技術士とは
技術士に求められる能力についてまとめてみました。
技術士とは
科学技術に関する技術的専門知識と高等の専門的応用能力及び豊富な実務経験を有し、公益を確保するため、高い技術者倫理を備えた、優れた技術者の育成」を図るための国による技術者の資格認定制度です。技術士は、技術士法(以下「法」という。)に基づいて行われる国家試験(技術士第二次試験)に合格し、登録した人だけに与えられる名称独占の資格です。即ち、技術士は、国によって認められた優れた技術者であり、科学技術の応用面に携わる技術者にとって最も権威のある国家資格です。国からも、多くの技術者・学生が技術士を目指すことを期待されています。
つまり、技術士とは技術系コンサルタントの一人前の証と言えます。特にインフラ開発等に携わる方は技術士建設部門を受けることになろうかと思います。名刺に「技術士(建設部門)」と書いていると、相手は「あ、技術士なんですね。」となる。それだけでかなり議論がスムーズにいくようになると思います(日本の場合)。なので、技術士資格の取得は上司や先輩からの免許皆伝、自立だと思って、取得に向けて行動することが、後々も役に立つかな、と思っています。技術士の勉強は英語の勉強と似ています。TOEICで高得点をとっても英語力そのものが上がるわけではありません。技術士も同じです。技術士をとったところで技術力が上がるわけではありません。ただ、何か客観的な指標によって下支えされることで、自分に自信がつきます。自信をもって発言すれば、受ける指摘も的確になります。つまり、技術士はさらに技術力を上げるための強力なドライバーになると思います。
技術士試験の勉強をすることで技術力が上がるわけではない、と言いましたが、まったく上がらないということでもありません。これも英語と同じです。TOEICの点数が上がった時に、英語力はまったく上がっていないのか。そんなことはありません。何かしらの英語力は上がっています(それは他のnote参照)。では技術士の場合にはどのような能力が上がるのか。個人的な経験から言って、それは課題発見能力と抽象化力、言語化力だと思います。
求められる技術力とは
課題発見能力
課題発見能力とは何か、意外と難しいかもしれません。なぜなら、コンサルタントは課題ありきでそれを解決する職業だから。例えば、業務全体の課題は「過去案件をレビューし、適切な計画を行うこと」であったりします。ここで言う課題発見能力は少し違います。かみ砕いて言えば、教科書的にやって解けない課題を浮き上がらせる能力、だと思います。技術士に求められているのは、プロセスやマニュアルに則って、滞りなく作業を進める能力ではありません。通常にマニュアルを当てはめたときにうまく運用できない状況に出会ったとき、どれだけそのマニュアルを柔軟に運用できるか、逸脱する場合にはどのように手当てができるか、を考えることができる能力(想像力)です。要は、「なぜできないか」の理由付けをするのではなく、「どうやったらできるか」を考える能力だと思います。あるいは、問題のありかを「そもそも」と捉え直すことができる能力だと思います。
もう少し具体的に見てみましょう。自分の例を挙げてみます。実際の口頭試験での対応です。道路部門でしたので、道路計画、設計、施工に係る分野が対象となります。対象路線は山岳長距離路線の施工計画。課題は発生土砂の処理が問題となりました。発生土砂のいくつかには有害物質が含まれており、そのまま捨てるわけにはいかなくなりました。有害物質を含む土砂は清浄な土砂でくるむことにより封じ込めて処理することが必要となります。つまり、有害土砂は饅頭のあんこの部分にあたるので、当然処理量が減ってしまいます。土捨て場の面積は変わらず、通常の土砂も搬入しないといけません。その中で何とかやりくりして発生土砂を入れ切らないといけない、ということが問題となりました。
有害物質の封じ込め手法については法律で定められているので、これ以上の柔軟性はありませんでした。では、どうしたか。
ここからが各人の課題発見能力になる部分であり、ひとにより対処方法が異なる部分であり、技術力を占めす箇所となります。
自分の場合は、有害物質以外の清浄土砂面積を擁壁等により縦積みし、使用面積を最小化、減らした面積を有害土砂搬入に当てました。さらに、場内にある沢を外部に切り回し、一連の用地を確保することで、さらに活用面積を増加させました。しかし、沢を切り回すと、施工が複雑になりますし、切り回しに必要な工程が追加になります。また、搬入開始時期に影響が出る可能性があります。
そこで、考えたのは、詳細な搬入開始時期の特定と沢の切り回し工程の精度向上です。搬入開始時期が正確にわかれば、それまでに沢を切り回しできるか、あるいは促進工程を組む必要があるかどうかがわかります。そこで、本体工事の時期を特定し、そこから逆算して沢の切り回し開始時期を決めました。さらに、工程が多少前後することも踏まえ、ある程度バッファーを持った切り回し開始時期を設定することで、いつでも十分に受け入れ態勢を整える手筈を整えました。それ以外にも、遅れた場合の次善の策として、沢野切り回しと土砂搬入を同時に施工できるような計画も考えておき、万一、予定がずれた場合にも対応できる計画を立案しました。
とまぁ、長くなりましたが、ここで伝わって欲しいのは、課題を解決しようと考えられる策を打つと、他のところに弊害が出てくる可能性がある。それについても考えて対処策を検討すること、が技術力(自分がとった施策が起こしうる現象を想像する力)のことだと思います。
あとはこつこつ
起きそうなことを全て想像しきったら、あとは淡々と説いていくだけです。一つ一つの問題は小さい、足し算と掛け算の世界です。土量はどうやって求めるんだっけ?土を運ぶのにどんな車両が必要なんだっけ?何台必要なんだっけ?といったことです。そう技術力はローテクの積み重ね、です。一つ一つのローテクをどれだけわかっているか、使いこなせているか。コンピュータを分解した後、組み立てるのに似てるとおもいます。ここまでできれば、問題を相手に説明するのも簡単です。なんせ、一つ一つの問題は簡単ですから、クライアントもよくわかっています。わかっていなかったのはその細々した問題が絡み合っていたて全体像がわからなかったのです。基本(基礎シリーズ)が大事、についてもどこかで書きたいと思います。
何にでも応用できる
ここで述べた「技術力」というのは決して狭い分野のことではない、ということがおわかりいただけたのではないでしょうか。むしろ、どのような場面にも適用できる分析スキルのようなものだと思います。この力があれば、新しいことをやることになったとしても、勘所を押さえるのに役立つとおもいます。実際、2回転職しましたが、どちらでも、入りが早い、と言っていただいたことがあります。その後が本番なのですが、とりあえず、スタートがよくなるのはよいことです笑。
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