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「死ぬまで生きる日記」とカウンセリングと

 ちょうど1年くらい前に読んだ「死ぬまで生きる日記」再読。これはもう一度読みたいと思っていた。

 ここに出てくる宿題の「他人の関与しない「条件なし」の幸せ」について考えてみる、というのと、マザーリングは試してみて割と即効性がありそう。マザーリングは以下の感じ。

ポジティブな感情もネガティブな感情も、全部自分で受け止めてあげるんです。例えば、「今幸せだと思ってるんだね。」、とか「今幸せを怖がっているんだね。」とか自分が感じていることを言葉にして、声をかけてあげる感じです。

p.78

 ただ、マザーリングは問題を解決するものではなく、ただ感情に寄り添うだけなので、コントロールしようとしたりしてはいけない。これは結構難しいのではないだろうか。

「人は直線的に変わるのではなく、螺旋的に変化していくものなんです」

p.95

 このカウンセラーの言葉は納得。そしてスピードもゆっくり。とてもゆっくり。

「問題ってね、「解決しよう」と思わなかったら、問題じゃなくなるんですよ」

p.99

 これもなかなかビックリする。これはマザーリングの話に出てくる受容のコツみたいなものなのだけれど。なんでも解決してなんぼ、みたいな私にとっても新鮮な言葉だった。

「「未来」はそれだけで独立してあるものではありません。「過去」「現在」と結びついているものです。だから「過去」「現在」を否定してしまうRさんは、どんな「未来の自分」になっても気が済まないのではないかと・・・・」

p.133

 これはそうだなー、と思う。私にもしっくりくる言葉だ。著者が「それってほんと、キリがないですね」と答えていたのだけれど、本当にそうだなぁ、と。わたしは本当にキリがないことをし続けているのかもしれない。過去現在未来は地続きだ。

 「「過去」をもう一度違う視点から見て、違う解釈をすることはできます。その時、別の意味が「過去」に付与される。そうすると「現在」の解釈も少し変わるはずなんです」

p.133

 「無理にこじつけをして、「良い過去だったな」と思い込むのではありません。「あの過去があったから今の自分があるのだ」と、減点ではなく加点方式で「過去」を捉え直すのはどうかな、ということです」
 「加点方式・・・」
 「はい。「なかった」ものではなく「あった」ものに目を向けてみるんです。」

p.134

 これはなんだか幸せなことだな、と思う。わたしはカウンセリングで逆なことをしたような。私はあったと思い込んでいたものが、実は無かったかもしれない、という方向だったような。そこは人それぞれ。
 過去は蓄積されると聞いて私は少しつらい。でもそうだということは痛いほどカウンセリングで実感している。

 なんのしがらみもない、共通の友人もいない、本名すら知らなくていい間柄を私は求めたのだ。「自分とは関係ない人だからこそ、なんでも話せる」、そう思って。

p.195

 これはカウンセラーについて語っているところなのだけれど、私も全くそうである。しがらみも知り合いも共通項もない、正直どんな人なのかもよくわからない、知りたいと思うこともない、ただいつも同じ曜日の同じ時間に決まった時間のみ話す、と言うのはどこか気が楽だ。

 私は最初カウンセラーが不満で、ブチ切れてもう代えてくれ、とお願いしたことすらあるのだけど、今はそんなに思わない。ある種あまり人間味のない無味無臭なカウンセラーで良かったと思っている。その方がなんでも話せる気がする。

 代えるとブチ切れたあとで、カウンセリングは基本自分との対話であるので、そのガイドがどんな人だろうとガイドとしてちゃんとしてれば、どうだっていい、と言う境地になり、代えるのことは考えなくなった。そして別にこの人に嫌われようがなんだろうが、実にどうでも良い、心置きなく使わせてもらう、と思える感じが逆に気が楽になったところでもある。

 この本ではカウンセリングの終結についても触れているのだけれど、私にはまだその経験はない。私は最初どれくらいかかるか聞いたのだけれど、後日申し訳ないけれど、見立てよりもだいぶん時間がかかりそう、と言われてなかなか終わる目処が立っていない。カウンセリングの終結ってどんな感じだろうか。私のカウンセリングにもいつか終わりが来るはずだ。

 読みながら本の流れとともに終わりについて考えたいと思ったのだけれど、無意識に避けているのか、駆け足に読んでしまった。
 とはいえ、この本にもあるようにカウンセリングが終わってもカウンセリングが続く気がする。そういえば、こういうことを話して、こんなことに気がついたな、とか、これはあの時話した感情と同じだ、など。それは今と変わらない。ただ、会わなくなるだけで、こう突っ込まれそうだな、とか、きっと残るものだと思う。こういうのを、この本では「お守り」と言っていた気がするけれど、そうかもしれない。

 この本に紹介されている本も読んでいるものがいくつかあり、ちょっと嬉しい。一度も読んだことないものはちょっと手に取ってみたいと思う。

江國香織「きらきらひかる」(江國香織さんは時代的に流行っていた気がするのですが、多分一度も読んだことがない)
池辺葵「プリンセスメゾン」
カズオ・イシグロ「クララとお日さま」
武田百合子「富士日記」


 カウンセリングの効用は、カウンセリングの時間だけではなく、カウンセリングがない日もじわじわと、考えることが多くなり、自然と自分と向き合う、分析する時間が習慣になることで、本当にささやかに自分が変わっていくことなのかな、と思う。
 私は2週にわたってカウンセリングがお休みになった。カウンセリングがなくてもやはりカウンセリングのことを考えている。

 お金もかかるし、毎週通うのも大変ではあるけれども、数年前にカウンセリングに行こうと思った自分は良い選択をしたと思っている。私は何かが解決したわけではないし、いまだに毎日が続くことに絶望しているけれど、毎週少し心の荷物を置けるところがあるのは救いではある気がする。



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