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平成29年司法試験・民法・設問2・解答に挑戦

平成29年司法試験・民法・設問2・解答に挑戦

【論点←出題趣旨】
1、下線部①=賃借人がその土地上の建物を賃貸人に無断で第三者に賃貸したとき、賃貸人は612条により解除できるか。
→上記1については、判例あり。地上建物を賃貸しても、無断転貸にはならない。前記関連基礎知識を参照。ただし、詳しい説明が必要。
2、下線部②=建物がない部分(甲2部分)はどうか。
→甲2部分は駐車場だが、建物はない。建物の賃貸借では土地の賃貸人の承諾
は不要。
→一つの方法は土地の賃貸人と賃借人の間で、乙土地の賃貸借をどう合意したのか。
→建物だけに限定することを貫徹しても、地主にとって不利益がなく、信頼関係を破壊すると認めるに足りない事情を主張・立証する方法
→最悪は、借地借家法19条の趣旨を類推して、裁判所の判断を仰ぐ。
【では、解答に挑戦】
1、事実①の法律上の意義
(1)Cが丙建物をDに賃貸し、そこでDに診療所を営ませている。この行為は、借地上の建物たる丙をDに転貸していることを意味する。これが、借地権の無断転貸にあたれば、法律上の意義を有する。
(2)しかし、建物所有目的で土地を賃借し、自己の資本を投じて、借地上に自己の建物を建て、その建物を第三者に賃貸した場合、建物の使用・収益を第三者に許しただけである。その建物の所有権は、あくまでも建物を建てた土地賃借人にあり、土地の占有を有したままである。したがって、土地賃借関係は、借地上の建物の賃貸によって、変動は生じない。とすれば、借地上の建物を賃貸することは土地の無断転貸にはならない。
(3)Cはあくまで丙建物を賃貸しただけであり、その所有権で土地占有をしており、土地の賃貸借関係の変動は生じていない。したがって土地の無断転貸にはならず、法律上の意義はない。
2、事実②の法律上の意義
(1)Cは甲2部分を診療所の駐車場としてDに使用させている。この駐車場は建物ではない。また、甲2部分が、丙土地の敷地であれば、法律上の意義はないが、丙土地の敷地ではないとすれば、土地の無断転貸となり、法律上の意義がある。
(2)土地の賃貸借においては、賃貸人と賃借人との間でどのような範囲で賃貸借の対象地としたのかが問題になる。その対象地が建物の範囲に限定されており、それ以外の範囲は賃貸借の対象地ではないとすれば、建物以外の部分はを第三者に賃貸すれば、土地の無断転貸になる。しかし、建物の建っている部分のほか、建物に付属する部分も賃貸借の対象として合意されていれば、それを建物とともに第三者に賃貸したとしても、無断の賃貸にはならない。
(3)事実②においては、Cは、診療所部分のほか、甲2部分も診療所に付属する駐車場として、本件土地を借りたとしている。患者が自動車を利用して診療所に通う場合、駐車場は診療所にとって必須な場所である。したがって、土地賃貸人Aも、この事情を承知して本件土地を賃貸しているとするのが、合理的解釈といえる。また、Aは本件土地としてCに対して賃貸土地として、柵に囲まれた範囲を示している。この範囲には、診療所の建物部分のほか、甲2部分を含んだ敷地を示していた。したがって、本件賃貸借の範囲として駐車場も含まれており、甲2部分をCがDに賃貸したことは、Aにとって無断賃貸にはならず、法律上の意義はない。
3、以上から、事実①、②とも法律上の意義はないことから、いずれも土地の無断転貸とは評価できず、Aは無断転貸を理由に契約解除できない。
(平成29年司法試験・民法・設問3関連基礎知識へ)

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