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terrestrial②
ブルーノ•ラトゥール(フランスの人類学者)は著書「地球に降り立つ」のなかで、グローバリゼーションが地球環境にもたらした影響により地球が反発していることをうけ、ローカルでもグローバルでもない第三のアトラクター、「テレストリアル」に向かうことを提唱した。しかし、そのベクトルの方向は定まってはいない。
今後、私たちはどうすれば良いのか?
昔に帰り生活方法を学んでいくのか?
往古の知恵を見直していくべきだろうか?
それとも近代化以前の文化を学んでいくべきだろうか?
いずれもありであろう。
しかし、地球は80億になる人類活動に反発してくる。人類はこの地球からの反発に対処しなければならないし、これまでにない事態が訪れるであろう。
第三のアトラクター テレストリアルの方向性が定まらずいまだに地球に降り立ってはいない今、エドガー•アラン•ポーの「メールストロームの旋渦」に出てくる、嵐のなか沈みゆく船のなかで唯一生き残った男の行動が参考にならないだろうか?
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男は乗船する船が嵐に巻き込まれ沈みゆくという危機的状況下で、冷徹に現状を観察し生還するための手段を発見、行動に移すことで生き延びることができた。
一緒に乗った兄は恐怖により冷静さを失い、船と共に沈んでいった。
これを単なる物語として考えてはならない、様々な事故や災害から身を守るためには「正しく怖がる」ことが必要だからだ。何も起きていない時、残念ながら人の脳はバイアスに支配されてリスクを過小評価してしまう。一方で恐怖心でいっぱいとなれば冷静な判断力は失われる。
ローカルでもなくグローバルでもない、第三のアトラクター「テレストリアル」のベクトルを見つけるためにも、現状起きている地球の反発を冷徹に観察し続けることが必要だろう。冷徹な観察がひらめきを生むかもしれないからだ。
「terrestrial」の撮影は、その冷徹な観察の一つであり今後も継続していく。
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Yutaka Hashimura PHOTOGRAPHY
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