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『教会建築家・鉄川与助の生涯 同居の孫が見た素顔』

鉄川ひろ子著『教会建築家・鉄川与助の生涯 同居の孫が見た素顔』(海鳥社)を読んだ。鉄川与助(1879-1976)は1900年代前半に長崎県を中心に教会建築に携わった建築家である。この本は与助と同居し生活を共にした孫である著者の回想録である。

鉄川与助は15歳で父のもとでで大工の修行を始める。物覚えがよく、17歳で日本家屋は建てられるようになったという。1901年、22歳で旧曽根教会の建築を手伝ったことが彼の転機となる。教会建築の手ほどきを受けることになるフランスのペルー神父との出会いである。ペルー神父に師事し、リブヴォールトの工法を身につける。その構造計算のため、数学や力学の知識を神父から教えられたという。

また、いくつかの教会を建てた後、与助は32歳の時にフランス人のド・ロ神父との出会う。一緒に資材の選別、教会の設計、建築をする中で建築を正式に学んだド・ロ神父から多くを学んだという。

与助の教会建築は「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の中に含まれる3つの教会(旧野首教会、江上天主堂、頭ヶ島教会)や国の重要文化財に指定されている教会(青砂ヶ浦天主堂、今村天主堂、田平天主堂)など、現存しているものも多い。この本の中にはそういった教会の写真が数多く収められている。

著者から見た祖父鉄川与助の人となりやエピソード、そして明治から戦中戦後と昭和にかけての教会建築に携わってきた歴史を語っている。わかりやすい口調で語られる話は、飲み込みやすく、話に沿って現れる美しい写真や資料は目を楽しませてくれる。また、著者の趣味である英会話を活かして、日英対訳となっているのも、また一興だ。

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