デザイナーが改めて「成長」について考え、行動するためのヒント💡
はじめに
このnoteは、先日登壇させていただいたInHouseDesigners #2 - デザイナーの成長戦略 - というイベントで「新卒入社4年目デザイナーが考える組織内での個の成長」というタイトルで発表した内容に簡単な解説をいれたものです。
発表内容について
今回、デザイナーのイベントではあったのですが、「キャリアとは何か」や「キャリアを組織の中でどのように考えていけばいいのか」といった、「デザイナーならでは」の話というよりは、わりと一般的なキャリアの話をメインにさせていただきました。
なので、イベント参会者の中にはモノたりなさを感じた方もいるかと思います。(すみません)
ただ、このような内容で発表をした背景があるのでここで簡単に説明しておきます。
そもそも「成長」ってどういうものか。など全体像を捉えられていないことで悩んでいるデザイナーが多そうと経験的に感じた
僕は新卒入社したとき会社にデザイナーが少なかったこともあり、1年目からデザイナーの採用(面談、面接、インターンシップの設計など)に関わったり、2年目から後輩デザイナーの育成をしたりと、自分も含め、人の「成長」に関わる経験が多くありました。
そのような経験の中で社内外の多くのデザイナー(学生含め)とやりとりをしていると、
あるデザイナーは、「いろんな経験をしたい!」と言いながら、「自分がどこを目指しているのかわからない」などの矛盾した不安を抱えていたり、
またあるデザイナーは、「同じ経験ばかりで、"スキル"が成長している気がしない」などの不安を抱えていることがわかりました。
僕自身もすごく共感できる部分もありましたし、悩んだ時期もあります。
そこからまた多くの「成長」を目の当たりにしたり、自分自身も藻掻いていく中で、そのようなデザイナーの不安は、自分が今どんなキャリアを歩んでいるのか、歩み方にどんな特性があるのか、成長における"スキル"の位置づけはどこなのか、など「成長」に纏わるものの全体像をあまり把握できていないことによるものが大きいと気づきました。
そして、その解決方法の一部が少しずつ自分の中で固まってきたため、今回はこのような発表をすることにしました。
発表内容
ここからは、イベントでの発表内容を資料に沿って説明させていただきます。
「新卒入社4年目デザイナーが考える組織内での個の成長」
今回はタイトルにある通り、「組織内での個の成長」ということで「個人のキャリア」について話します。
なぜ組織的な視点ではなく「個の成長」に焦点をあてて話しするかというと、どれだけ組織や事業の成長から考えても、個人がそこにモチベーションを持てなかったり、ついていけなかったりすると、結果的に組織の成長速度が遅くなったり、人がやめていってしまう問題が生まれるからです。
特にデザイナーはその問題が大きいと考えています。
仕事の範囲が広く、専門性も複雑なため、明確なキャリアが見えづらく、何をしていけばいいのかわからないくなってしまうことや、
「〜することが好き」などの価値観ベースのモチベーションで働く人も多いので、組織や事業の成長で求められることにモチベーションを維持できなくなってしまうことがあるからです。
なので、デザイナーは「個人の成長」と「組織の成長」が噛み合わない問題に「個人」としてもしっかりと向き合わなければいけないです。
今回はそのような背景から「キャリアとは何か」と「キャリアを組織の中でどのように考えていけばいいのか」について話させていただき、組織内でデザイナーがモチベーションをもって、うまくキャリアを形成するための1つヒントになればと考えています。
まず、個の成長(キャリア)について考えるにあたって、抑えておきたいのは「キャリアとは何か」についてです。
あらゆる定義ができるのですが、ここでは「キャリア」を広い意味で捉え「仕事・働くことに関わるさまざまな行動、経験、機会、能力、成果、役割、コミットメント、意志、判断などの連鎖、蓄積」と定義します。
イメージとしては、キャリアの語の由来でもある荷車にあらゆる行動や経験を通してスキル、知識などを積み込みながら未来に向かって進んでいる状態です。
このキャリアをつくる要素を3つに分けることができます。
1つ目の要素は、よくデザイナー思い浮かべるキャリアの大きな要素で、「知識・技能(スキル)・資格・人脈」です。
これらはあらゆる経験・機会を通して蓄積される、「業務を遂行するための能力的資源・資産」のことです。
