三好一成とわたし
※この記事はゲーム「A3!」の公演イベント「SHI★NO★BI珍道中」のストーリーのネタバレを含みます。なお、うろ覚えで書いているので間違っていたらすみません。
※「SHI★NO★BI珍道中」のストーリーを捉えながら自分自身について考えている記事です。ゲームのファン向けではないかもしれません。
イケメン役者育成ゲーム「A3!」は、かつて栄えていたボロ劇団「MANKAIカンパニー」をヒロインが立て直していくストーリーである。ヒロインは監督としてさまざまな役者と出会い、役者たちが花開く姿を見守っていく。
そんな「A3!」をプレイし始めてから5年が過ぎたらしい。この5年間で彼らだけでなくわたし自身もさまざまな経験をしてきた。それに伴って、捉え方の変わったイベントストーリーがある。それが「SHI★NO★BI珍道中」だ。
「MANKAIカンパニー」は春夏秋冬の4つの組に分かれており、基本的に各組が順に公演を行っている。「SHI★NO★BI珍道中」は夏組の第五回公演であり、イベントストーリーでは公演に至るまでの模様が描かれている。
主演は三好一成。天鵞絨美術大学(通称、天美)に通う3年生(イベント当時)であり、劇団のアートワーク全般を担当している。天美でも一目置かれる才能の持ち主で、日本画専攻なのにWEBデザインもフライヤーデザインもできてしまうスーパーマンである。あとウェイ系パリピ大学生でもある。語尾によく☆がつく。
夏組第五回公演は三好一成の主演に決まった。その矢先、一成は大学の教授から海外への短期留学の話を持ちかけられる。留学先として提示されたのは有名な美術大学で、そこで学べば作家としての将来を約束されたようなもの。しかし、主演か留学かどちらか一方を選ぶ必要があり、一成は悩むこととなる。そんなイベントストーリーだ。
夏組のメンバーは明確にやりたいことを持っていて、かつそこに向かってがむしゃらにきらめいて来た人が多い組だと思う。その上で、その中の「一握り」になれる才能も持っている。皇天馬は芝居(芸能)、瑠璃川幸は服飾、向坂椋は陸上、兵頭九門は野球。そして、三好一成は美術。(斑鳩三角も芝居の面で秀でており、三角形に対する並々ならぬ執着もあるが、他に比べて先天性が強くニュアンスが異なるのでここでは並べていない)だからこそ、三角以外は躊躇いなく留学の後押しをできたのだと思う。目の前に差し出されたチャンスを逃さないことがどれだけ重要かわかるから。一方で、ただたださみしかった三角の気持ちもまた、夏組共通の気持ちであったはずだ。
一成はたくさん悩んだ結果、「今、夏組で芝居をすること」を選ぶ。
メタ的なことを言ってしまえば、これからも続く物語のレギュラーキャラクターの一人である以上、(いくら短期とはいえ)物語から退場するわけがなく、その選択をするのは当然と言える。それをわかった上で、わたしは当時この選択にとにかく悔しさを感じた。三好一成が前向きに芝居に向き合っていても、とてもとても悔しかった。二度とないかもしれないチャンスを手にしなかった。わたしは勝手に後悔してしまったのである。
イベント期間は2018年7月18日〜27日。わたしは高校3年生であった。(ちょうどその期間スマホが壊れていたのでストーリーを読んだのは実はちょっと後のことなのだが……)イベントストーリーを読んだときは違う進路を目指していたが、奇しくも後に三好一成と同じく美術を学ぶ大学生になる。そして、卒業後の進路を決める際、似たような迷いを抱えることとなる。
わたしは日本画も描けないしデザインもできない。UMC(ウルトラマルチクリエイター)を目指す無敵のカズナリミヨシではない。それでもわたしには無限大の未来が、現実的な選択肢としてそこに差し出されていた。
「SHI★NO★BI珍道中」の頃のわたしであれば、今この瞬間を手放してでも将来「一握り」になれる可能性が高い、目の前に差し出されたチャンスを掴んでいたことと思う。ここまで迷うことはなかっただろう。わたしはこの5年弱で、手放したくないものをたくさんたくさん手にしてしまった。三好一成にとっての夏組を、気づけば抱き締めている日々だ。
将来掴みたいもの、今手放したくないもの。わたしは最終的に後者を優先した。かつて悔しくて悔しくて仕方なかった三好一成の選択と似た道を選んだ。
以前のわたしはチャンスを心から手にしたいわけではなく、臆病でチャンスを捨てることがこわかっただけなのだと思う。いつか将来掴みたいものが今手放したくないものを超えたとき、再び目指す勇気がないだけだ。今を優先したぶん遠回りで厳しい道のりになるだろう。それでも手にしたいと思うなら、わたしはまたがんばれる。と、思いたい。
今なら、三好一成の選択を真正面から受け取れる。三好一成が後悔せず今を生きている姿こそが、わたしにとっての希望だ。
「A3!」のキャラクターソング「春ですね。」には「選ぶ権利 捨てる権利 君はどっちを選んだ?」という歌詞が出てくる。この歌詞は「悩み抜いて出した答えに きっと桜が笑う」と続く。わたしは自分の権利で選び、捨てた。桜が笑えるよう、この選択を後悔しないよう、絶対に楽しく生きていこうと思う。
とはいえ、こんなことを書きながらも、立ち止まってしまう毎日である。後悔が全くないと言えば簡単に嘘がつけてしまう。でももう少しだけ、心に三好一成を住まわせて一緒にがんばってみようかな。わたしも語尾に☆をつけて生きていきたいから。
ちなみに最推しは斑鳩三角です。
おしまい。
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