マイケルジャクソンが観たかっただけなのに友達を失う事になった話
マイケルジャクソン。
そう、あのマイケル・ジャクソン。
何故だか私は中学校の頃から彼が好きでした。
アメリカの富豪の家とは全く関係のない、音楽性なんてト音記号くらいしか
わからない、かつ、それが何を表しているかもわからない、ハナタレの東村山っ子が。
当時、インターネットなんてハイカラなものは普及しておらず、インターなんて言葉が出るのは、高速道路に乗るか、ピンポンダッシュのターゲットの話くらい。
主な情報源は雑誌。そう海外音楽雑誌やら映画雑誌やらに載っている、動かない彼等。
今日日小学生でもweb配信なんぞかましてるのに私の情報収集力は紙、しかも有料。
それでもあれば良い方。生マイケルなんて渡米しなきゃ見れない状況。
高校生になっても趣向は変わらず。
だって、入ってくる情報があまりにも少な過ぎるんですもの。
たくさん一気に欲しいのに、思い切り吸ってるのに全然出てこないシェイクのストローのように、いつも私は一滴二滴のマイケルしか味わう事が出来なかった。
そんな折、新聞のラテ欄にマイケルの文字が。
そこには、スーパボウル中継、ハーフタイムショーはマイケルジャクソン。とある。
スーパーボウル?
駄菓子屋のくじ引きで絶対当たらないでっかいスーパーボールの事か。
なんでそんなもん中継すんだ。アメリカで流行ってんのか。
フラフープが流行った何時ぞやの時代の様に全国大会でもやってんのか。
でもそこにマイケルが来る。きっと偽物じゃない。
動くマイケル、しかもほぼリアルタイムのマイケル。
新鮮なマイケルをストローから口いっぱいに頬張るチャンスタイム到来。
ビデオテープに録画だ。しかも標準モードでキレイなマイケルを手に入れるんだ。
放送時間、4時間。
おののいた。スーパーボールを嗜む大会で4時間て。
地元のバーで飲んでた時に、厳ついゴリゴリの元ヤンの方に気に入られ意気投合し、名前を訊かれて正直に答えた。
ちなみに私の苗字は非常に珍しく、親戚以外に会った事がない。
でもそのゴリヤンは、私の苗字の知り合いがいると言う。
恐る恐る下の名前を訊いてみた。
兄貴だった。
昔、お兄ちゃん言ってた。そのゴリヤンさんは、洒落にならん男だと。
会っても関わるなよと。
どこの学校にも一人は居る、ヤベーやつ、なパイセンだった。
言っちゃった。思いっきりタメ語でゴリヤンパイセンに
「マジで?スゲーなおい!」
とか。
おののいた。その時くらいおののいたよ。
当日。
マイケルを楽しみに取っておきたいのと、スーパーボールの4時間全国大会スペシャルを怖いモノ見たさで興味があったのとで、複雑な気持ちで再生ボタンを押す。
ヘイ、ジョン!お前のスーパボールとってもクールだぜ!
なに言ってんだスティーブ!お前のボールこそ〇〇〇〇!
的なね。的なイメージでしたよ。
あ、なんとなく分かったと思いますけど、私英語苦手です。
知り合いの外人に、
「外国でコーヒー頼んだら通じなかった」
って言ったら、
コーヒーじゃなくて、カァフィィーって言われたことあります。
そいつイラン人なんですけどね。
しかし、意に反して画面いっぱいに出てきたのはデカくてテンション爆上げな男達。
『ダラスカウボーイズ VS バッファロービルズ』
NFLでした。アメフトでした。しかも年間最終試合で優勝決定戦。
ストローはパンパンになり弾け飛びました。
ごめんねマイケル。
ハーフタイムショーまで飛ばしてマイケル見ようかと思ったのに、リモコンを持つ手が動かない。
ルール知らないし何してるかわかんないけど、すごい。二メートル級の外人さん達が吹っ飛ばされながらボール追いかけてる。
逆にハーフタイムショーをスキップしちゃったよ。
チケット最安で8万円からとか。
指名手配犯にチケット当選しましたって通知出して、会場で一網打尽にするとか。
ハーフタイムにアメリカ全土の水道局が、水圧全開にするとか。
CM30秒枠6億円とか。
細かい事書き出したら止まらないからNFLに関してはここまで。
何が言いたいかっつーと、
仲良くなった黒人のカイルとNFLの話になって、私がダラスファンだと公言したら、ニューオリンズファンのカイルが豹変して、人生初の黒人さんとのガチンコ殴り合いに発展したって事。
その後カイルは帰国したんだけど、日本を去る際に最後に放った言葉が、
「夏音ユルサナイ」
でした。
マイケル観たかっただけなのにな。