目に見えやすい(気づきやすい)という特性をもっています。
例えば、新規メディアの立ち上げという経験から「ロゴ作成スキル」や「対象ユーザーや業界の知識」が蓄積される。などです。
2つ目の要素は、「行動特性・思考特性・態度・習慣」です。
これらはあらゆる経験・機会を通して変化する、「物事の行い方の傾向性や物事の考え方のクセ」のことです。
あまり目に見えづらい(気づきづらい)という特性をもっています。
例えば、ミスの許されない金融システムのデザイン経験を通して、瞬発的な思考から慎重に考えるようになっていく。などです。
3つ目の要素は、「マインド・価値観」です。
これらはあらゆる経験・機会を通して変化する、「仕事・キャリアを推し進めていくときの根底にある意識・価値観・動機」のことです。
目に見えづらい(気づきづらい)という特性をもっています。
例えば、プロジェクトの失敗体験から、成果にこだわるよりもまずコミュニケーションにこだわることが大事だと考える。などです。
これらキャリアをつくる3つの要素は階層になっており、キャリア形成において、第1階層は「何を持つか」、第2階層は「どう行うか」、第3階層は「どうあるべきか」に当たります。
それぞれ下位の階層からも上位の階層からも相互に影響を与え合っています。
私達はそれら3種のカゴを乗せて荷車をひいてるわけです。
また、これらを横断するカタチで「志向軸」というものがあります。
志向軸とは、何を成し遂げたいのか、どこに向かっていくのかという方向性と熱量にあたるベクトルのことです。
これは荷車の「行きたい場所や方向」であり、そこへ荷車が引かれている状態が個の成長という観点では健康的な状態というわけです。
この志向軸は人やその状況によって、あるゴール地点を明確に指している場合と、なんとなく方向だけ示している場合があります。
前者は、「日本一のWebデザイナーになる!」などの明確な夢や目標をもっている状態の人で脇目も振らずその達成を目指します。
働くことを山に例えると、頂きを目指す「登山」タイプです。
後者は、明確な夢や目標をもっていないが、「絵を書くのって楽しいな」など今ある価値観やマインド、スキルや知識をベースに方向を決め、あらゆる経験をしながら進んでいきます。
こちらは、山のいろんなところを気ままに散歩する「トレッキング」タイプです。
この2つのタイプには、それぞれ長所と短所があります。
「登山」タイプは、「意図的につくりにいくキャリア」とも呼べ、目標像や計画に向けて力を集中させやすくなります。
しかし、「自分はこれになるしかない!」といった想いに固執してしまうと、他の選択肢が目に入らなくなり、自分の可能性を限定してしまう恐れがあります。
あるいは、いったん他の道に進んで、そこから迂回して当初の目標にたどり着くという可能性も排除しがちになります。
他方、「トレッキング」タイプは、「結果的にできてしまうキャリア」とも呼べ、オープンマインドで柔軟的に構えることで、想定外の可能性を引き出しやすくなります。
しかし、出たとこ勝負の生き方なので、最終的に漂流してただけだったということにもなりかねません。
そうならないためにも、大きな方向性をもっておくことが大事です。
また、この2つのタイプは転換することがあります。
「トレッキング」タイプが多くの経験の中で本当に登りたい山が見つかって「登山」タイプになることもあれば、「登山」タイプが登頂を終えて、その後、山の中を回って楽しむ「トレッキング」タイプになることもあります。
どちらのタイプが良いと言うことはないですが、ここで大事なことは山(仕事)を楽しめているかという観点で転換したことを見逃さないことです。
ここまでが、「キャリアとは何か」についてで、キャリアの種類や特性について話をさせていただきました。
ここからは、そのキャリアを組織の中でどのように考えていけばいいのかを僕が今取り組んでいることを交えて話させていただきます。
まず前提として、会社の中では、事業や組織に紐づいた目標が与えられ、多くの仕事をつくったり、実行しなければいけません。経験や機会が自分ではコントロールしづらい状況です。
そうなってくると、これまで説明したキャリアも思うように描けないと感じる方がいる思います。
特にデザイナーは「会社人」的な意識でなく、「職業人」的な意識が強い方が多いこともあり、自分が目指したい方向と組織内での経験や機会にギャップを感じてしまうことがある思います。
では、どうすればいいか。
