『るろうに剣心 ─明治剣客浪漫譚─』 巻之七 感想
概要
著者:和月 伸宏
初版発行:1995年
デジタル版発行:2012年
発行所:集英社
Apple Books リンク
発行者による作品情報
感想
斎藤一の登場です。彼はキャラ造形しかり台詞回ししかり、"主人公と対極をなすダークヒーロー"としては100点満点と言っても過言じゃないと思います。
そしてこの巻のハイライトは斎藤との戦いの中で"人斬り抜刀斎"に立ち戻っていく剣心です。2巻での鵜堂刃衛との戦いの時も感じたことですが、"緋村剣心"と"人斬り抜刀斎"の時の雰囲気の違いが凄い。それはもう、画面越しにも抜刀斎の殺気が伝わるくらい。和月先生ってこういう描き分けが上手いなって思います(ついでに言うと、「その描き分け力が尾田栄一郎先生にも伝わっているのかな」と『ONE PIECE』を見ていて感じます)。
内務卿・大久保利通も登場し、物語は大きく転換していきます。今回は名前だけですが、これまた作中屈指の強敵にして人気キャラ・志々雄真実が出てきました。
志々雄の野望を止める為に、剣心は彼の暗殺を依頼されます。実写映画版のるろ剣を見ていても感じたことですが、自分たちの都合で志々雄の抹消を図ったり、その尻拭いを剣心にさせたりする明治政府も大概タチが悪いなとは思います。
結果的に大久保卿は志々雄配下の者に暗殺され、それを受けた剣心は京都へ行き、志々雄を止めることを選びます。"人斬り抜刀斎"に立ち戻ることを覚悟の上で。斎藤との戦いを経て「自分の中には確実に"人斬り抜刀斎"が潜んでおり、それが消えることは決してない」ということを思い知り、薫たちを抜刀斎の業に巻き込まない為でもある悲しい決断。剣心の中では大きな葛藤があったんだろうなというのが見て取れます。
ここから、剣心の京都への道及び大きな戦いが幕を開けます。果たして剣心は再び"人斬り抜刀斎"に立ち戻ってしまうのか。"不殺"を貫けるのか。次巻も目が離せません。