『ジョジョの奇妙な冒険 PART1 ファントムブラッド』 4巻 感想
概要
著者:荒木 飛呂彦
初版発行:1988年
デジタル版発行:2012年
発行所:集英社
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発行者による作品情報
感想
英国人なら誰もが知る伝説の騎士(…と銘打ってはいるが、実は架空の人物)・タルカスと黒騎士ブラフォード。この二人との闘いが幕を開けます。
死体さえあれば、どんな猛者でも屍生人(ゾンビ)として甦らせ、自分の意のままに暴れまわらせられる。ディオ自身が豪語する通り、石仮面の力は「歴史さえも下僕(しもべ)にできる」恐ろしいものです(ジョナサンが言ったように「(最期に世を恨んで死んだとはいえ)高潔な者をも怪物に変える、憎むべき力」とも言えます)。
この巻では、彼自身の背負っている誇りやとっさの機転、強い怒りから来る、ジョナサンの"爆発力"が随所で窮地を切り拓く鍵になっています。
個人的に面白いと感じたのは機転の利かせ方。「かつて『風の騎士たち(ウインドナイツ)』で石炭が採れた」という3巻で少し書いていただけの情報から、「湖底に閉じ込められている空気を吸って波紋を作り、ブラフォードに一撃浴びせる」という展開に繋げる点は、荒木先生の博識さや発想力が顕著に表れていると感じました。また、「ブラフォードの髪で全身を拘束され、彼に決定打を食らわせるのは不可能」という状況から「剣を足で止め、そこから波紋を流して大ダメージ(腕が溶ける)を与える」という攻防一体のカウンターも、ジョナサンと一緒になって「これだーッ!」と叫びたくなるくらい感嘆しました。
ブラフォードの最期は、「"屍生人"ではなく"人間"として二度目の死を迎えた」と言っても過言ではないくらい、穏やかで救いに満ちたものでした。
「痛み」を感じたことによって、人間として、騎士としての「心」を取り戻したブラフォード。それゆえ、ジョナサンの優しさがその心に響き、そこまでの優しさを持った男との出会いによってこの世への恨みも昇華。彼のことを「友」として認めて散っていきました。2巻の感想で言ったことを自ら引用して述べるなら、精神性が"人間"の範囲内に戻った彼には、ジョナサンの優しさが通じたということです(これを踏まえると、生前から"殺戮のエリート"を目指していたタルカスは屍生人うんぬん関係なしに精神が"人間"の範疇から外れており、故に小物じみた哀れな最期になった。とも言えます)。
その分、「魂を救うために殺さなくてはいけない」という"皮肉"としか言いようのない状況の残酷さは浮き彫り。ジョナサンの石仮面、ひいてはそれを操り屍生人を増やそうとするディオに対する憤りがこっちまでガンガン伝わってくる感覚すらありました。
そして、タルカスとの闘いでツェペリさんを喪ったジョナサンたち。とはいえ、彼が死に際に言った通り、悲しんでいる暇などありません。ディオの邪悪な野望を止めるため、すぐにでも彼を倒さなくてはならないのです。
彼の最期を看取り、弔った(亡くなった直後のコマから察するに、亡骸を簡易的にだけど火葬した…であってますよね?)ジョナサンたちは、いよいよ最終決戦に向かいます。