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平成30年司法試験・民法・設問2関連基礎知識

平成30年司法試験・民法・設問2関連基礎知識
【所有権留保特約】
1、意義=売主が目的物の引渡しを終了するが、残代金が完済されるまで所有権を売主が留保する制度。非典型担保。条文はなし。
2、法的構成
(1)所有権的構成→売主に所有権がある。買主は残代金の完済を停止条件として所有権を取得するという期待権を持つ。
(2)担保的構成→売主は残代金を被担保債権として担保権を有するにすぎず、所有権は買主に。
【所有権留保と土地明渡訴訟】
判決/最高裁判所第三小法廷(上告審)
平成21年 3月10日
【事件名】 車両撤去土地明渡等請求事件
【概要】 千葉県内の駐車場所有者が、駐車契約していた男が駐車料金を支払わず自動車を駐車しつづけていた。駐車場所有者が自動車撤去を請求したが、男の所在は不明。また、この自動車は男がローンで購入していたことから、所有権はディーラーが所有権を留保していた。このため、駐車場経営者がディーラーに撤去を請求した事案。所有権留保者に撤去義務があるのか、が争われた。

 〔最高裁判所民事判例集〕
動産の購入代金を立替払した者が,立替金債務の担保として当該動産の所有権を留保する場合において,買主との契約上,期限の利益喪失による残債務全額の弁済期の到来前は当該動産を占有,使用する権原を有せず,その経過後は買主から当該動産の引渡しを受け,これを売却してその代金を残債務の弁済に充当することができるとされているときは,所有権を留保した者は,第三者の土地上に存在してその土地所有権の行使を妨害している当該動産について,上記弁済期が到来するまでは,特段の事情がない限り,撤去義務や不法行為責任を負うことはないが,上記弁済期が経過した後は,留保された所有権が担保権の性質を有するからといって撤去義務や不法行為責任を免れることはない。
【まとめ】
1、留保所有権者が有する所有権は、原則として、残債務の弁済期が経過するまでは、動産の経済的価値を把握するにとどまる。
2、したがって、弁済期前においては、所有権留保者は撤去義務を負うわけではないが、弁済期後においては当該動産を処分する権能を有するに至るので収去義務や不法行為の責任を負う。
3、土地所有権の侵害の事実を知ってから、所有権留保者はその責任を負う。
【所有権の喪失と対抗要件】
判例=最判平成6年2月8日=群馬県の建物登記保持者事件
【事案の概要】 競売により本件土地の所有権を取得した上告人が、本件土地上に建物を所有して占有している被上告人に対し、本件土地の所有権に基づき、本件建物を収去して本件土地を明渡すことを求めた裁判の上告審において、本件建物の所有者である被上告人は訴外Aとの間で本件建物についての売買契約を締結したにとどまり、その旨の所有権移転登記手続を了していないというのであるから、被上告人は上告人に対して本件建物の所有権の喪失を主張することができず、本件建物収去・土地明渡しの義務を免れないものというべきであるとして、原判決を破棄し、第1審判決を取消し、上告人の請求を認容した事例。
〔最高裁判所民事判例集〕
甲所有地上の建物所有者乙がこれを丙に譲渡した後もなお登記名義を保有する場合における建物収去・土地明渡義務者
【要旨】 〔最高裁判所民事判例集〕
甲所有地上の建物の所有権を取得し、自らの意思に基づいてその旨の登記を経由した乙は、たとい右建物を丙に譲渡したとしても、引き続き右登記名義を保有する限り、甲に対し、建物所有権の喪失を主張して建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできない。

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