サンチャゴへの道 巡礼振り返り(5) サンチャゴ到着〜何処で何をするか【2023年夏】
サンチャゴ巡礼を無事終えて、準備段階を含めて振り返りたいと思います。今回はサンチャゴ到着後の動きを確認します。
サンチャゴ到着
歓喜の丘を過ぎ、国道の上を通ってサンチャゴ・デ・コンポステラの町に入る。新市街から道幅の狭い旧市街へと進む。土産物屋や食料品店、バールの並ぶ猥雑な通りをしばらく歩く。そして階段を下ってトンネルを抜け、左を見上げると大聖堂が聳えている。そこがオブラドイロ広場、長かった巡礼のゴールの瞬間だ。
喜びを噛み締めたあと、サンチャゴでやる事はいくつかあるのだけれど、着いたばかりで右も左も分からずに戸惑うことになった。サンチャゴ滞在が短い人は限られた時間で効率よく動く必要がある。予め確認をしておくことをお勧めする。
オブラドイロ広場で記念撮影
大聖堂のファサードを背に記念撮影をする。朝早くには個人の巡礼が中心で人数も少なく、喜び方も控えめだ。それでもお互いに健闘を讃えあい、記念写真を撮って喜びを分かち合っている。時間が経つにつれて巡礼の数も増え、団体が大騒ぎをして喜んでいる場面を見かけるようになる。フィニステレ、ムシア訪問後にサンチャゴに戻った日にはグループの巡礼の男性が広場で跪いて女性に求婚するところを見た。周囲は拍手喝采だった。
巡礼事務所でコンポステラ取得
巡礼事務所に出向いてコンポステラ(巡礼証明書)を交付してもらう。巡礼事務所は大聖堂の正面に向かって左に建っているパラドール(国営ホテル)前の坂道を下り、最初の角を右に曲がった先にある。午前9時に開くが、それ以前に並んでいる巡礼もいる。
コンポステラの交付手続きは、
①クレデンシャルの提示
②自分の巡礼についての情報登録済みのバーコード(又は2次元コード)の提示
の2つが必要。②については巡礼事務所のWebページにアクセスし、個人情報を始め、巡礼方法、ルート、出発地点、目的などを入力する。入力がすめば、確認メールと共に窓口で提示するバーコード(2次元コード)が送られてくる。
巡礼事務所の入り口近くにもWebページを2次元コードで案内しているが事前にいつでも入力可能なので、時間がある時に巡礼事務所のページにアクセスし、ゆっくりと準備しておくのが良い。当日直前に登録しようとするといきなりスペイン語のページが出てきて焦ることになる。
事務所の入り口近くに受付順番の用紙を発券する機械が置いてあり、係の人が渡してくれる。さらに中に入っていくと、カウンターがあり、受付番号がモニターに表示されているので、自分の番号が表示されたら、カウンターへ行って、①と②を提示する。「いつ出発しましたか?」「距離証明書は要りますか?」など簡単な質問をされることがある。コンポステラの発行は無料、距離証明書は3ユーロ。雰囲気は似ているが、コンポステラは縦型なのに対し、距離証明書は横型で少し大きめ。また、証明書を入れる筒が2ユーロで売っている。
待ち時間が長い場合は、適当に時間を潰せば良いが、自分の順番までに戻っていないと番号カードの取り直しとなるので、気をつける。また、当日の到着時間が遅くなったり、事務所の開いている時間に行けなかったりした場合に備えて、サンチャゴ滞在は余裕をみておいた方が良いかもしれない。
フィニステレやムシアまで巡礼を続けるのなら、ついでに巡礼事務所のインフォメーションでクレデンシャル(無料)をもらっておこう。フィニステレ、ムシア専用のクレデンシャルがあり、これまでと同様にスタンプを押してそれぞれの観光案内所に持って行くと、巡礼証明書を発行してくれる。
観光案内所でDual Pilgrimの証明書取得
熊野古道を歩いた人ならDual Pilgrimの証明書を是非とも欲しいと思うだろう。これはサンチャゴの観光案内所へ出向き、熊野古道の巡礼手帳とコンポステラ(又はクレデンシャル)を提示する。立派な用紙の証明書とピンバッジをもらえる。熊野古道とサンチャゴ巡礼路のポスターの前で写真を撮ってもらい、HPに掲載してもらえる。勿論、写真やHP掲載は本人の希望次第。これは和歌山県田辺市とサンチャゴデコンポステラ市が提携して一種のプロモーションとして行なっている事業なので、巡礼事務所ではなく観光案内所での手続きとなる。
観光案内所では市内マップなどのパンフレットの配布や宿泊施設の案内なども行なっている。私は到着した日にまだ宿が取れていなかったので、観光案内所でホテルを紹介してもらった。自分で探せば時間も手間もかかるところ、すぐに手頃な値段のホテルに電話をかけて予約を取ってもらい、大いに助かった。
荷物預け
午前中の早い時間に到着すれば、コンポステラの発行後に大聖堂を見学する時間があるだろう。大聖堂に入る際はバックパックのような大きな荷物は持ち込めない。宿へのチェックイン前に見学するなら、荷物を郵便局に預けることが可能。郵便局は大聖堂正面に沿ってそのままずっと右側へ通りを真っ直ぐに行った先にある。パスポートの提示を求められ、料金を払い、X線検査を経て受け取りの用紙をもらう。郵便局が閉まる前に引き取るのを忘れないようにする。
聖ヤコブを抱擁
大聖堂へのアクセスは2つあり、2つとも大聖堂正面のオブラドイロ広場からは見えない。1つは大聖堂の正面の左手、最初に巡礼がオブラドイロ広場に入ってくるトンネルの向こうにある入り口。ここから大聖堂に入れば、最初から最後まで列に並んで進むことになる。まずは主祭壇の下にある聖ヤコブの地下墓所を通って祭壇の向こう側に通り抜ける。そして今度は主祭壇の後ろに上がって、聖ヤコブの像を後ろから抱擁し、巡礼が無事終わったことを感謝する。その後はそのまま大聖堂の外に出るので、聖堂内に戻ることはできない。
