刑法条文・理論攻略法14

刑法条文・理論攻略法14
【詐欺の各判例1】
≪第三者を搭乗させる目的で飛行機の搭乗券の交付請求事件≫
【文献種別】 決定/最高裁判所第一小法廷(上告審)
【裁判年月日】 平成22年 7月29日
【事件番号】 平成20年(あ)第720号
【事件名】 詐欺被告事件
【審級関係】 第一審 25463913
大阪地方裁判所岸和田支部 平成19年(わ)第348号
平成19年11月20日 判決
控訴審 25463916
大阪高等裁判所 平成19年(う)第1776号
平成20年 3月18日 判決
【事案の概要】 被告人が、Bらと共謀のうえ、カナダへの不法入国を企図している中国人のため、あたかもBが搭乗するかのように装い、関西空港でBに対する航空券及び日本国旅券を呈示して、搭乗券の交付を請求し、係員をしてその旨誤信させ、Bに対する搭乗券の交付を受けるなどした事案の上告審において、搭乗券の交付を請求する者自身が航空機に搭乗するかどうかは、本件係員らにおいてその交付の判断の基礎となる重要な事項であるというべきであるから、自己に対する搭乗券を他の者に渡してその者を搭乗させる意図であるのにこれを秘して、本件係員らに対してその搭乗券を請求する行為は、詐欺罪にいう人を欺く行為にほかならないとした。
【判示事項】 〔最高裁判所刑事判例集〕
他の者を搭乗させる意図を秘し,航空会社の搭乗業務を担当する係員に外国行きの自己に対する搭乗券の交付を請求してその交付を受けた行為が,詐欺罪に当たるとされた事例
〔最高裁判所刑事判例集〕
外国行きの自己に対する搭乗券を他の者に渡してその者を搭乗させる意図であるのにこれを秘し,航空会社の搭乗業務を担当する係員に対し乗客として自己の氏名が記載された航空券を呈示して搭乗券の交付を請求し,その交付を受けた行為は,搭乗券の交付を請求する者が航空券記載の乗客本人であることについて厳重な確認が行われていたなどの本件事実関係の下では,刑法246条1項の詐欺罪に当たる。
→①航空券は財物にあたる。
→②航空券は、飛行機に搭乗する本人に交付させることになっているが、第三者を本人と偽ることは、財物の交付について判断の基礎となる重要な事実を偽る行為
≪挙動による欺罔行為≫
【文献種別】 決定/最高裁判所第二小法廷(上告審)
【裁判年月日】 昭和43年 6月 6日
【事件番号】 昭和42年(あ)第1939号
【事件名】 有価証券偽造同行使詐欺被告事件
【審級関係】 第一審 24004779
大阪地方裁判所 
昭和40年 2月23日 判決
控訴審 24004780
大阪高等裁判所 
昭和42年 6月26日 判決
【判示事項】 〔最高裁判所刑事判例集〕
商品買受の注文と作為による欺罔行為
【要旨】 〔最高裁判所刑事判例集〕
代金を支払える見込もその意思もないのに商品買受の注文をしたときは、その注文の行為自体を作為による欺罔行為と解すべきであつて、不作為による欺罔行為に必要な告知義務の有無を論ずる必要はない。
→代金を支払う意思も能力がないにもかかわらず、商品の注文をすることは、
財物の交付につき判断の基礎となる重要な事実を偽った行為
≪財物の交付に向けて、相手にその準備行為をさせる行為≫
→おれおれ詐欺の発展形態の犯罪=最近、増加している犯罪
【文献種別】 判決/最高裁判所第一小法廷(上告審)
【裁判年月日】 平成30年 3月22日
【事件番号】 平成29年(あ)第322号
【事件名】 詐欺未遂被告事件
【審級関係】 第一審 25561165
長野地方裁判所 平成28年(わ)第107号
平成28年 8月 9日 判決
控訴審 25560850
東京高等裁判所 平成28年(う)第1622号
平成29年 2月 2日 判決
【事件の概要】
 被告人は,長野県警察の警察官になりすまし,長野市内に済む甲(当時69歳)から現金をだまし取ろうと考え,氏名不詳者らと共謀の上,前記甲が,平成28年6月,同人の甥になりすました者に,仕事の関係で現金を至急必要としている旨うそを言われて,その旨誤信し,同人の系列社員になりすました者に,現金100万円を交付したことに乗じ,あらかじめ前記甲に預金口座から現金を払い戻させた上で,同人から同現金の交付を受ける意図のもと,同月9日午前11時20分頃から同日午後1時38分頃までの間,氏名不詳者らが,複数回にわたり,甲方に電話をかけ,「昨日,駅の所で,不審な男を捕まえたんですが,その犯人が甲さんの名前を言っています。」「昨日,詐欺の被害に遭っていないですか。」「口座にはまだどのくらいの金額が残っているんですか。」「銀行に今すぐ行って全部下ろした方がいいですよ。」「前日の100万円を取り返すので協力してほしい。」「僕,向かいますから。」「2時前には到着できるよう僕の方で態勢整えますので。」などとうそを言い、前記甲を,電話の相手が長野県警察の警察官であり,その指示に従う必要がある旨誤信させ,前記甲に預金口座から預金の払戻しをさせて,警察官になりすました被告人が,前記甲から現金の交付を受けようとしたが,同人方付近で警戒中の警察官に発見されて逮捕されたため,その目的を遂げなかった。
【判示事項】 〔最高裁判所刑事判例集〕
詐欺罪につき実行の着手があるとされた事例
【要旨】 〔最高裁判所刑事判例集〕
現金を被害者宅に移動させた上で,警察官を装った被告人に現金を交付させる計画の一環として述べられた嘘について,その嘘の内容が,現金を交付するか否かを被害者が判断する前提となるよう予定された事項に係る重要なものであり,被害者に現金の交付を求める行為に直接つながる嘘が含まれ,被害者にその嘘を真実と誤信させることが,被害者において被告人の求めに応じて即座に現金を交付してしまう危険性を著しく高めるといえるなどの本件事実関係(判文参照)の下においては,当該嘘を一連のものとして被害者に述べた段階で,被害者に現金の交付を求める文言を述べていないとしても,詐欺罪の実行の着手があったと認められる。(補足意見がある。)
【ポイント】
→被害者に現金を用意させたことは、現金を交付させる危険性を著しく高めるものであり、現金の交付を求める文言を述べていないとして、詐欺罪の実行の着手があったと認定。
→補足意見=上記行為は、実行行為に極めて密接した行為であり、被害を生じさせる客観的な危険性が認められる行為に着手することによっても未遂罪が成立する。

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