僕がやっていることは、とてもシンプルな2つの取組みです。
1つ目は、実行しなければいけない経験や機会について「そこから何を得られるか」を考え、自分の得たいものとすり合わせて意識的に取り組むことです。
2つ目は、「何を得るために何ができるか」を考え、自分で経験や機会をつくっていくことです。
実は多くの方がこれを無意識にやっていたりするのですが、これを意識下にいれて計画的に行うだけで、注力すべきポイントがわかり仕事へのアプローチが変わります。結果、得たいものが得れるようになっていきます。
これらを実行するためには、「今の自分は何をもっているのか」「自分はどこを目指し何を成し遂げたいのか/どの方向へ向かっていきたいのか」という2つを明確にしてから、「組織の中での経験・機会をどう活かせるのか/どうつくれるのか」を考えるというフローが必要です。
これは「現在地」「目的地またはその方向」がわかることで、「行き方(ルート)」を考えらるようになるということです。
まず「現在地」と「目的地(方向)」にあたる部分を明確にする必要があります。
これは先ほどのキャリアをつくる3層を「現在地」と「目的地」で明確にするということです。
そこで僕がやったのは「人生または仕事においてやりたいこと/なりたい姿を100個だす」ということです。
やりたいことを100個だして、そこから目的地で得ていたい知識・スキル・資格・人脈や、行動特性・思考特性・態度・習慣などを抽出することもできますし、グルーピングすることで、ブラックボックスになりがちな現在や未来の自分の価値観やマインドを抽出することができます。
※ ここで価値観などが不明な場合、過去の経験も照らし合わせることで、より明確になると思います。
そんなことをやりながら、上下の層の関係も考慮して、現在地と目的地の各要素を明確にしていきます。
ここで大事なのは、ゴール状態がぼやけないためにも、多くを詰め込みすぎないことと、「他のものを捨ててでもそれを本当に目指したいのか」を考えることです。
何度考えてもどこかしらで違和感があり「本当に目指したいのかわからない」という人は、先ほど紹介した「トレッキング」タイプの可能性があるので、目的地の明確化はある程度にし、現在地の価値観やマインドで大事な部分を明確にしておくぐらいでもいいと思います。
次に「組織の中での経験・機会をどう活かせるのか/どうつくれるのか」を考えていきます。
ここでは最初に今の組織で追うべき目標ややるべき仕事を明確にします。
そして、その仕事と自分の未来で得ていたいモノを照らし合わせながら、どの部分を成長させられるかを考えていきます。
結びつけが見えない場合は仕事をできるだけ細かくしてみると見えてきたりします。
「トレッキング」タイプの人は、その仕事が今の自分の価値観やマインドにマッチしているのか、またはどのような影響を与えてくれるかを考えてみるといいかもしれません。
そうすることで新しく身につけるべきスキルや知識が見えてくることがあります。
次に、逆に自分が未来(目的地)で得ていたいモノから、事業や組織にも価値のある仕事はつくれないかを考えてみます。
※ もしそれができないときは、仕事以外で補ったりしてもいいと思います。
また、それぞれの仕事をするために必要なinputがあればそれも洗い出すと、より強くキャリアとの結びつけができるはずです。
このように、仕事と自分の目的地で得ていたいモノを整理することで、はっきりと「組織の成長」と「個の成長」の交差点が見えてきて仕事の取り組み方が変わってきます。
今回いろいろ話をしましたが、自分のキャリアを自分で深く考えること自体が一番大事だと思っていますので、まずは、「登山タイプなのか?トレッキングタイプなのか?」から考えてみていただければと思います。
おまけ
今回の内容は、ざっくり言うと「デザイナーは組織の中でキャリアについていろいろ悩むけど、自分を見つめ直し、仕事への向き合い方(見方)を変えればいいのさ」ということだったと思いますが、友人から紹介してもらったスヌーピーの名言がとても言いたかったことにフィットしていると感じたので、その言葉で締めたいと思います。
「配られたカードで勝負するっきゃないのさ、それがどうゆう意味であれ。」
さらにおまけ(6/6追記)
発表を聞いてくれていた弊社の新卒デザイナーのまいまいがわかりやすく内容をまとめてくれていました!感動!
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