オットーという男
マーク・フォスター監督、トム・ハンクス主演「オットーという男」を見た。2015年スウェーデン映画のリメイク作品。愛する妻に先立たれ仕事も失った年配の男が死を決意するものの、新たな隣人と触れ合う中で、生きることを選択していく物語。
オットーは気難しい男で、ルールやマナーを守らない人に対しては手厳しい。近隣でも職場でもしかめっ面で、気を許す人はいるようには見えない。しかし、昔からそうだったわけではないことが回想場面から窺える。若い頃は苦労して大学を出て、偶然出会った恋人と幸せな結婚をし、近所にも友達と呼べる仲間がいた。
様々なきっかけがオットーを変えていく。妻の事故による流産と下半身麻痺、友人との仲違い、職場での孤立と退職、そして何よりも愛する妻の死。生きる意味を見失い、遂には死を決意するが実行しようとする度に失敗してしまう。
そんな中、近所に引っ越してきたばかりのメキシコ系家族の奥さんが、オットーにあれこれと頼み事を持ち込んでくる。梯子を貸し、救急車で運ばれた夫の病院へ車で送り、留守に子供を預かり、車の運転を教える。そんな風にその家族と関わるうちに、何とはなくオットーの心は開かれていく。そして再び近隣の人たちと関わりを持ち始め、生きようと決意をしてゆく。
孤独が人を変え、そして人との関わりがまた人を変える。人間は人との関わりの中でこそ生きる意味を持つことができるのだということを、実感させられる映画だ。相変わらずトム・ハンクスの映画は心が温まる。