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はつ ぼん

しけったマッチをあきらめて、
ポケットから出したライターで火をつけた。
タバコ吸ってるの隠してたんだっけ。
八畳間に広がる薄い煙。苦くて甘い、植物の燃える。

あの世がクラウドで、お墓がサーバで、仏壇が端末なんだって。
ネットで誰かが言ってた。

あんな山奥経由だと、時間がかかりそうね。

それよりあのひと、端末使いこなせてるのかしら。

あっちにはそういうの詳しいひともいるでしょ。

べつに、こっちのことなんか見てないかもしれないし。

そんなの、生きてる人間にはわからんよ。

そう。
どうせ、私は生きてるよ。
まだ。

ふうう。
細い煙を、ゆっくり吹き広げる。
ねえ、これ、おいしいですか?

あれ、息を吹きかけたりしちゃ、だめなんだっけ。

べつに、いっか。
私は息をしてるんだから。まだ。

そっちは
あたたかいですか、つめたいですか
たべものはおいしいですか
西城秀樹はコンサートをやってますか

みんなほんとはどこに行って、どこにいるのか。
何が届いて、何かが届くのか。誰も知らない。

金ぴかの偶像、手を合わせる仕草、鉦の音、難しい長い名前。
すべてに意味があって、すべてが無意味だ。
389円×2の花束、きれいな水、ヤクルトと、オレンジひとつ。
これがレモンだったらいまごろ爆発してる。

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