見出し画像

地歴うんちく民法判例6・巨額の不動産を贈与すれば、自分にも税金がかかる!

地歴うんちく民法判例6・巨額の不動産を贈与すれば、自分にも税金がかかる!
地歴うんちく民法判例5
建物所有権移転登記抹消登記手続請求事件
最判平成1年9月14日

【キーポイント】
 新宿の一等地を離婚で財産分与すれば、自分にも2億円以上の税金がかかった事案
【事案】
1、グリコ森永事件で騒然としていた1984年(昭和59年)の事案。この年、東京都では、こんな離婚のもめ事が起きていた。
2、東京都新宿区のマイホームで暮らし、銀行勤めをしていたXさん。1962年(昭和37年)に結婚し、一見、幸せそうな暮らし。
3、ところが、部下の女性社員M子さんと深い関係になったことから、人生は激変する。
4、Xさんは、奥さん・Yから離婚を突きつけられたのだ。離婚条件は、長年、住んだマイホームで子供ら3人と暮らすことを保証してくれること。奥さんとして、当然の要求。
6、Xさんは、M子さんと結婚し、裸一貫となって出直すことを決意し、マイホームなどを奥さんに与えて、離婚を承諾する。
7、Xさんは、1984年(昭和59年)、マイホームの所有権を奥さんに移転登記し、家を出た。
8、この決断は男としては立派だが、東京都内、しかも新宿区の土地、建物の評価額は多額で、そんな不動産を贈与すれば、奥さんばかりでなく自分にも譲与所得税がかかることを知らなかった。、税務署に相談したところ、何と、Xさんへの税額は2億円を超えた。
9、そこで、Xさんは、錯誤を理由に、奥さんへの財産分与は無効と主張、所有権移転登記の抹消登記手続を求めた。
9、1、2審は、Xさんの動機の錯誤に過ぎないとXさん敗訴。
【最高裁の判旨】
 協議離婚に伴う財産分与契約をした分与者・Xさんに課税負担の錯誤に係る動機が意思表示の内容をなしたとされたとして、高裁に差し戻し判決を下し、Xさん勝訴。
【文献種別】 判決/最高裁判所第一小法廷(上告審)
【裁判年月日】 平成 1年 9月14日
【事件番号】 昭和63年(オ)第385号
【事件名】 建物所有権移転登記抹消登記手続請求事件
【要旨】 〔裁判所ウェブサイト〕
 協議離婚に伴い夫が自己の不動産全部を妻に譲渡する旨の財産分与契約をし、後日夫に二億円余の譲渡所得税が課されることが判明した場合において、右契約の当時、妻のみに課税されるものと誤解した夫が心配してこれを気遣う発言をし、妻も自己に課税されるものと理解していたなど判示の事実関係の下においては、他に特段の事情がない限り、夫の右課税負担の錯誤に係る動機は、妻に黙示的に表示されて意思表示の内容をなしたものというべきである。
【条文】
(錯誤)
第95条
1項=意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる。
一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤
二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤
2項=前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。
3項=錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。
一 相手方が表意者に錯誤があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。
二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき。
4 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

いいなと思ったら応援しよう!