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ゲーリー・スナイダーを読む 1

 ゲーリー・スナイダーは、1930年にアメリカに生まれた91歳の現役の詩人である。スナイダーは詩を通じて人間と自然の新しい関係性を提示している。
その関係とはバイオリージョナリズム(生態地域主義)という考え方だ。
人類はこれまで、自然と人間を分離して考えてきた、スナイダー自身はアメリカ先住民の研究によって、西洋文化にはない、自然と人間の連続性を見いて出している。そして、スナイダーは西洋文明を自己破壊的だと批判するとともに、キリスト教が持つ破壊的な政治力は魂を救うと称して森の生命を招くと批判している。しかしスナイダー自身文化的背景は西洋人でありジレンマは感じていたようだ。 アメリカ先住民にはなれないスナイダーは、自然や土地と結びつけてくれるものとして仏教に出会い、日本で禅を学ぶこととなる。
その後はシエラネバダ山麓に移り住み、バイオリージョナリズムを実践している。しかし、このバイオリージョナリズム(生態地域主義)とはどういうことだろうか。寺田寅彦の天災と国防に次の一節がある。「文明が進むに従って人間は次第に自然を征服しようとする野心を生じた。そうして、重力に逆らい、風圧水力に抗するようないろいろの造営物を作った。そうしてあっぱれ自然の暴威を封じこ込めたつもりになっていると、自然があばれ出して、人命を危うくし財産を滅ぼす。」これが現在の状況であり、西洋文明の結果ではなかろうか。また、次の一節には「昔の人間は過去の経験を大切に保存し蓄積してその教えにたよることがはなはだ忠実であった。過去の地震や風害に堪えたような場所のみ集落を保存し、時の試練に堪えたような建築様式のみを墨守してきた。」これがバイオリージョナリズムに近いのではないだろうか。スナイダーがバイオリージョナリズムを論ずる際のキーとなるものに「場所」がある。場所に生き、バイオリージョナリストとして生きて生きることは、場所に敬意を表し前史時代と歴史を重視し、先住民と彼らの祖先に関する彼らの知識に敬意を払い長期の持続可能性に関心をもつ思想とある。
眺めがよいからと山を改良しそこに住む動物や植物を追い出し宅地開発、緑に囲まれた展望の良い場所に住むことはバイオリージョナリズムとは言えないだろう。
自然に逆らうことは、いずれ命と財産が脅かされる結果となるかもしれない。
私たちは今、地上性を持つ(terrestrial)が必要だ、つまり、自然環境を保護するのではなく、自然と人間を分離して考えず、自然環境にどう依存して生きていくかを思考する、その時にバイオリージョナリズムという思想はキーとなるだろう。

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