発破を撃つ
「今から、はっぱをうつぞ」
突然、サイレンが鳴る中、横にいた上司がそう言う。
はっぱをうつとは?
葉っぱを撃つということなのだろうか。
ポケモンの技でいう、ハッパカッターのようなものか。いや、それは葉っぱを飛ばしているから違うな。そもそも、なぜ葉っぱを撃たなければいけないのかと、よくわからないことを考えていた。
自動車整備の仕事をしていると、出張修理で鉱山へ行くこともある。過酷な環境で使用している車は、部品への負担や劣化が激しい。
これまでに、何度も鉱山には足を運んでいるが、サイレンを聞くのは今回が初めだった。
そのとき12時頃だったのもあり、そのサイレンを昼を知らせるためのものだと、勘違いしていた。
そんな間違いの中、横にいた上司が「今から、はっぱをうつぞ」と言うのだ。
これもまた、前文の方で書いた通りの思い違いと疑問を抱いていた。それでも「そうなんですね」と分かっている風を装ってしまう癖が自然と出る。
素直に聞けば良いものを、大概こういう時は、言った後に後悔する。
そして、突然の爆発音と共に、脈拍が少し強まったかのような振動が、足裏に遅れてやってくる(地震とは、違った揺れ)
「あっ...そういうことか」と数キロ先の微かに見える煙を目にして、発破のことねと理解した。
葉っぱ撃つなわけがないだろうと、バカな自分に笑ってしまった。
重機などでは、硬すぎて採掘できない岩壁を爆破させて採取する。その現場に今回偶然、居合わせたわけだ。
こんな簡単なことで、言葉は難しいなと感じてしまう僕は、言葉に対する気持ちが(勉強が)まだまだ足りない。
最後に、発破を撃つではなくて、発破をかけるではないのだろうか。
まあ、意味が理解できれば問題ないだろうと思うのは、上司を否定しないためなのかも知れないしれない。