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『るろうに剣心 ─明治剣客浪漫譚─』 巻之六 感想
概要
著者:和月 伸宏
初版発行:1995年
デジタル版発行:2012年
発行所:集英社
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発行者による作品情報
【デジタル着色によるフルカラー版!】由太郎の練習の帰り道、剣心達を雷十太が襲撃!雷十太が放った"飛飯綱"で由太郎は右腕を負傷、自分が利用されただけだと知る。そのうえ、剣術を続けることはできないと医者に宣告され…!?【同時収録】「特別編(3) 戦国の三日月」
感想
何と言っても雷十太の心を折る時の剣心が凄かったですね。言葉も表情も「殺人剣の持つ奈落の深さ」を知っているからこその重みがふんだんに含まれていて、ある種「殺気」のようなものを感じました。まさに実写映画版のキャッチコピー「優しいヤツほど気をつけろ。」です。
実際、大義があったとはいえその手で数多の人を殺め、その罪科を背負って生きている剣心からしたら、人を斬ったこともないのにしたり顔で「殺人剣」を語ってイキリ散らす雷十太は「ありとあらゆる『不快』『許しがたい』に類する言葉を集めても足りない」ってレベルでしょうね。(一応補足しておくと、「人斬り」を自慢に感じていたとかマウントとかそんな幼稚な話ではなく、雷十太が人を斬ることがいかに罪深いことか、その咎がいかに重くのしかかるかを全くわかっていないことと、そのくせ「殺人剣」をさも「常人にはできないカッコイイもの」かのように語り振る舞うことに対して筆舌に尽くしがたい憤りを感じていただろう、という話です。)
5巻に引き続き、こちらにも番外編「左之助と錦絵」が収録されています。こちらは左之助の赤報隊時代の同志が出てくるため、明治維新・明治政府の"負の側面(偽りの四民平等、赤報隊への冤罪)"がことの発端に関わります。左之助の「政府の奴等が汚ェからってよ何もこっちまで合わせるこたあねェ。じっくりでもゆっくりでもいいさ。あの世で隊長が笑って見てくれるやり方で俺はいかせてもらうぜ」と言う台詞には、彼の中で過去とある程度決着をつけられたのかなということが見て取れました。
(「物語に」ではなく「左之助の言い分に」ですが)剣心が"人斬り抜刀斎"として明治維新に関わっていたことも絡んでくるので、雷十太の「人斬りが持つ"負・濁"の側面を知らないのに『殺人剣』を掲げていたのか(呆れ)」という思いが余計大きくなるかもしれません…。
余談?
第四十三幕「決着」で、剣心が雷十太に「殺人剣の持つ奈落がわからないお前は剣客として弥彦にも劣る」という旨の台詞を吐き捨てたシーン、個人的には尾田栄一郎先生の漫画『ONE PIECE』でルフィがキャプテン・クロに「海賊としての器量では、お前は(当時は"ウソップ海賊団"として近所の子供と"海賊ごっこ"に興じていただけの)ウソップに勝てない」と言うシーンがよぎりました。
尾田先生はかつて和月先生のアシスタントをしていたので、そこから来たオマージュなんですかね?どっちのシーンも「普段は飄々としているけれど、"人斬り(もしくは海賊)であることの重み"を知っている者」ということを端的に表しているので好きです。