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令和2年司法試験・民法・設問3・解答に挑戦

令和2年司法試験・民法・設問3・解答に挑戦
第3 設問3
1、Bの請求は、EB間の契約③に基づく所有権移転登記請求権である
(560条)。しかし、Eは死亡した。このため、妻のFが相続(890条)したが、そのFは相続放棄(938条)をした。したがって、残る相続人でEの姉、Gが相続(889条1項2号)することになった。
2、しかし、EはそもそもFに丁土地を売却することにつき代理権を授与していない。このためFによる契約③締結が無権代理としてEに効果帰属しなければ、最終的にEの地位を相続したGは、Bへの所有権移転義務を負わない。
3、761条の適用について
ア、確かにEはFに丁土地の売却について代理権を授与していない。しかし、761条が適用されないか。同条は、「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う、旨を規定している。夫婦の日常の家事の範囲は、個々の夫婦によって異なるから、その社会的地位、職業、資産、収入などの点を考慮要素にして個別判断するべきである。また、取引の相手方保護の観点から、その取引行為の客観的事情についても外形的に判断するべきでもある。
イ、Fは契約③を締結した目的はEの治療費を捻出することだった。これは日常家事の範囲であると評価できる。しかし、治療費の捻出などは借金などの方法もあり、Eの大切な資産である丁土地全部を売却することは多額の取引であり、日常家事の範囲といえない。また、この売却代金の一部をGの事業資金に充てることも含まれていることは、日常家事の範囲を逸脱するものである。以上の事実から、FがEの妻とはいえ、Eに無断でE所有丁土地を2000万円でBに売却することは、Eに761条は適用されない。
4、110条の趣旨類推適用
ア、しかし、契約③の取引先のBが、この契約をE・F夫婦の日常家事の範囲内の法律行為だと、善意かつ無過失で信じた場合はどうか。すなわち、日常家事の範囲内と信ずべき正当な理由があった場合はどうか。そのような正当な理由があれば、権限外の表見代理を認める110条を適用できないか。夫婦間の財産はそれぞれ独立性があるから、110条を直接適用できないが、761条の趣旨を761条に類推適用できると考える。
イ、本問では、Eが入院加療中であることから、妻のFが取引するのが通常とBは考えた。しかし、契約③は、2000万円もする高額な不動産取引であり、一般常識からしても「日常家事」の範囲とは考えにくい。そうであれば、Bは、契約③についてEが了承しているのかどうか、を問い合わせることができたはずである。ここに、Bの過失があり、「正当な理由」(110)があるとはいえないことから、110条の趣旨を類推適用できない。したがって、契約③の効果はEに効果帰属し得ない。
5、Eの立場を単独で相続したGの追認拒絶について
 GはEの立場を単独で相続したことから、Eの立場から、契約③を追認拒絶ができるとも思える。FがBと交わした契約③の効果は、上記3、4からEに効果帰属していないことから、Eの立場としては追認拒絶できるからである。
 しかし、Gは、FがBと契約③を交わした際、どう行動したのか。まず、契約③締結に同席している上、丁土地の売却代金のうち200万円をG自身の事業資金に使用することをFに約束させている。すなわち、Gは契約③を締結する方向で行動していたのに、相続の時点において追認拒絶することは、自己矛盾行為であり、Bに対する信義則に違反する。したがって、Gは追認拒絶することは許されず、Bの請求は認められる。
以上

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