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万城目学 直木賞『八月の御所グラウンド』

ついに万城目学が直木賞を受賞した。『鹿男あをによし』で初めてノミネートされてから16年半での受賞だ。今回で候補にあがるのが6回目。これまで、賞にもれる度に、残念に思ってきた。実は、私はデビュー作『鴨川ホルモー』以来ほぼ全作品を読み、映画やドラマも全て見てきた筋金入りの「万城目学フリーク」だ。ということで、直木賞受賞の報道を見て、自分のことのように心底嬉しくなった。「やった!」と拳を突き上げたほどだ。

今回の作品「八月の御所グラウンド」も書店に出てすぐに買い求めて読んだ。この本の感想は以前、このnoteに「『ホルモー六景』を彷彿とさせる良い作品」との旨、投稿している。原点回帰なのか、「京都」+「青春」と「万城目ワールド」のファンタジーが程よく融合している。本人の受賞の弁では更には「よこ」(同時代)の関係だけではなく、「たて」の関係も組み込むことができ、手応えがあったとのこと。

作家によっては、「この人は当然のことながら直木賞をとっているだろう」と思える人が実はとっていないことがある。実力がありながらも賞に縁のない人も残念ながらいるのは事実だ。万城目学もそういった作家の1人になってしまうのか、と本人を差し置いて半ば諦めていただけに、この度の受賞は一入だった。

ただ、今回受賞するならば、受賞に相応しい作品は以前にもあっただろうと思ってしまう。「鹿男」は漱石の『坊ちゃん』へのオマージュでとても出来の良い作品だし、「とっぴんぱらりの風太郎」は歴史ものの堂々たる力作。『悟浄出立』も良い視点をついたなかなか考えさせられる作品だ。とはいえ、そういった過去の賞に値する作品の積み重ねが今回の賞に繋がったように思う。いずれにせよ、万城目ファンとしては今回の受賞を素直に祝福したい。

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