のアッシュの表情が印象的ですね。吹き出しなんてなくてアッシュは台詞もないんです。

漫画家って本当にすごいよね。絵だけで心理描写しちゃうんだからさ。きっと17歳までに色々経験してきて、世間を知り尽くしているアッシュでも、この時初めて本物の棒高跳び見たんじゃないのかなって私思うんだ。そうであってほしいな。伊部さんが心奪われた英二の棒高跳びは、17歳の天才の胸にもまったく同じように響いたってね。まるでアートみたいに。

BANANA FISHの最大の見どころ

BANANA FISHの最大の見どころはアッシュと英二の友情であるのは間違いない。アッシュと英二が激動の19巻の間でどのように友情を育んだかっていうところの描写がとても秀逸。アッシュは捕まっていたり、とにかくディノをやりこめるため動きまくるから、非戦闘員である英二(つまりお荷物)と一緒に行動するシーンって案外少ない。なのに説明的な描写は一切なく、例えば1巻の初対面の二人のシーンやクライマックスの棒高跳びのシーンで、少しずつアッシュの心の変化を描写しているように思うんだけど、どうかな?

英二は、バカそうだな~って第一印象から、棒高跳びの”カミカゼ”によって、アッシュの心をつかんだところで1巻が終わるってわけ。

そして、物語としては、ディノと連続殺人事件がつながり、1巻が終わります。

情報量が多すぎて、細かく書いていたら感想が永遠に終わらない。後半感想がだんだん雑になって申し訳ないけど、物語の大筋はBANANA FISHの謎にあり(物語の面白さにつながるエンタメ部分)、それを通してアッシュと英二の友情を描写している。(作者の伝えたいメッセージ部分)

そんな不朽の名作、BANANA FISH。言うまでもなく、もっと評価されるべきだ。

次回は2巻感想。お楽しみに。

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