巡礼者ミサに参加
もう1つの入り口は大聖堂正面から右手に周り、階段を登ったところにある。こちらから入ると大聖堂の見学、ミサに出席はできるが、聖ヤコブの墓所や像の抱擁はできない。ミサに参加するのなら、こちらの右手の入り口から入ることになる。間違えないようにしたい。
ハイシーズンには2つの入口とも長い行列となる。私は正午のミサに参加しようと15分前に並んだが、入場する前にミサが始まってしまったため入場が停止となり参加できなかった。今度は午後7時のミサに参加するため、1時間以上前に大聖堂の中に入り、早めに椅子に座ってミサが始まるのを待った。ミサに参加しようと思えば、早めに聖堂内に入っておくことだ。
ボタフメイロ
ミサの最後に大きな香炉に香を焚き、ロープを引っ張って大きく左右に振るボタフメイロが行われることがある。大聖堂で3度ミサに参加して、2度見ることができた。ボタフメイロは決まった祝祭日に行われる。それ以外では、ボタフメイロ用に100ユーロ(約16000円)の寄付があった場合に行われる。おそらく2回とも巡礼の団体が寄付したのだと思う。10人の団体なら1人10ユーロの負担ですみハードルが低い。いずれにせよ、寄付をしてくださった方に感謝だ。
栄光の門を見学
折角カミーノを歩いたからには栄光の門を見ておきたいと思う人も多いだろう。栄光の門は大聖堂のファサードの内側にあり、外からは見えない。また、聖堂内に入っても、中からもアクセスできない。2023年夏現在、栄光の門を見るにはガイド付きのツアーに参加するしかなく、自由に見学ができない。ツアーの申し込みは大聖堂のWebページから行う。栄光の門を見学できる複数の種類のツアーがあるが、予約はすぐに埋まってしまうので、早めに予約をする必要がある。栄光の門だけを見るツアーが無料で提供されているが、これもすぐに埋まってしまう。博物館入口で当日券を買うことも可能なようだが、あらかじめネットで予約する方が安心だ。
私の場合は2日前にネットでツアーを申し込もうとしたところ、ほとんどが売り切れで、唯一「ナイトビジット」が残っていたので売り切れないうちにと慌てて購入した。1人25ユーロで、QRコードのついた電子チケットが送られてくる。このチケットで「ナイトビジット」だけでなく、当日、翌日の好きな時間に博物館に入ることができる。「ナイトビジット」は午後10時半に大聖堂右手入り口に集合して堂内に入り、栄光の門も含め、通常は入れない所に入れてもらえる90分のツアー。終了すると深夜12時となる。すぐ隣のパラドールに泊まっていたからこそ、躊躇なく申し込めたと思う。
博物館に入館
大聖堂博物館も見ておくといいと思う。博物館の入り口も2つあり、大聖堂正面中央を挟んで右と左にある。オブラドイロ広場から見えるところにあるのが博物館入口だ。右の入り口がメインの展示。見どころを予め調べておき、ポイントを絞ってみるのが楽だ。個人的にはテラスからの風景と回廊、ボタフメイロの香炉が良かった。左の入り口からは別の展示が見られる。
大聖堂博物館以外に「巡礼博物館」というのも大聖堂近くにある。巡礼の歴史について理解を深めることができるような展示になっている。巡礼を歩いた人は興味が持てるだろうと思う。日本人芸術家の膨大な巡礼の絵巻ノートもある。現在、なんと入館は無料だ。
大聖堂を撮影
オブラドイロ広場からは大聖堂のファサードがバッチリ撮影ができるが、大聖堂全体をうまく収めようとすると難しい。ということで、一度大聖堂から離れてアラメダ公園へ向かう。道路を渡ったところにある門柱から奥に向かって散策すれば、右手に大聖堂の遠景が見える。大聖堂の撮影スポットとしては素晴らしいので、是非とも訪れたい。
タルト・デ・サンチャゴを購入
サンチャゴの旧市街にはタルト・デ・サンチャゴというお菓子を売っているお店を目にする。お店の前で試食をさせているところもある。大きさにもよるが1つ13〜15ユーロくらいでいくつか買うと値引きがあったりもする。アーモンドを使った素朴な味のするお菓子だ。
サンパイオ修道院のシスター達が作っているタルトが人気だ。少しわかりにくい路地で販売しており、鉄格子の窓の横の呼び鈴を押すと、シスターが出てくる。欲しい品物を言うと、持ってきて鉄格子の下から渡してくれる。ただし、販売時間は限られていて、すぐに売り切れるので、時間を見計らって買いに行く必要がある。私は3度目の挑戦で1つ(13ユーロ)だけ手に入れることができた。日持ちがするため、日本に持ち帰ることができる。
フィニステレ(ムシア)へ出発
サンチャゴからフィニステレ(ムシア)へ向かう人は出発地点が大聖堂となる。パラドールの前から坂を降りていくのがフィニステレ(ムシア)への道だ。事前に巡礼事務所でフィニステレ(ムシア)巡礼用のクレデンシャルをもらっておくのを忘れないようにしたい。以前は道標があまりなかったようだが、今は結構充実していて、道に迷うことはないように思う。また、サンチャゴ巡礼路同様、「Buen Camino」などのアプリにも地図情報、アルベルゲ情報があり、役に立つ。
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