『花咲舞が黙ってない』
池井戸潤の『花咲舞が黙ってない』を読んだ。現在テレビで放送中の同名ドラマの原作だ。ドラマの方は2014年に『不祥事』を原作に、杏と上川隆也の主演で放送されているが、今回の原作はタイトルをドラマに合わせてきている。現在放送中のドラマの主演は花咲舞を今田美桜、上司の相馬を山本耕史と新たなキャストとなっている。前作ドラマで花咲舞の父親を演じた大杉漣さんが亡くなったため、上川隆也が叔父役として出演するというオマケもある。
ドラマの1回分に相当するエピソード7話からなる。一見、1話完結の体裁のようではあるが、読み通してみると銀行の合併、組織の闇、という大きな流れがある。臨店班の花咲と相馬には見えない合併や行内政治の裏側の方は今回は特命担当調査役の昇仙峡玲子を通じて描いていく。昇仙峡は花咲と対立を重ねながらも、その真っすぐな気持ちをどうにも放ってはおけない。
途中相馬が左遷され臨店班コンビは解消されるが、最後には2人が力を合わせて大きな銀行の闇を明らかにする。銀行にとって都合の悪い報告書を握りつぶされてきた花咲舞は、最後の望みをある人物に託す...。
臨店により不正を暴く勧善懲悪ストーリーなのだが、役職もない若手の行員である花咲舞は水戸黄門のような権力もない。不正が公に正されず、うやむやに終わることもあり、臨店班の士気も下がる。そんな中、二人の放った逆転ホームランには爽快感を感じた。
面白いことに池井戸潤の別の作品『半沢直樹』の主人公が合併先の産業中央銀行の行員として登場する。「倍返しだ!」でお馴染みのドラマ『半沢直樹』では主人公半沢直樹は堺雅人が演じていたが、ドラマ『花咲舞が黙ってない』では劇団ひとりが演じている。もちろん今回は「倍返し」も「土下座」もない。
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